第130話 告白ラッシュ
「雨宮さん、もしよかったら俺と付き合ってくれない?」
……はぁ。これでもう五人目だよ? 陰キャの非モテ女子が短期間で五人から告白されるって、完全に妄想の世界じゃん。ここまでくると嘘告としか思えないよね。本当だとしたら、それはそれでどうかと思うよ。スカート短くした途端に告白って、ヤリ目じゃん。ビッチ化したと踏んで、簡単にヤれると思ったんじゃないの?
「……気持ちは嬉しいけど、もっと良い子がいると思うよ」
「くっ…………。俺は雨宮さんがいいんだよ」
……嘘にしろ本当にしろ、さすがにしつこくない? 完全に脈なしなんだから、ここからいくら引っ張っても好転しないよ?
「ごめんね、私にはもう……」
「鳩山だろ? 知ってるよ」
知ってるなら身を引いてくれないかな? 好きな子に恋人が既にいるなら、それは身を引くべきだよ。こういうのって早いもの勝ちだからさ。
「鳩山は女を幸せにできるヤツじゃない。でも俺ならきっと雨宮さんを……」
「ごめんね」
大事なところを蹴り飛ばしてやりたい気持ちをグッと堪えて、私は足早にその場を去った。まだ何か言ってるけど無視、無視。
……今の私って結構可愛いのかな? いやいや、嘘告、もしくはワンナイトラブ目当てのクズだよ。だって人の恋人を悪く言うんだよ? 鳩山君が女の子を泣かせるわけないじゃん。仮にそういう事実があったとしてもそれは、チョロい女が勝手に勘違いして、勝手に泣いたってだけでしょ?
私が名前も知らない(というか忘れた)男の子を振った翌日、男子達がクラスでざわざわしていた。
「ケンジもフラレたらしいぞ」
「まー、マルコメ君だしなー」
「ケンジは仕方ないにしても、隣のクラスの澤井もフラレたって噂だぜ?」
「嘘だろ!? 中学時代に女子百人斬りしたって噂の澤井が!?」
私の話かな? まあ別にどうでもいいけど、とりあえず鳩山君に相談しておこうかな。嫉妬してくれるかもしれないし。
「聞いてよ、鳩山君。この前ね、また男子が嘘告してきたの」
「そうなのかい? 本気だと思うけどねー」
またそうやってサラリと褒めてくるんだから。やっぱ他の男子とは、わけが違うというか格が違うよね。褒め方に下心がないというか、なんというか。
「アハハ、鳩山君みたいな物好きは、そうそういないって」
「そんなこと言うけどさ、今の雨宮さんってイケてるよ?」
そりゃ鳩山君視点ではいけてるよ。だって鳩山君の好みに合わせてメッシュを三本にしたもん。もし最近の嘘告ラッシュがガチ告だったとすれば、鳩山君のセンス良すぎるでしょ。初め三本にしろって言われた時は『もしかして鳩山君、人の髪だと思って適当言ってない?』ってツッコミそうになったけど、ちゃんとガチの要望だったんだね(まあどうせ最近の告白ラッシュはほぼ全部嘘告なんだろうけど)。
「え? そりゃ鳩山君の好みには近づいただろうけど……」
「何度も言うけど、誰から見たって魅力的だよ? なんでここまで無自覚なのか理解できないよ」
うん、前より可愛くなったっていう自覚はあるよ。でも魅力的かどうかって言われると、まだ全然じゃないかなぁ。実際、真面目そうな人は一切告白してこないし。
「だーかーらー、そんなことないって。鳩山君だけだよ? 私のスカートが短くなって喜んでるの」
実はたまに男子からの視線を感じる。女だったら誰でもいいんだろうね。不快でたまらないけど、本来であれば浴びるはずのない視線を浴びてるっていう優越感みたいなのは、ほんの少しだけある。言っとくけど痴女になったわけじゃないよ? 可愛くなれたって事実が嬉しいだけで、鳩山君以外の視線は普通に不快だから。
「膝出すだけでも恥ずかしいのに、こんないつ見えるかわからない長さなんて……」
「あはは、雨宮さんはお上品な振る舞いだから見えないさ」
立ち振舞いまで褒めてくれるんだ。褒める才能がありすぎる。
「……ごめんね」
「え? 何がだい?」
「見たいんだよね? 鳩山君は変わり者だから」
そもそも短くしろって言ってきたのは鳩山君だしね。もー、エッチなんだから。
「謝ることじゃないさ。むしろ謝るのは、短くするように提案した俺のほうだよ」
「ううん、謝らないで。鳩山君のためなら、スカート丈なんかいくらでも短く出来るし、なんならスカートなんて履かなくてもいい」
ゴメン、さすがにこれは盛ってる。鳩山君と二人っきりなら超短いの履けるけど、家の外では無理、恥ずかしすぎるし、不快すぎる。
いやー、私もすっかり鳩山君カラーに染まっちゃったね。今度はどんな要求が来るんだろう。楽しみだなぁ。




