第103話 誘い込み
コギャルと遊ぶのは精神的にくるものがあったけど、一つだけ収穫があった。フットネイルとかいう悪趣味な物を勧められてさ、まあさすがにそれは断ったよ。でもその際に、ペディキュアという物を知ることができた。これは中々いいよ、鳩山君なら絶対に食いつくはずだよ。だってマニキュアで大興奮してたんだよ? 付け爪が嫌なだけで、塗る分には良いんだよ多分。
ちなみにネイルチップはもう外した。コギャルがなんか言ってたけど、適当に流しておいた。真剣に対処してたら脳がオーバーヒートしちゃうからね。
「鳩山君、ちょっといいかな?」
「え? 何?」
「ちょっと待ってね」
隅っこの席でよかったよ、さすがに靴下を脱ぐのって恥ずかしいからね。それにしても不思議だよ、たかが裸足なのにイケナイことをしてる気分になるんだから。
「雨宮さん、見えちゃうよ」
えっ? あっ……。
「そうだよね、見たくないよね。ゴメンね、こんな汚い……」
「いや、見たいけど……傷つけちゃうかなって」
鳩山君は優しいなぁ。見てしまわないように目を背けてくれたこともそうだけど、照れ隠しのメンヘラムーブに本気で対応してくれるんだからさ。
「じゃあ見ても別にいいよ? 見せたいのはそれじゃないんだけど」
わ、私ってば何を言ってるんだろう。まるで痴女みたいなこと言っちゃってるし、イイ女ぶってるのも我ながら腹立つ。いくら鳩山君の好みドンピシャだからって、調子に乗り過ぎだよ。
言っとくけどビッチになったわけじゃないよ? 噛まなかったのが不思議なぐらいテンパってるからね? 私は靴下脱ぐだけで緊張するような人間なんだよ?
「見せたい物だけ見せてよ。もう準備いい?」
それにしても鳩山君、なんで見ないんだろうね? 普通の男の子ならあえて指摘しないはずだよ。気づかないフリをしながらチラチラと見るはずなんだけど、もしかして性的な興味がないの? それとも紳士すぎるだけ? 凄い精神力だね。浮気とか絶対しなさそう(情に流されて変な女に捕まりそうではあるけど)。
「そう……。うん、いいよ」
なんか途端に恥ずかしくなってきたね。さっきまで嬉々として見せつけようとしてたくせに、下着が見えそうになったくだりで勢いが殺されちゃったよ。やっぱり勢いというのは大事なんだね、結婚もわりと勢いだって聞くし。
「マニキュア……?」
「うん、厳密にはペディキュアっていうんだけど」
「ウィキペディア? テディベア? え、なんて?」
「ペディキュアだよ、もう。ふふふ」
面白いなぁ、鳩山君は。とりあえず今のやり取りで、コギャルと深い仲じゃない確率が高いということが分かったよ。女たらしって、普通の男が知らないようなことまで知ってるもんね。
「こっちも飾り気がない感じにしたんだけど、どうかな?」
ペディキュアに関しては、絶対あの女に手を加えさせない。っていうかフットネイルとか靴下破けちゃうでしょ、多分。
「可愛いよ。足の小ささも含めて」
「も……もー……。鳩山君は本当に……もー」
はあぁ、本当に好き。私のことを骨の髄まで好きでいてくれるところが好き。これもう卒業までに婚約することになるんじゃない? まだ心の準備が……。
「男なんて皆こんなもんだよ。足の裏とか好きだし」
それは鳩山君の性癖じゃない? むしろ男の子って、靴下脱がせるの嫌がったりしない? 靴下とかタイツが正義じゃないの? 網タイツとか好きじゃん。
「足の裏……? それはいつものヤツ?」
「いつもの……?」
「ほら、可愛い子に限るみたいな」
お願い、私が望んでる答えをちょうだい。
「そりゃ誰彼構わず欲情はしないよ。相手によっては、コイツのは見たくないって思うだろうし」
そう! そうだよね! でもさ、もっとハッキリ言ってもよくない? ぼかすような仲でもないでしょ。
「じゃあ私のは見たいんだよね? だっていっつも可愛いって言ってくるし……」
死ぬほど恥ずかしいけど、鳩山君に足の裏を向けてあげた。どうしよう、興奮のあまりむしゃぶりついてきたら。さすがにそういう趣味はないんだけど、でも拒むわけにはいかないよね。ほら、男の子ってメンツを気にするしさ、ここで私に拒まれたことがきっかけで婚約が遅れても困るし……まあ、触るぐらいなら認めても……。
「だ、だから、見えちゃうって」
もー! わざわざ言わないでよ! こっちは恥ずかしさのあまり、頭の中がいっぱいいっぱいなんだから!
「この席なら鳩山君以外には見えないよ」
私完全に痴女じゃん。これ本当に私? 何があったの? こんな短期間で成長しすぎじゃない? ちょっとまで吃音症一歩手前だったのに、今は強かなイイ女だよ。
……ねぇ、なんで目を背けるの? なんでキョロキョロしてるの? 周りの人間とかどうでもよくない?
「……どっちも見たくないんだ。へぇ、やっぱり可愛いってのは嘘だったんだ。心にもないことを言って、遊んでたんだ。嘘告のノリだったんだ」
私ってば中々意地悪だね。鳩山君が本気だって分かってるくせに、あえて面倒な女を演じてるんだから。
「放課後、放課後に見せてよ。他の人がいない場所なら……」
きたっ! 食いついた! これもうお誘いじゃん! これ絶対自分ちに誘い込む気満々じゃん! でも………………。
「今日、家に誰もいないんだけど」
今回は私の家に誘っちゃおう。せっかく親の帰り遅いしさ。




