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テックフォードの遺産  作者: 之 貫紀
第2章 FOURTEEN FRANTIC DAYS

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どういうことか洗いざらい話してもらうぞ

「捕縛した盗賊の中に、雷刃のソードがいた?」


 バイリヴィールを含む西部第二大隊の指揮官である、トーマス・ウィンターズ少佐は、サンダンス盗賊団を引き連れて戻ってきたコロネンを自分の部屋へと呼び出して報告を受けていた。

 本来なら書面で直属の上司に報告するのが筋だが、サンダンス盗賊団の裏の顔が顔だったため、直接の面談となったのだ。


「どうやらサンダンス盗賊団は、帝国が送り込んだ特務員が作り上げた組織のようですね」


 西部軍は、最近、獅子身中の虫をあぶり出す作戦中だった。

 だが、その前に本体である盗賊団が潰されるとは誰が思うだろう。結局虫が誰だかは絞りきれなかったわけだ。


「軍部の虫もあぶり出せず、帝国が王国の内部にまで食い込んでいる現状は看過できんが――」


 三十そこそこで少佐を名乗っているトーマスは、軍部でも切れ者で通っていた。

 その彼が、神経質そうに書類を二回人差し指で叩き、少し逡巡した。


「それでも本体を取り除けたことは素直に喜んでおくか」

「はっ」

「しかも、最新型の銃まで鹵獲できたわけだしな」


 そう言いながら、目の前のテーブルに置かれた銃にちらりと目をやった。


「早速技術部に回して、解析を――」

「少佐、その銃の所有権は軍部にありません」


 コロネンは仕方なく少佐の言葉を遮った。上司が言い切ってしまえば、それは命令であり、抗弁が難しくなるからだ。

 盗賊団の持ち物は盗賊団を討伐した者のもの。それは法であり、無視はできなかったのだ。


「なんだと?」

「サンダンス盗賊団を討伐したのは軍部ではありません」

「だが、君が率いて戻ってきたのでは?」


 まさか自分が個人で討伐したから、軍とは無関係などと言い出すのではないだろうなと、トーマスは目を鋭くした。


「残念ながら、討伐したから受け取りに来てくれと連絡を受けて赴いた、しがないチームスター(*19)にすぎません」

「では、誰が? 高位冒険者のチームかね?」


 なにしろ捕縛した人数だけでも五十人以上に上る。

 それに雷刃のソードと言えば、銃が普及する前は無双とも言える活躍をした軍人だ。誰も軍人とは言わず、皆が剣士だと言っていたほどだ。

 

 そんな人間が含まれていた盗賊団を捕縛できるというなら、並大抵のものではないだろう。


「それが、その……」

「なんだ?」


 コロネンは小さくため息をつくと、本当のことを話した。


「魔法学院の三回生が、自分の侍女と二人で、だと?」


 コロネンの口から飛び出してきたのが、滑りまくるジョークだったかのうように、トーマスは眉をひそめた。


「何の冗談だ?」


 魔法学院の四年の首席でもそんなことは不可能だ。

 ついでに言えば、軍のトップでも、おそらくは無理だろう。

 

 それが三年?


「そんなに優秀な者が在籍しているとは聞いていないが」

「あー……」


 提出された成績表は、どうひいきに見ても中の下だった。

 そもそもなぜあの女が中の下なのか、現場を見ていたコロネンにはそっちの方が理解できなかったのだが。


「成績自体は中の下といったところでした」

「中の下?」


 それも信じがたい情報だったが、さらに気になることがあった。


「それをどうして知っている?」

「先日の深淵の森の実習に参加していました。成績はそこで確認したものです」


 確かに実習時に、成績順のリストと詳細は提出されている。

 

 だが、使用するのは序列順に並べてグループを作るときくらいだし、その場合も細かく見るのはチームリーダーとサブリーダーくらいなものだ。

 それ以下の人間は、得手不得手があるにしろ、どれも同じようなものだからだ。

 

 当然士官が直接接触することなどほぼないし、仮に名前を覚えたとしてもわざわざ順位を確認するようなことはしないだろう。

 所詮は有象無象の人間、機械的に割り振るだけだ。配属されるとなると、また別なのだが。

 

 なのにちゃんと名前を認識していて、しかもわざわざ成績を確認する? つまり、何かそうする事情があったのだ。

 

「……どうして?」

 

 鋭い目つきでコロネンを見る少佐を見て、こりゃどうにも追求をかわせそうにないなとコロネンは諦めた。

 そうして内心で、アリシアに謝りながら答えた。


「件の学生が、実力を偽っていたからです」

「実力を偽っていた? 学院に通っているのに? 三年間ずっと?」


 自分の実力を高く見せようとする者は多い。

 だが、中の下でサンダンス盗賊団を壊滅させたというのなら、低く、それも異常に低く見せていたということに他ならない。

 

 そんなことをする理由はなんだ?


「申し訳ないがコロネン少尉、まるで理解できない。実習の報告は読んだが、そんな人物の記載はなかった。どういうことか洗いざらい話してもらうぞ」



---- footnote ----

*19) チームスター teamster

輸送人。馬や牛を使い、複数の荷馬車を使って荷物を運んだ専門の運送業者のこと。

行商人と違って、馬車の荷物は他人の物だ。

現代ではトラック運転手や物流労働者を中心とした巨大な労働組合にその名が見られる。

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