労りとココロ閉ざし
隠し通路を渡り、僕達は非常口の前に立っていた。
カードキーは無事役目を果たしたし、ロックも全て解かれている。開ければすぐに、ここと大して変わりない真っ黒な世界が見えるハズだ。
「ロック解除は出来たけど、ここからが問題だねぇ」
「……外の警備は薄いんじゃないんですか?」
「いや、そんな事はないよ。ここは基本的に外の警備を中心的に強化してるんだ。『僕らの所』は誰かが来ても大丈夫だからーって、どこでも内部だけがガッチガチでしょ?」
「はい……?」
「は?」
「ボクも分からないな」
……ああそうですか、結局汚れてるのは僕だけですか……
「……こほん。そう言う訳なんだけど、こっちは秘密裏に色々してる企業が多過ぎてねぇ。誰も入れさせない様にって外の方が警備が厳重なんだよ」
社会の裏知識を教えてあげると、3人はふんふんと頷いた。
「……なるほど」
クロトの左腕が、ぼんやりとした光を纏い始める。
……けど、すぐに消えてしまった。
「……それ、まだ身体が馴染んでいないんじゃ……」
千絋ちゃんが手を伸ばすと、クロトはパシン、とその手をはね退けた。
「別に、こんなの無くても眼で殺せる……」
酷く虚ろな目で千絋ちゃんを睨んだクロトを、首根っこから思いっきり掴み上げてやる。
「こーら。せっかく親切にしてもらってるのにダメでしょ?それにその眼の能力、多分生き物にしか効かないよ。この先は機械ばっかりだから無意味だ。ほら、謝って」
「……あの」
「……」
クロトはうつむいて僕達から目をそらし続ける。時紅君は表情無いままに……あ、ちょっと眉を潜めてるから怒ってるか……それを眺めていた。
そして思いきった様に、千絋ちゃんが口を開く。
「……俺なら、大丈夫です。多分……あの人、本当は誰かと関わるのが怖いだけだと」
「うるさい……っ!!」
「っ!?」
核心に触れられたのがよっぽどショックだったのだろう。何の前触れもなく、折れるかと思うぐらいの力で叩かれた。当然だがこんなのを喰らって手を離さずにいられるほど、僕の枯枝は丈夫じゃない。
クロトは何も言わず、そのまま外に出ていった。
「あっ、おい……待てよ、クロ!!」
大銃剣を担いで、時紅君がその後を追いかけていく。
「待って!!落ち着いて様子を見るんだ!!」
叫んだけど、もう遅い。分厚い扉の向こうで、小さくサイレンの音が聴こえた。
……まずい。
「……すいません、俺のせいで……」
「誰だってそういう事はあるんじゃないかな。それより早く行かないと、2人が危ない。……護衛、お願い出来るかい?」
千絋ちゃんはこくん、と頷いた。……あんなになった後だから、あまり期待は出来ないか。
「せーのっ……」
悲鳴の様な音を立てて、ゆっくりと扉が開いていく。
その先にあるのは、多分地獄だろう。
けれど、地獄から馬鹿な罪人を救う仏は僕だ。
……そう、見せかけておこう。僕は、誰よりも罪の意識を持たないのだから。
恐らくこれが最後の更新と思われます。




