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僕の胸に響く君の鼓動  作者: チームつちのこ
一章 思い出の蔵

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2話 胸の傷

「それ、私の心臓なんだ」


 一瞬何を言われたのか分からなかった。





 自分の胸に手を当てて鼓動を感じる。


 ドクン……ドクン……


 微かに高鳴るその鼓動、確かに僕の中から感じるモノだ。




 でもすぐに疑念が生まれる。


 僕はミノタウロスに胸を貫かれた。

 背中まで貫通したハルバードの感触は生々しく、今でも覚えている。


 でもそこにある筈の胸の穴は無かった。


 そんな風に考えていると、女の子が口を開く。




「勝手な事をして悪いとは思ったけれど」

「私の心臓を使ったの」

「貫かれた貴方の心臓の代わりにね」

 その女の子はサラッと凄いことを言った。



「ぇ?」

「ぁ、いや、助けてくれたって事……だよね」

「むしろ、ありがとう?」

 その凄い話を理解しようと頑張りながら、女の子に向かってお礼を言う。



「あれ?」

「でも……」

 自分の胸の中にある鼓動を感じながら女の子の方を向き、浮かんできた疑問を口に出そうとする。



「大丈夫よ」

 女の子はそんな僕を見て、先回りする様に返事する。



「今、君の心臓は無い……って事?」

「ゾンビ……的な、やつとか」

 僕の胸に女の子の心臓があると言う事は、目の前で喋っている女の子の体内には心臓が無いということになる。

 なのに動いて喋っている女の子。

 

 ゾンビ?いや、その割には肌の血色も良いし……むしろ頬を赤らめていて健康的ですらある。


 なんてマジマジと女の子の顔を見つめていると、



「そんなわけ……ないでしょ」

 僕に思いっ切り見つめられて照れてしまったのか、目を逸らしながらそう呟く女の子。



「三つあった私の心臓を一つ、貴方の心臓として使っただけよ」

「だから大丈夫なの」

 なんか簡単に説明しているけれど、凄まじい事を口走っている女の子。



「ぁ、え?」

「……ありがとう」

 相変わらず頑張って理解しようとするものの追いつかず、またもやお礼を言う事しか出来なかった。



「どういたしまして」

「……というか」

「お礼をいうのは私の方よ」

「あのままだと私の方がやられていたし、それに美味しかったし……」

 なんだか段々声が小さくなって、最後の方はゴニョゴニョ呟いている感じになっている女の子。


「ほら、あれよ」

「……グミ」

 またもや顔を背けながら、小声で呟く女の子。


 なんだか照れながら話す小さな女の子は微笑ましいな、なんて思う。



「ぁ、いや」

「あんなものしか無くて」

「こっちこそゴメン」

 小腹を空かした時用にたまたま持っていたグミを、そこまで喜んでくれるとは。


 あの時のグミの味を思い出しているのか、女の子はちょっぴり嬉しそうに頬を赤らめている。


 すると……


 グウゥゥゥゥゥゥ……



 何処からか音が鳴る。


 いや、どこから鳴っているのかは分かっているんだけどね。



「ぁ、いや……その」

 僕は何も喋っていないのに、女の子は言い訳しようとしているのだろうか、モゴモゴ呟き始める。




「まぁ、ひとまず」

「家に戻ろう」

「ご飯も準備するよ」

 グーペコであろう女の子に僕はそう告げて、家の方を向く。


「……わかった」

 お腹の音を聞かれたのが恥ずかしいのか、照れくさそうに女の子は目を背けながらそう返事した。



「ぁ、でもその前に」

「着替えてからでいいかな?」

 胸に穴の開いた服を見て、僕はそう呟きながら家へと向かった。






 家に戻った僕は血のついた服を脱ぎ、シャワーを浴びる。

 血で汚れ、穴の開いた服を片付け新しい服を着る……が、その時に胸の傷口を見る。


 ミノタウロスのハルバードが貫いていた位置には傷口らしき物はあるが、小一時間前には穴が開いていたとは思えない程に塞がっている。


 疑問は数え切れない程あるが、難しい話になりそうな予感がした僕は腹ごしらえを優先することにした。


 手早く着替え、女の子を待たせてる居間に向かう僕。




 その途中でキッチンにある冷蔵庫に寄り、飲み物を探す。


「ぅ〜んと」

「フルーツ好きなのかな?」

 フルーツ食感と味を再現したグミで喜んでくれていた事を思い出しながら、飲み物を選ぶ。


 コップに果汁の入ったジュースを注ぎ、それを持って僕は再び居間に向かった。


 和風建築である座敷の居間に入ると、真ん中にテーブルがあり座布団が並んでいる。

 

 小さくて可愛らしい女の子が、その座布団の一つにちょこんと座っている。



「待たせてごめんね」

「コレ飲んでもうちょっと待ってて」

「簡単なご飯、準備するよ」

 そう言いながら手に持ったジュースをテーブルに置く。



「ぁ、ありがとう」

 お腹が空いて居るのか、先程よりちょっと元気ない感じで返事する女の子。


 僕はご飯の準備をする為に、そのままキッチンに引き返す。

 キッチンに向かう途中で女の子の居る居間の方から、何やら声が聞こえてくる。



 ゴクゴク


「……ぅまぁ〜」

 うん、ご飯と一緒に飲み物のおかわりも持って行こうかな。


 冷蔵庫を開けると作り置きして冷凍してあったご飯がある。

 その冷凍ご飯を電子レンジで解凍する。


 その間の時間を利用して、卵と小ネギ、パックのハーフベーコンを準備する。


 小ネギを手早く小口切りにし、ベーコンも細かく刻む。


 卵をボウルを割り入れ、手早く混ぜる。


 使った包丁などを洗って片付けている間に電子レンジが鳴る。


 解凍が終わったご飯を取り出し、温度を確認する。

 程よく解凍されているので、そのご飯を卵の入ったボウルへ入れる。


 そのまま一緒に炒める前のご飯と卵を混ぜてしまう。


 本格中華ならちゃんと別でやるのだろうが、これは学生時代に身につけた簡単で美味しいお手軽調理法。


 温めておいたフライパンに薄くごま油を引き、刻んだベーコンを入れて軽く炒める。

 そして卵かけご飯状態のご飯を放り込み、手早く炒める。


 塩胡椒で味を整えて、フライパンの縁から醤油を少し流し入れる。

 香ばしい醤油の香りが立ち込め、そのタイミングで小ネギを投入。

 小ネギは炒めすぎないように手早くフライパンを揺らしたら、盛り付ける。


 これも解凍中に準備しておいた、即席中華スープの素が入った器にお湯を注ぐ。


 風味付けにごま油を数滴垂らし、チャーハンに添える。


「よし、出来上がり」

 素早く簡単なお手軽レシピの王様、チャーハンの完成である。


 お腹を空かせているであろう女の子の元に届けようと手に持った所で気付く。


 背後に何者かの視線を。


 素早く振り向く僕。





「……」


「出来た……よ、今持っていくからね」 

 そう呟く先には今にもヨダレを垂らしそうな女の子が、指を咥えてこちらを見ていた。

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