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迷路の迷路  作者: 畠山葵
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見えないものを汲み取れない

挨拶もそこそこに、その人の車に乗り病院へ

彼の非常な状態を想像しながら涙が止まらず病室へ行くと写真で見せてもらっていた、彼の家族が集結していた。

彼の家族は、彼の友人に挨拶をすると私には誰が来たのかと視線が送られた。


当たり前だ。

12年隠し通されていた存在だ。

私は解っていたから慌てて詰めた荷物の中から、彼と撮った写真やプリクラを取り出し東京でずっと付き合っていたことを伝えた。

ご家族は皆、不思議そうな顔をして私を見ていた。

私は必死に、別れたけれども心配でたまらずお見舞いに来たことを伝えた。


彼の頭には血が染みてきた包帯が幾重にも巻かれてる。

彼はあろうことかゆっくり起き上がり、私を見るなり名前を呼んだ。


その様子に皆が驚いて居る。

何故か。

そう、彼は私以外の記憶を無くしていたのである。

家族の事も友人の事も誰一人覚えていないのに、私にだけの記憶は残ったままだった。

私はその事は知らず、こんな形だがやっと彼に関わる人に彼と付き合ってた事が知ってもらえて少し嬉しかった。


彼は頭の他にも腕や足に擦過傷や打撲跡があったが、顔は私の好きな彼のままだった。


一度、家族と彼の元を離れ話し合いがもたれた。

付き合ってた事も含め、わざわざ会いに来た事、彼の他の記憶が戻るまで出来る限り会いに来てリハビリに付き合って欲しい事などだった。


私は貯金をおろし病院の近くに宿を取っていたので快諾した。

翌日より、私と会いに来れる家族や、友人による彼のリハビリのお手伝いが始まった。


看護師さんの話によると彼は夜はあまり眠らないそうだ。

眠剤を与えても、眠くならずフラフラと院内を徘徊したり、私は明日もくるのかなと独り言を言ってるそうだ。


会いに行く程に、私が一度面会者の名前や関係を伺ってから、彼に新たに紹介するという不思議な関係が持たれた。

彼の親戚や友人は多く、現状を説明しても初めて見る私だけに記憶がある嫌悪感や、自分が忘れられるはずがないと意気込んで会いに行く人も何人も居た。


けれど、彼は一向に思い出す事は無い。

相手がどんなに笑いかけても、○○だよ、大変だったな、生きてて本当に良かったと抱き締められたり手を握られてもキョトンとしているばかりだ。

あまりの無反応と窓の外を映す瞳を端から見ていると私は少し怖いような悲しい気持ちになった。

そしていつも決まって、私の名前を呼んでは知らない人が来た。怖い。というのだ。


相手の思い遣りや愛情が強ければ強いほど彼は興奮し隠れたり私の名前を叫んでいた。


この姿を家族も毎日目の当たりにし、仕事に都合をつけては来る父親と、手料理や替えの服を持ってくる母親は、昨日も来てくれたご両親だよと伝えるしか無かった。

毎日会えば思い出す確率が高いんではないかと思って居たがそうでもないらしい。


悲しいのはどんなに、昔話をしても彼の心は両親を受け付けなかった。

知らない人が知らない話をするけれど、この人達は誰かを亡くしたの?

俺によく似た人が映る写真も沢山見せてくる。。

俺が似てるから毎日くるのかな?

俺は怪我をして入院してるのに、知らない話をされても誰の話か解らなければ疲れるだけだと一掃していた。

とても胸が痛む。


記憶の戻りかたにも個性があり、医学的にもどんな治療やリハビリが早く無くした記憶を取り戻すかも解らないそうだ。


ご両親は泣きながら、宜しくお願いしますと私にまで頭を下げてくれた。


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