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僕の胸に響く君の鼓動  作者: チームつちのこ
一章 思い出の蔵

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3/15

3話 愛称

「今持っていくからね」 

 そう呟く先には今にもヨダレを垂らしそうな女の子が、指を咥えてこちらを見ていた。


「ぁ、いや」

「いい匂いがしていたから、では無くて」

「貴方の身体を心配して……ね」

 なんだか言い訳をしているようだが、僕の身体の心配をしているのは本当なのだろう、うん。

 ヨダレが垂れそうな女の子を見ながら、僕はそう思った。



「ひとまず、ご飯食べてからにしようか」

 色々と聞きたいことはある。

 質問も疑問も沢山ある。


 だけど難しい話はご飯の後にしよう。





「「いただきます」」

 僕と女の子はそう言ってご飯を食べ始める。


 モグモグ


 モグモグ


 うん、ちゃんとご飯がパラパラで塩加減もちょうど良い。


 スス……


 スープも仄かにごま油の香りが追加され、チャーハンとの愛称バツグンである。




「……」


「……ぅ」

 女の子がチャーハンを口に含みながら、唸っている。


 なんとなくわかって来た。

 この流れは……



「うまぁぁぁぁ……」

 頬に手を当てながら恍惚な表情をして身体をくねらせている。


 予想通りとは言え、美味しく食べてくれている事に嬉しさを感じる。




 パクパク


 モグモグ


 ゴクゴク


「……」

「……ぷふぁ〜」


 女の子は夢中でご飯を食べる。

 きっと成長期だろうし、いっぱい食べてくれて嬉しいことこの上無い。



「「ごちそうさま」」

 僕と女の子はそう言って手を合わせる。




「……」

「ぉ、美味しかった……です」 

「あり……がとう」

 ガッついて食べたのがちょっぴり恥ずかしかったのか、照れくさそうにそう呟く女の子。



「おそまつさまです」

 女の子の呟きに対し僕はそう返し、



「片付けて来るよ」

「それ飲んで待ってて」

 そう言いながらチャーハンが盛られていたお皿とスープのお椀を片付ける。



「……」

「私も」

「手伝う」

 そう言いながら自分の食べたお皿を片付ける女の子。

 なんだか見た目の割にしっかりしていて感心する僕。




 食べ終わった食器と使い終わった調理器具を片付け、再び居間に戻る僕と女の子。


 先を歩く女の子の後ろをついて行く僕だが、改めてその女の子を見つめて考える。

 見た目小学生の高学年?で140センチ無いぐらいか。


 いや、早生まれで中学生なのかもしれない……なんて考えるが、僕はすぐにそれを否定する。


 なんせその女の子の頭にはツノ?らしきモノが生えていて、お尻の辺りからは尻尾まで生えている。


 歩きながらピョコピョコ動く尻尾を見ると、なんだか嬉しそうな感じが伝わってくる。


 お手軽まかないチャーハンが美味しかったのか、僕は微笑ましく見守った。



 その尻尾の動きは、まるで犬か猫か……小動物の様な動きだ。



 ただその尻尾は犬とも猫とも言えず、どちらかと言うと……ワニ?の様な感じの尻尾である。


 服装も黒色ベースにミントグリーンの差し色のゴスロリ系ドレス?私服?


 最初に見た時はコスプレかと一瞬思ったが、頭のツノから炎の様な雷の様なモノを出していたので、本物?なのであろう。


 その結論に至ると、今度は本物ってどういう事?と次の疑問が湧いて来る。


 そんな感じで頭をグルグル回している内に居間に着く。



 居間にあるテーブルに座り、空になっていた女の子のコップに再び飲み物を注ぐ。


「……ありがとう」

 そう言いながら居間のテーブルの側にある座布団に座る。



 僕の方のコップににも飲み物を注いだ辺りで、僕は口を開く。


「……えと」

「僕は、真叶 優(まかない ゆう)

「君は……、えと」

 自己紹介をして、色々と聞こうとした辺りで女の子の名前すら知らないことに気付く。



 すると、

「……私は」

「カトゥラリア・ドラグネッティ」

「……カティアでいいわ」

 と、女の子の方も自己紹介してくれる。

 しかも長そうな名前を心配して、愛称で良いよと言ってくれて、とてもありがたい。



「ぇと、じゃあ」

「カティア……ちゃん」

 そう言った辺りで、カティア……ちゃんが僕に被せてくる。

「カティアでいいわ(2回目)」




「ぁ、うん」

 いきなり女の子を愛称呼びで言う……というのをためらっていた事を見透かされたのか、最初より少しだけ強めに主張してくる。


「それでカティア」

「僕のこの胸の鼓動」

「それが君のモノだって……一体」

 先程言っていた件だ。



「そのままの意味よ」

「貴方の中で脈打っているその心臓」

「私のモノをあなたに使ったの」

 またトンデモない事を言い放った。

 いや、さっきも聞いたんだけれどね。


「ミノタウロスと対峙した事は覚えてる?」

 半目だけど見開いてる気がするその真剣な眼差しで、僕に問いかける女の子、いや……カティア。



「うん」

「僕は胸を貫かれて……」

「死んだの?」

 あの時胸を貫かれた生々しい感覚は今でも覚えている。


 あれは幻想でもなければ夢でもない、僕の心が……いや胸に残る傷跡がそう言っている。



「あのままだと確かに死んでいたわね」

「だから私のを使った」

 サラッと手持ちの絆創膏を使った様な、軽い言い回しで説明するカティア。



「ぁ、いや、そんなに簡単に使えるものなの?」

「心臓って」

 そんな言い回しに突っ込む様に問い返す僕。



「もちろん簡単な話では無いわ」

「三つあるとは言え」

「命を差し出す位の覚悟が無いと無理ね」

 またまた凄い事を冷静な顔で語るカティア。


「ぇ、ごめん……」

「僕みたいなのに、そんな事まで」

 つい反射的に謝ってしまう僕。

 カティアはそんな僕を見つめて、話をさらに続ける。



「さっきも言った」

「むしろ助けて貰ったのは私の方」

「だから気にしないで」

「ユウ」

 半目で感情が読み取りづらいが、少しだけカティアが笑った様な気がした。

 その僅かな笑顔にドキッとしたものの、この心臓の鼓動はカティアのもの?いや僕の?と少々混乱する。


 何気にカティアが、僕の事を名前呼びした事も影響しているのかもしれない。



「そういえば……」

「三つあるって言ってたけど」

「減っちゃってるって事?」

「カティアの心臓」

 疑問が続々と湧いてきて、質問が止まらない僕。

 そう問いかけながら、カティアの胸を見つめる。


 あ、いや胸を見つめるって、そういう意味じゃ無いよ。

 カティアの身体の心配をして、って意味だよ。


 それにほら、成長したら大きくなるって言うし。

 いや、これは発言したら逮捕されてしまいそうな問題発言。



「そうね」

「今は二つ」

 なんてカティアの胸を見ながら見ないようにしていると、静かに返事する。


「大丈夫?」

「ほら、貧血とか」

「低血圧とかになっちゃわない?」

 なんか聞き方がおじいちゃんの健康話みたいになってきているが、大事なことなので僕はカティアに問いかける。



「物理的な心臓と言うよりは」

「魔力核と言った方が正確かもしれない」

「だから血圧的な問題とは関係ないわ」

 カティアがそう言って、僕は少しだけ胸を撫で下ろす。


「まぁ、低血圧かと問われたら」

「普段からそうだけど」

 その冷静な喋りとクールな対応、半目の可愛らしい眼差し、確かに低血圧っぽい。



「そっか、良かった」

 そう言って僕はカティアに微笑む。


 それを見てカティアも小さく微笑み返す。

 ちょっぴりドキッとしたが、可愛らしいからかな?


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