5話 決意
「実家が異世界化しても困るんだけど……」
クールに説明するカティアに、僕は静かにツッコミを入れる。
「何言ってるの」
「この家は半分異界みたいなものでしょ」
カティアはそう言って、僕のツッコミを華麗にかわす。
確かにカティアの様なツノ尻尾付きの女の子がいるし、ちょっと前にミノタウロスに襲われたりしたけれど……うん、既にここは異世界なのか?
「えと、とりあえず」
「誰かが入ってくる心配は無いって事?」
ひとまず状況を確認する為に、カティアにそう問いかける僕。
うっかりご近所さんが野菜などを持って来て、このとっ散らかった惨状を見てしまう……なんて事になったら大変だし。
「そうね」
「異界渡りでもしない限りは」
僕の問いに対して、そう答えくれるカティア。
なんだか実家が完全に異世界扱いになってきているが、この際スルーして話を進めよう。
「でもこのまま……って訳にも」
「いかない、よね……」
「どうにか出来たり……するの?」
空は紫色だし、実家は異世界化だし、このよく分からない状況はなんとかしないと。
「大丈夫、安心して」
「やる事はたった一つよ」
カティア仁王立ちして、僕に向かい微笑みかける。
「ぇと……それは?」
なんとなくこの流れ、展開が読めるような読めないような。
いや、異世界系の話を読んだ事がある僕には予測出来るはずだ……と、脳内で考えを巡らす。
「宝物庫……つまり」
「ダンジョンを攻略すれば良いのよ」
ですよね~、カティアのその至極真っ当な答えに感心さえする。
「もちろん、貴方も一緒によ」
続けてコレまた予想通りの回答が帰って来て、驚きよりも安心感すらある。
「ぇ、でも僕は役に立たないよ」
「また肉壁?するのはちょっと……」
ミノタウロスの時は勢い余って自身を肉壁にしてカティアを守ったものの、また同じ事をしろと言われたら流石に出来る自信は無い。
「しなくていいわよ!」
「というか、貴方のその心臓私のモノだったんだから」
「大事にしなさいよね」
クールなカティアが珍しくツッコミに回って僕を戒める。
確かに助けて貰ったこの命だ、おいそれと肉壁にする訳にはいかないだろう。
「確かにね」
「なら、なおさら君の為に使いたいかな」
「大した力にはなれないとは思うけれど」
ちょっとカッコつけるように、カティアに向かってそう告げる。
それを聞いたカティアがドキッとする。
いや、ドキドキしてるのは僕なのか?
まぁ、どちらにせよカッコつけすぎで恥ずかしかったのは間違いない。
「そんな事ないわ」
「……あれよ、あれ」
「あれがあれば、力がみなぎってくるから」
ちょっと照れていたカティアが、そう言って何かを要求して来る。
何だろう?と考えながらカティアを見ていると、ジェスチャーの様な動きをし始める。
なになに?手のひらに乗るぐらいの大きさで?
形状は……スーパーボールの様な?
柔らかいのにジューシーで?
と、ほぼほぼ答えを言っている気はするが、あえて答えを聞く僕。
「それは?」
「……」
「ぐみ!」
ちょっと恥ずかしそうに叫ぶカティア。
うん、可愛らしい。
「あと、ご飯もね」
「美味しかったし……」
目を背けながら話す小さな女の子、カティア。
「だってほら、魔力回復にちょうどいいのよ」
「ダンジョン攻略には回復役は必須よ」
凄く説明口調で捲し立てるように話してくれるカティアだが、要するに美味しかったからまた食べたい……って事なんだろうな。
「……ユウ、貴方は」
「役立たずなんかじゃない」
紅潮した顔でそう熱弁するカティア。
僕はそんなカティアを見つめたまま、
「……」
「ありがとう、カティア」
そう返事する。
そんな僕の優しげな顔にカティアはドキッとする。
「宝物庫の攻略は大変だから」
「さっさと行くわよ」
動揺しているのを悟られない様になのか、そう言った後、素早く蔵の方を向く。
「そうだね」
僕はそんなカティアを微笑ましく見守り、後をついて行く。
胸の鼓動が高鳴っている。
それは僕の鼓動なのか、前を歩く女の子の鼓動か。
重なる鼓動が響きながら、僕達の宝物庫ダンジョン攻略が始まった。




