第124話 外堀埋め+外敵の悪評拡散
「ねぇ、鈴木さん」
「おっ、雨ちゃん。珍しいじゃん、そっちから話しかけてくるの」
「なんだ、なんだ? カラオケの誘いかー?」
なんで話しかけただけでカラオケの誘いまで絞り込めるんだろう。かすってもいないんだけど。っていうか今時カラオケ? ああいうのって、今の時代はついでレベルじゃない? レジャー施設で遊んでる時に休憩がてら寄る程度の産物だと思うんだけど、今となっては。いや、昔を知ってるわけじゃないんだけどさ。
「あはは、私あんまりテレビとか見ないから曲分かんないかなぁ」
「マジで? あー、でもアタシもお母さんとかと比べたら全然見ないなぁ」
「あっ、それ分かる! なんか知らんけど、親とかジーちゃんバーちゃんって、異常なほどテレビ見るよなー」
あっ、どこの家庭もそうなんだ。ウチのお母さんは読書する時でさえテレビ点けてるけど、アレで没頭できるのかな? いや、そんなことはどうでもいいの。こんな人達と世間話なんてする気は毛頭ないよ。鳩山君を誑かす敵だし。
「スマホとかパソコンが普及してない時代の人達だからじゃないかな?」
「あーね。習慣的なね?」
「だと思うよ。それはそうと……鈴木さん」
「んー? あー、さっき何か言おうとしてたっけ? ゴメン、ゴメン」
これ私がぶった切らなきゃ永遠に話を聞いてもらえなかった感じ? コギャルって面倒だなぁ。
「鈴木さんって香水の趣味良いよね」
「え? なになになに? 口説きに来た系?」
うるさいなぁ……。
「あっ、ごめんね、気持ち悪いこと言っちゃって」
「いいって、いいって。むしろ褒め言葉だし」
「でね? その……オススメを教えてほしいなぁって……」
無論、嘘である。コギャルのオススメなんかより、自分の直感を信じるよ。そりゃまあ、選ぶ能力で言えばコギャル達の方が上だよ? でも鳩山君の好みを見抜く能力で言えば私の右に出る者はいないはず。っていうか自分で探りたい。
じゃあなんのための質問かって? そりゃー……。
「おっ? もしかしてポッポちゃんへのアピールかぁ?」
このためですよ。鳩山君とラブラブなことをアピールするためですよ。コギャルってのはスピーカーみたいなものだから、なんでもかんでも拡散してくれるはず。高橋君とかいう痴れ者が寄ってくる可能性も減るだろうし、鳩山君をフリーだと勘違いして狙ってくる女もきっと減る。
「……………………言わないでよ」
この恥じらい方満点じゃない? 鳩山君だったら理性が壊れる寸前までいくよ。
「かっわいー!」
「マジ乙女なんですけどー」
「なんか暑くない? 体感五千度くらいあんだけど」
よしよしよし、良い感じに食いついてる。娯楽が充実した現代でも恋バナへの食いつきは凄いのが女子高生ってもんだよ。
「鳩山君に喜んでもらいたくて……だから詳しそうな鈴木さん達にご意見を頂こうかと思いまして……」
「んー、可愛いなぁ。後輩ができたみたい」
「アタシ的には妹かな」
「分かるかも。クラスの妹的な感じだもんね、ちっちゃいし」
貴女達が無駄にタッパあるんだよ。私は平均身長……に極めて近いから。
「……じっくり恋愛してみたいけど、そういうわけにもいかなそうなの」
「んー? どゆこと?」
「色々あるけど、鳩山君が取られそうってのが一つかな」
「あー、アイツ浮気性だろうしなー」
「分かるわー」
……違うけど? 女の子を勘違いさせがちなだけで、浮気性ではないよ? 私に言わせてみれば、勘違いする方が悪いと思うよ。ちょっと優しくされただけですぐ好きになる方が間抜けなんだよ。
「それと……この前、怖い目に遭ったから……」
「むっ? 何があったん? もしかして鳩山が……」
「違う、違う! 鳩山君は紳士だよ。………………えっと、逆恨みが怖いからあんまり広めないでほしいんだけど……」
「うん」
「………………高橋君が強引に……………………いや、別に手を出されたわけじゃないんだけど……ううん、ごめん、なんでもない、忘れて」
どうかな? 一切嘘をつかずに、あの男を大悪党に仕立て上げる作戦だよ。
「あのブサイクが雨ちゃんに? へー」
「もうチンポをズタズタにするしかなくなっちゃったよ」
「ハッカ油ぶっかけた上で痛めつけっか」
わぁ、素敵な友情。是非とも実行してほしいところだけど、今じゃない。さすがにこれは最終手段だから。
「やめて、やめて。逆恨み怖いから」
「あっ、可哀想だからとかじゃないんだ」
「…………………………………………あの人に対してそんな慈悲深くいられないよ」
「そっか……。いつか痛い目に遭わせるから安心してよ、雨ちゃん」
「危険だと思ったら早めにアタシら頼ってよ?」
……あれ? このコギャル達って案外良い子達?
なんだろ、鳩山君のおかげで他人に対する考え方変わってきたかも。昔だったら姦しいクソギャルという目でしか見れなかったけど、こうやって話してみると皆、気の良い人達じゃん。高橋君とかいうクソは論外だけど。
さてと……あとは適当に話を合わせながら、鳩山君とのラブラブさ加減をさり気なく伝えていこう、地道な宣伝が功を奏すはずだから。会社の広報部ってこういう心境で仕事に取り組んでるのかな。




