第104話 大人の駆け引き(雨宮判定)
男女の友情は成立しないってよく言うけど、本当にそのとおりだと思う。まあ、両方に性的な魅力が皆無なら、ワンチャン成立するかもしれないけどね。で、鳩山君は異常なほど私のことが好きなことが確定してるわけだから、このお誘いを断れるはずがないよ。他のアホ男子とは頭の出来が違うから、がっついてると思われないように一歩引いた感じは出してくるだろうけど、最終的には誘いに乗るはず。だって男の子だもん。睡眠や食事ほどじゃないだろうけど、性欲も抗いがたいもののはず。
「雨宮さん、さすがに……」
うん、うん、そうだよね。ここは紳士な態度でくるよね。ここで乗り気な男は信用できないし、正解だと思う。よし、ここは上手く誘導してあげよう。
「そうだよね。ドブスの家に上がるなんて、耐えられないよね」
我ながらナイスアシストじゃない? 私が駄々をこねてる感を出せば、鳩山君にも大義名分ができるでしょ? いやぁ、私って結構イイ女? ひねくれてるだけだと思い込んでたけど、実はただただ聡いだけ? 考えてみればそうだよね、頭のいい人ほど変人扱いされるもんね。考える脳がないだけの人が、真っ直ぐな性格という評価を受けるってのは世の常な気がするし。
「……可愛いよ、雨宮さんは」
「じゃあ家に来てくれるよね?」
「……お邪魔させていただきます」
よしっ! これは見事にウィンウィンでしょ? 鳩山君は私の顔を立てることができたし、私は鳩山君の口から言わせることができた。このやりとり、大人の男女って感じがするねぇ。逆にそこらの高校生が子供すぎるんだよねぇ。本能の赴くままに性交してるだけなくせに、それで大人になったと勘違いしてるんだから、まことに救いがたいね。
「変なことしないでね……?」
とりあえず前フリをしておいた。これね、めちゃくちゃ重要だよ。だってこのセリフがなかったら、鳩山君の選択肢がなくなるもん。私に手を出さなかったら問答無用でヘタレの烙印押されるもんね。私のセリフによって、相手を尊重するっていう紳士な選択肢が追加されるんだよ。勿論、嫌よ嫌よも好きの内ってことで手を出すことも可能だし、鳩山君にとってはとても都合の良い状況だね。
えっ? せっかく親がいない状態で家に上げるんだから、サクッとヤることをヤっちゃえって? イイ女とイイ男はそこまで短絡的じゃないんだよ。エッチなことをするだけで満足ならそれでもいいんだろうけど、将来的なことを考えるとこういう焦らしも大事だよ。まあ、単純に心の準備ができてないってのもあるんだけどね。
「ああ、勿論だとも。足だけ見たらすぐ帰るよ」
「ふふ、楽しみにしとくよ」
「えっと……? 俺の方こそ……?」
あれっ? 誘い方が独特すぎて、ちょっと混乱しちゃってる? ふむ……ちょっとだけかましておこうかな。
「あっ、そうそう。私……男子を家に上げるの初めてなんだ」
「そっか……」
おー、これは内心喜んでるね。男の子って、やたらと好きな子の男性遍歴を気にするもんね。まあ、それは私も同じなんだけどね。その辺のビッチは、何故か知らないけど異性遍歴をステータスだと思ってるから、異性経験がない人は見下す対象になるみたいだけどね(つくづく理解しがたいよ)。
「他の男子が上がるなんてことは、これまでもこれからもないんだ」
絶対に浮気しないし、させない。今のでそれが伝わったはず。
「ハハハ、これからはわからないだろう?」
「……わかるよ?」
決まった! この流れで私の家にきたら、それはもう婚約成立になる! だってこの流れ、私の家に来たら結婚することが確定するじゃん。さすがに『いや、結婚どころか交際も考えてなかったよ。ただ単純にペディキュアを見せてもらおうとしただけだよ』なんて言えないでしょ。
はぁ、夢みたいだなぁ。一生独身どころか一生友達ゼロを覚悟してたのに、生涯の伴侶と巡り合うなんてね。なんだろ、なんとか系小説の主人公になった気分だよ。アレの作者及び読者を馬鹿にしてたけど、流行る理由が分かった気がするね。




