お前ら、本当にただの盗賊狩りだったのか……
「フォーディー、なんだか強者っぽい人が出て来たよ」
「ですが武器は腰の刀めいた剣だけのようです」
対象が視界を横切る際の網膜上の移動速度の限界は、至近距離でおおよそ百メートル毎秒といったところだ。その速度になると物理的に目に映らなくなる。
なお、人体の強度や構造上、最速で振ったとしても剣速は五十五メートル毎秒程度が限界だと言われている。
「仮に彼が常軌を逸した達人で、目に見えないような速度であの剣を振れたとしても、そのエネルギーは五千ジュール(*10)程度に過ぎません」
「五千ジュール?」
アリシアには何の話だかよく分からなかったが、過ぎないと言うからには大したことがないということだろう。
「対物ライフルを前提にしたパーソナルシールドの物理設計強度は、おおよそ一万五千ジュール。まったく問題はありませんが――」
相手が魔法を使う場合は、彼の計算に当てはまるかどうか分からなかった。
「そこは大丈夫じゃないかな。帝国に魔法使いはほとんどいないし、強力な人ならなおさらだから」
どうやら南側は魔法文化を、北側は機械文明を花開かせているらしい。
だが、こんな狭い領域で、それほど違いのある文化が同時に発達した理由は分からない。非常に興味深いところだが、今はその危険性がほとんどないというだけで十分だった。
「問題があるとすれば、刃自体の危険性でしょうか」
「何それ?」
運動エネルギー自体はパーソナルシールドで中和されてしまうが、運動エネルギーがほぼゼロの状態でも刃物を動かせば手は切れる。
つまりパーソナルシールドを利用していても、料理中によく切れる包丁で手を切ることはできるのだ。
「そういうことは先に言ってよ! シャーリー!」
「お嬢様?」
「聞いてた? 剣を受け止めることはできるけど、鋭い刃物なら受け止めた後に手を切ることはあるんだって!」
「メイド服にも簡易な耐刃効果は施してありますが、インナースーツなら高周波ブレードやバイブロソードでもしばらくの間は受け止められます」
「鋭い刃物受け止めるときは、インナースーツのあるところで、だよ!」
「承知しました」
❖ ◆ ❖
襲いかかる男たちを触れもせず、簡単になぎ倒すメイドに、遠巻きに馬車を囲んでいた連中は少々腰が引けていた。
彼らは単に儲かるからサンダンスに従っていた連中だ。
「おいおい、ソードさんまで出て来たぜ。どうする?」
「どうするったってな……お前あのメイドの攻撃をかいくぐれそうか?」
「いや……」
そもそも何をやっているのかすら分からないのだ。
近づいたやつは全員触れることすらできていない。
「ならさ、馬車の中にいるあのメイドの主人を人質にするってのはどうだ?」
「それだ!」
「ソードさんがメイドの注意を引いている間に、馬車を挟んで反対側からこっそり近づけばいけるんじゃないか?」
❖ ◆ ❖
その男は、街中で女の子に声をかけるような気軽さで、シャーリーに話しかけた。
「よう。ご活躍だな」
「あら、どちらさまでしたっけ?」
「会うのは初めてだ。ソードと呼んでくれ」
近づいてみたら何かが分かるかと思ったが、ここまで来ても何も分からなかった。
こいつからは、あの強者と対峙しているときのピリピリした感じってのが、まるで感じられない。
構えなどないも同然だし、ただ立っているだけだ。立ち姿も隙だらけ。
どこからどう切り込んでも、一瞬先には二つに切って落とせそうに思えた。
底がまるで見えないような気もするし、雨上がりに少しの間だけできる水たまりみたいに浅い気もする。
真の達人ってのはこういうものなのだろうか?
「ソードさん?」
「雷刃のソードといえば、帝国じゃ、少しは知られた名なんだがね」
「帝国の?」
そう言うと、メイドが初めて驚いたような顔を見せた。
「ご丁寧にありがとうございます。私はシャーリー。テックフォード家のメイドです」
「テックフォード?」
王国にテックフォードと言えば一つしかない。
グレナフィオーラを有する、銀星の大杖の一族だ。
それはマーガス帝が、強く影響を受けたと言われている男の家だった。
「こいつは、なんの因果なのかね」
まるで素人に見える女だが、辺りに散らばっている男たちは現実だ。しかもどうやら生きてるようだ。
殺さずに無力化するのは、殺すよりも遙かに実力の差が必要であることは言うまでもない。
「わっけ分かんねーが、見合っていたところで、らちは明かないか」
彼は数メートル離れた場所で、半身に構え腰を落とした。
少し武術をかじった人間なら、まるで圧縮されるように空気がゆがみ重くなっていく感覚に囚われただろう。
そして、シャーリーが腕をソードに向けた瞬間、彼は鋭く左右に振れながら突っ込んできた。
それはさながら稲妻のようだった。
❖ ◆ ❖
「速度と移動幅が大きすぎます。エイムアシストおよびオートエイムの補正範囲外です」
「どういうこと?」
「端的に言うと、当たりません」
「ダメじゃない!」
「お、お嬢様、どうしましょう!」
今まで、引き金を引きさえすれば相手が倒れていたはずなのに、この男はシャーリーの攻撃を意にも介さず素早く動き続け、懐へと踏み込んでくる。
「シャーリー、左手を顔の前に上げてください」
「左手?」
そう言って彼女が左手を挙げた瞬間、そこにソードが振った刀が激突していた。
❖ ◆ ❖
「わわっ」
「なんだと!?」
ソードは自分の剣が、腕で、しかも簡単に受け止められたことに驚愕した。
少なくともここ数年は、彼の初太刀をまともに防いだ者はいなかったのだ。
突然のことに驚いて、少しよろけたシャーリーだったが、刀をぶつけられた衝撃は、わずかにしか感じられなかった。
それでも鋭利な刃が、彼女の袖を少しだけ切り裂いていた。
❖ ◆ ❖
「シールドの減衰率は十八パーセントです」
「どういうこと?」
「今と同程度の斬撃を2秒以内に6回繰り返されるとシールドが壊される可能性があります」
「ええ?」
❖ ◆ ❖
「まさか、こんなところでこんなやつに会えるなんて、世の中ってのは広いねぇ」
「な、何の話です?」
左手で剣を受けたまま、シャーリーは右手をソードに向けた。
その瞬間、彼は後ろへと飛んで、射線を外した。
そうして再び彼女へと切り込んできた。
「次は右手を下に」
「へっ? は、はい!」
シャーリーはフォーディーの先読み指示によるガードで、ソードの剣をことごとく防いでいた。
「王国で流通網の破壊工作なんて気が乗らなかったが、こいつはなんという天の配剤だ!」
❖ ◆ ❖
「ようし、今だ!」
数人で馬車へと駆け寄って、今まさに扉に手をかけようとした男の手が何かに強く弾き飛ばされた。
「ぐわっ!?」
男が弾かれた右手を押さえて振り返ると、いつの間にか少し先に、黒ずくめの男が立っていた。
手にしているのは御者用の鞭だ。
「汚れた手で私の馬車に触れることは許しません」
いつも寡黙な男が、小さくそう呟き、目深にかぶった帽子の奥でジェームズの目が光ると、鞭はまるで生きているように踊り出した。
❖ ◆ ❖
「ええ? ジェームズって、ホモイドだから銀河連邦のなんちゃら法で、現地の生命体には攻撃できないんじゃなかった?」
「彼は御者ですから、御者の仕事が優先されます」
御者の仕事は、移動時の操縦だけに限らず、動物の世話や管理、それに車両の点検や整備も含まれる。
つまり自分と馬車を守るのは彼の優先すべき仕事のうちなのだ。もっとも、それ以外は、ほぼ何もしない男なのだが。
「生命財産を侵害される場合の例外的措置ってやつ?」
「アファーマティブ。ただし御者の仕事以外には適用されません」
「シャーリーが出て行っても、何もせず座ってたもんね」
どうやらそこは徹底されているようだ。
だがそんなことを知らない盗賊たちは、仲間が襲われているのを見て全員が駆け寄ってきていた。
❖ ◆ ❖
「カカカカカ! 楽しい! 楽しいな、おい! ねーちゃんもそう思うだろ!!」
「お嬢様! 戦闘狂っていうのはこういう人のことですよ!」
ソードの剣閃は前にも増して速く鋭く、そうして威力すらも増しているようだった。
もっとも、最初から見えないのだから、その比較すらも難しい。ただ、フォーディーの指示が徐々に速く難しくなってきたのだ。
スカートを翻しながら、手や足でそれを躱し続けていたシャーリーだったが、メイド服の耐刃性は申し訳程度のものだから、あちこちが切り裂かれ始めていた。
「あー、もう! お嫁に行けなくなったらどうしてくれるんです!」
「そんときゃ俺の所に来い!」
「はい?」
突然の台詞に、一瞬呆けたシャーリーだったが、ソードはその隙を見逃さず、更に一歩踏み込んできた。
❖ ◆ ❖
「攻撃速度が徐々に上がっています。すでに人間の身体構造では理解できない領域に到達しています」
「何ですって?」
「シールド負荷、40%、50%、60%、危険域に入ります」
「出るわ!」
その報告を聞いたアリシアは、そう叫ぶと、反射的に馬車を飛び出していた。
彼女がインナースーツを身に付けていないことに気が付いたフォーディーは、斥候用ドローンの武器を非殺傷性のものからより強力なものへと切り替えた。
❖ ◆ ❖
「もう少しだ! あと少しで何かに――!」
ソードの意識は光に溶けて、剣閃は視覚からも意識からも消えていく。
「ブレスがクレイから解放され(*11)、もっと自由に! もう少しで――!!!」
重さがゼロに近づけば、速度は無限大に近づく。
彼が、大きな光と一つになろうとしたとき、それを断ち切るような音と衝撃とともに、突然世界は闇に包まれた。
シャーリーの前で崩れ落ち、地面へと倒れ込んだ男の向こうで、アリシアが静かに立っていた。
「魂が肉体から解放されて自由になる?」
彼女はソードに向けていた手を下ろして言った。
「それを『死』って言うのよ」
「お、嬢様?」
たとえオートエイムが間に合わないほど素早く動いたところで、マジック・ミサイルは必中だ。
そして極限まで膨らんだ風船は、わずかな傷で破裂するものだ。
奇蹟のタイミングで剣を振り続けていた男は、魔法が与えたほんのわずかな衝撃でバランスを崩し、自らの力で自らの体を滅ぼしたのだ。
「お疲れ、シャーリー。めちゃくちゃな人だったね」
「本当ですよ……」
チラリと辺りを見回したシャーリーは、後ろにいた連中も全員が馬車の周りで倒れているのを見て、力が抜けたように地面に座り込んだ。
それを見て笑ったアリシアが、彼女に手を差し伸べようと一歩を踏み出したとき、爆発音と風切り音を響かせながら彼女の頭に何かがぶつかった。
❖ ◆ ❖
簡単にけりが付くと思っていた。
自分たちの邪魔をする者など、あってはならないと思っていた。
戦力は十分だと、そう信じていた。
サンダンスは苦虫を噛み潰しながら、息つく暇もなく次々と倒されていく部下たちをなすすべもなく見ていた。
「月の光に誘われて地獄からやって来た悪魔ってのは、ヨタじゃなかったのかよ……」
時刻はまだ、ぎりぎり朝と言える時間だ。
地獄への帰りがけに遭遇したのだとすると、運が悪いにも程がある。
「だが、まだ俺にはこいつがある」
こいつなら、相手がたとえ悪魔だとしても、地獄へとたたき返してやれる。
彼はそう信じて、背中の袋から取り出したものに命を吹き込み、スタンディングで構えた。
冷たく重いものが腹の底に沈む。
正面ではソードがのめり込むように戦いに没頭していた。あれは自分よりも格上の誰かに挑むときのあいつだ。
しかも今回は、見たこともないほどたがが外れていた。その動きは彼の目にも捉えられないほど速く、もはや人の動きとは思えなかった。
だが、馬車から新たな女が飛び出してきて、何かをすると、まるで糸が切れた人形のように動きを止めて倒れ伏した。
あれがメイドの主人の悪魔だろうか。
ふと気が付くと、立っている見方はいなかった。幸いシビノの姿は見当たらない。無事に逃げ切って欲しいものだ。
彼は目を閉じて深く息を吐くと、再び目を開いて照準の向こうにいるメイドの主人らしき存在に向かって引き金を絞った。
「頼む……死んでくれ」
そう願いながら。
爆発音が響き渡り、筒の先から帝国の名前を付けた物体が、音よりも速く飛び出した。
それは死の予感を振りまきながら、アリシアの頭部へと吸い込まれて――
❖ ◆ ❖
フォーディーはアリシアの命を守るため、サンダンスや発射された銃弾を、いつでも迎撃できる位置にドローンを配置していた。
物理弾など、所詮は毎秒四百メートル。
それが十メートル進むのにかかる時間は、フォーディーにとっては永遠とも言える二十五ミリ秒(*12)だ。
大気の窓(*13)を計測して決定された近赤外線波長で衛星通信を行えば、通信遅延は往復で八・二ミリ秒以下、データ転送にかかる時間は一ギガバイトあたり八十ナノ秒だ。
情報を得てから、ドローンの制御システムが強力なレーザーで銃弾を蒸発させるまで、補正で二往復したとしても余裕を持って対応できる。
だが、彼が込めた銃弾を見る限り、初期の金属薬莢を利用した実体弾で重さは三十グラム(*14)といったところだろう。
発砲時の硝煙を見る限り、使われているのは黒色火薬に類するもので、初速は予測通り秒速四百メートル弱だった。
つまり弾が持つ運動エネルギーは、ざっと二千四百ジュール。
フォーディーは危険はないと判断して、手出しを見送った。
❖ ◆ ❖
その弾は、サンダンスの意志と帝国の威信を載せて、悪魔の頭に吸い込まれたはずだった。
コンマ1秒先の未来では、彼女はザクロのように割れた頭をさらしながら、永遠の眠りにつかなければならないのだ。
だが――
「……嘘だろ」
だが、確かに当たったはずのそれは、小さな音を立てて彼女の前にポトリと落ちた。
不意を突かれて小さくのけぞらされたアリシアは、バラのような笑顔を浮かべながらゆっくりと顔を上げ、彼を見た。
「一万五千ジュール、だっけ?」
「あの弾丸の持つ運動エネルギーは、おおよそ二千四百ジュール。問題になりません」
「剣の方が強力じゃない」
「アリシア、鍛えられた人間が一キロの剣を振って出せる最大の速度は、おおよそ毎秒五十五メテルです。エネルギーに換算すれば千五百十二・五ジュール」
「あの男は違ったみたいよ」
「統計上アウトライアー(*15)は除外されます。銃は誰が使っても同じ威力になりますから、剣のように使い手による差異が生まれる恐れはありません」
小さく何かを言いながら近づいてくるアリシアを呆然と見ていたサンダンスは、我に返ると、慌てて弾を込めなおして再び引き金を引いた。
激しい爆発音と白い煙を上げて発射された弾は、確かに彼女の体に吸い込まれたはずだった。だが、何か柔らかいものにぶつかったような鈍い音を立てただけで、彼女は小揺るぎもせず、歩みを止めることもなかった。
「バカな……バカな、バカな、バカな!!」
これ以上ないほど大きく目を見開いたサンダンスは、後退りながら何度も弾を込めては彼女に向かって引き金を引いた。だが結果は同じことの繰り返しだった。
「フォーディー、これ本当に大丈夫なんでしょうね」
「もちろんです。まさか銃があの完成度で存在しているとは少々驚きましたが、あの程度の威力では、ゼロ距離でもパーソナルシールドを抜くことはできません」
「ならいいけど」
そうしているうちに弾が尽きたのか、銃を放り出したサンダンスは、近くに落ちていたツーハンデッドソードを手にした。
サンダンスが手にしたツーハンデッドソードは、体積から見ておよそ四キロ。剣先の速度は秒速二十五メートルといったところで、大ぶりしても三十メートルまでだろう。
運動エネルギーは最大でも千八百ジュールだ。
「あれは?」
「銃よりも下です」
「使い手によるんじゃなかった?」
「アウトライアーはめったに現れないからアウトライアーなのです」
サンダンスは、その剣を持って全力で叫びながら走り寄り、その勢いのままに振り下ろした。
アリシアは、それを避けもせず、涼しい顔でその重厚な一閃を受け止めると、体をずらして剣が落ちるに任せた。
何しろ彼女はインナースーツを着ていない。そのまま刃に触れると、いかに切れ味を追求していないタイプの剣だと言っても切れる畏れがあったのだ。
サンダンスは、もはや驚愕というレベルを通り越して、ガクガクと震えながら、額からは滝のような脂汗を流していた。
「ば、化け物が……」
「化け物は酷くない? で、どうするの?」
「な、何を?」
「ここでその生涯に幕を下ろすか、ため込んだ財貨を吐き出すか。好きな方を選びなさい」
にっこりと笑うアリシアを見て、シャーリーは「お嬢様、それではどちらが盗賊か分かりません」と、以前と同じため息をつきながら立ち上がり、倒れた盗賊たちを縛り始めた。
彼女の言葉を聞いたサンダンスからは、一瞬で表情が抜け落ちた。
「お……」
「何?」
「お前ら、本当にただの盗賊狩りだったのか……」
「そうだけど?」
脱力したサンダンスは、その場に剣を取り落とすと、諦めたように型を落とした。
❖ ◆ ❖
なんだ? あれはなんだ?
シビノは全速力で、二人の少女らしきものが暴れていた現場から逃げ出していた。
サンダンスが放つ弾丸を正面から受け止め、まるで何事もなかったかのように無力化する女。
あの銃は帝国の最新モデルだ。弾丸の改良で、いままでの倍は威力があるはず。それを涼しい顔で受け止める?
あんなのがいるなんて聞いたこともなかった。
ダメだ、あれはダメだ。
「すぐにマーガス様にお知らせしなければ……」
彼は人目を忍ぶように街道の端を、北へ向かってひた走った。
*10) 五千ジュール
運動エネルギーは、(mv^2)/2で計算される。二分の一、エムブイ二乗というやつだ。
1kgの刀を100m/sの剣速で振ったときのエネルギーは、1x100x100/2 で5000J程になる。
ちなみに、軽自動車が時速36kmで衝突したときのエネルギーと大体同じだ。
なお、標準的な対物ライフルは、約42gの弾を初速850m/s程で打ち出すため、同様におおよそ15000Jちょっとになる。
なお、パーソナルシールドにはわずかとはいえシールドの復帰時間があるため、強力な一撃で貫くか、マシンガンのように細かい飽和攻撃で破壊するのが常道だ。
*11) ブレスがクレイから解放され
神は人の体をチリ(クレイやダスト)から作り、そこにブレス(命の息吹)を吹き込んで、生きた霊魂としたとされている。
精神が肉体から自由になる瞬間がどんなものかは知るよしもないが、恍惚としたゾーンの向こう側は、生者の世界とは言えそうにない。
*12) 二十五ミリ秒 (25ms)
1秒=1,000ミリ秒=1,000,000マイクロ秒=1,000,000,000ナノ秒
ちなみに光は1ナノ秒で約30cm進む。
*13) 大気の窓
大気を構成する気体分子は、特定の波長の電磁波を吸収する性質を持っている。
つまりこの分子の吸収対象から外れた波長は、大気に邪魔されずに地上へと届く。
この周波数帯のことを大気の窓と呼ぶ。
太陽の光が届くのも、星々の光が見えるのも、可視光領域に大気の窓があるからなのだ。
*14) 三十グラム
アメリカにおける最初のリムファイア式金属薬莢を使った軍用大口径銃は、.44口径のヘンリー銃と.56-56のスペンサー銃で、
それぞれの弾頭の重さは14gと23g程度だった。その後イギリスで、.577のスナイドル弾が開発され、それがおおよそ30gだった。
銃身の強度や、黒色火薬の利用、それに軍用というバランスを考えれば、おおよそ似たようなバランスに落ち着くに違いない。
*15) アウトライアー
統計学において、他の一群のデータから大きく外れた異質な値のこと。外れ値。
なお、測定や記録ミスに起因するものは異常値と呼ばれる。




