17話 繋がり
だって、赤い糸って……それはつまり、
運命の人!?
僕と?カティアが?
「……」
「どうしたの?何か変よ、ユウ」
謎に動揺している僕を見て、カティアがそう声をかける。
「ぁ、いや……」
「……大丈夫」
なんでみんな大丈夫じゃない時に、大丈夫って言ってしまうんだろう、そんなぐらい動揺している僕。
いや、だって、小学生高学年か……良くても中学生みたいな年下の子が運命の人だって示されたら、動揺もするでしょう。
だって、下手したら事案で逮捕されちゃうかもしれない。
それに僕みたいな人間に、カティアみたいな可愛い女の子は不釣り合い過ぎて、カティアに迷惑がかかってしまうかもしれない……なんて自分に向かって言い訳する。
ん?でもまてよ、カティアはお姉さんだったか?
なら、合法なのか?でも異世界で合法とは?などと、頭が混乱し始めてる。
落ち着け僕。
だってカティアはお姫様?なんだし、それ相応の立場とか身分のふさわしい人が居るはずだ。
それに例え糸があったとしても、カティアの気持ちのほうが大事なんだと思う。
こんな僕みたいな人間が、そういう人だったらカティアはきっと困る。
だから、僕がそういう人だなんて事は……無いだろう。
なので少し冷静になって考える、赤い糸……赤い?
そう言えば、赤い糸は血管を表している……という説もある。
だから、カティアと僕の血管が繋がっていて……
そうか、僕の胸の中にあるのはカティアの心臓だったモノ。
時折、自分じゃないドキドキを感じる事があって、それはカティアの鼓動?が僕に伝わっている気がしていた。
仕組みとか原因は分からないけれど、カティアと僕の心臓というか鼓動が繋がっていて、それが赤い糸として見えているんだ。
だから運命の人とかじゃ無く、共鳴とか鼓動が同期してるだけの生理現象、うん。
それだ、それで行こう。
「ちょっと顔が赤いわよ」
「初めて魔力使って、疲れたのかしら」
カティアは僕の顔を見てそう言う。
動揺して、挙動不審な僕を心配してくれているのだ。
可愛らしい上に優しいとか、凄いなぁカティアは。
「そ、そうだね」
「ちょっと休憩にしよう」
僕は心を落ち着かせる為に、 そう言ってペンタ師匠にも声を掛けて一休みする事にした。
ススス……
「ふぅ……」
お茶をすすり、空を見上げる僕。
気持ちのいい青空と、優しく吹き抜ける風が心を落ち着かせてくれる。
さっきまで動揺していた心が、穏やかになっていく。
「それで……」
「どうだった?魔法は」
同じ様に、お茶を飲みながら隣に座るカティアがそう話す。
魔法……昔カティアに異世界話をしてもらった時とか、学生時代に読んでいたファンタジー作品などで出てきた魔法。
それを今の僕が使えている。
「凄いね」
「本当に魔法だよ」
僕はそうカティアに返答しながら、自分の手のひらを見つめる。
と言っても、実際に使えたのは収納魔法ぐらいなのだが、それでも魔法は凄い……そう思える程である。
「ふふっ」
「それは良かった」
そう言いながら微笑むとお茶をすすり、カティアも空を見上げる。
なんだか縁側でこんな風にお茶をすすりながら会話していると、長年連れ添った老夫婦の様だ。
まぁ……間違ってないのかもしれない、僕とカティアは20年近く前に会っていて、その時にもいっぱいお話をしていた。
だからなんとなく話しやすいし、心が落ち着く気がする。
「ユウ殿は、スジが良いですからな」
そうペンギンのペンタ師匠が、僕に向かって話す。
そう、一つ違う点があるとすれば……ペンギンも同席している、という所か。
「いやぁ、そんな事無いよ……」
「皆みたいに魔法、って感じのものでも無いし……」
「ペンタ師匠は、水と氷で」
「カティアは炎?雷?」
僕はペンタ師匠とカティアを見ながら、そう問いかける。
「そうね」
「私は炎と雷の特性が、強く出てるみたい」
「竜の因子が影響だと思う」
そう、カティアは魔族と竜のお姫様?である。
お茶をすすり、落ち着いているカティアの頭にはツノがが生えており、黒色ベースでミントグリーンの差し色のゴスロリ服の後ろからは尻尾も出ている。
なんだか見慣れてきて、違和感が無くなってきていたが……異世界の竜のお姫様だった。
「ペンタは水龍の系統だから、水とか氷が特性として出てるわね」
カティアがペンタを見ながら、そう言った所でさらに思い出す。
ペンギンに見えるペンタゴンのペンタ師匠も、一応竜だった。
お腹には大きな黄色の星マークもあるし、自称竜の執事?側仕え?との事である。
僕が多少魔法を覚えた所で、さすがにそんな凄い異世界人?竜?達とは、僕の力を比べたら天と地ほどの差があるのだろう。
むしろ収納魔法が出来ただけでも、褒められるべきである……。
そんな風に自分を励ます僕。
「ユウの属性は……」
「無属性?って言ってたわね」
そう、僕は派手に炎を出すわけでもなく、華麗に水や氷を扱う訳でもない。
無属性……だったのだ。
「無属性は、特殊な魔法が多いから」
「ユウもそうかもね」
「どんな感じの魔法だったの?」
僕を励ましてくれているのか、カティアが優しく問いかけてくる。
「ぁ〜、えとね」
「……糸というか、なんというか」
糸を感じる?見える?という、言葉にしにくい説明をしようとした辺りで思い出す。
赤い糸。
それをそのまま説明したら、カティアが困っちゃいそうだな……なんて勝手に気を回して、上手いこと言い換える僕。
「探し物を見つける能力……みたいな?」
「モノや人とかの繋がり?的な物が見えるというか」
「感じられる力?」
僕はなるべく分かりやすく説明してみる。
「……感知系って事ね」
僕の話を理解してくれた様で、その能力を簡潔に分類してくれる。
「感知系魔法は、色々な所で重宝されるから」
「むしろ凄いわよ、ユウ」
僕にそう言ってくれるカティア。
励ましてくれてるんだろうな〜なんて勝手に思う僕。
色々な所で重宝される……事にあんまりいい思い出が無かった会社員時代。
都合よく使われて、仕事を押し付けられる……そんなイメージしか無かった。
だけど、今はなんだか違う。
カティアに励まされて不思議と嫌な気持ちはしない、むしろ嬉しい。
僕の力がカティア役に立つというのなら、喜んで使いたいとも思う。
「思ったより、魔法っぽくないのが残念……だけどね」
「こんなので、ちゃんと魔法使えてるって言えるのかどうか……」
嬉しい気持ちはあるものの素直に口には出せず、僕はそう言ってしまう。
「大丈夫よ、ユウは魔法使えてるわ」
「……昔っからね」
「ほら」
そう言ってカティアが見せたのは、お茶と一緒に出していた小袋。
お菓子の入ったファミリーパックの個包装の袋だ。
「美味しい魔法」
半目でクールキャラなのに、嬉しそうに微笑むカティア。
そう……昔の僕は、こういう個包装のお菓子を持ってカティアに会いに行っていた。
当時は名前も知らず、お姉ちゃんと呼んでいた記憶がある。
そのカティア……お姉ちゃんと個包装のお菓子を一緒に食べていた。
その時に言った言葉、美味しい魔法。
僕の初めて使った魔法だ。
「……そうだね」
僕はその個包装のお菓子を持って、カティアに微笑み返した。




