16話 適正
「僕の……適正」
そう呟きながら、ペンタ師匠を見つめる僕。
「まずは先程みたいに、魔力を感じる所からかの」
「難しく考えず、やってみなされ」
そう促され、僕は再び自然体で魔力を感じ取る為に、自身の感能力を高めてみる。
コツを掴んだからか、先ほどより鮮明に魔力とやらを感じ取ることができている……気がする。
すると、自身の周りに色のついた風の様なものが纏わりつく。
「収納魔法は、収納していた物質を出す感じでしたが」
「今度は魔力そのものを手のひらの上に出す、といったイメージですかな」
「それが魔法ですじゃ」
ペンタ師匠が丁寧に魔法の使い方を解説してくれる。
「……なるほど」
「魔力そのものを出すイメージ……」
僕は右の手のひらの上に、さっき感じた魔力の流れを集める……イメージをする。
すると、右手の上に野球ボール程の魔力の球?らしきモノが集まって来た。
「へぇ〜」
「これが魔法」
「でも、これペンタ師匠みたいに水とかじゃ無いんだね」
僕の手の上にあるのは、野球のボール程度の大きさのシャボン玉?にしては割れる気配もないし、どこかに飛んでいく感じでもない。
「ほう……」
「通常であればこの時点で、適正のある属性の色が強く出るものですが……」
ペンタ師匠はそう言いながら、僕の出した魔力の球を見つめる。
「……色」
同じ様に、僕もその球を見つめる……が、薄いシャボン玉の様で、特に何色?と問われても無色か透明か、といった感じである。
「これは、何色なんですかね……」
「もしかして、色か薄い?」
「つまり魔法のセンスが薄い……?」
ある程度のことを浅く広く覚えて来た僕は、一つの事を深く追求して来なかった。
つまり器用貧乏になっている……そんな自覚はあるが、まさか魔法のセンスまで影響してくるとは。
まぁ、魔法なんて使う予定も無かったし、仕方が無い。
「ふむ、火の適正ならば……暖色系」
「水や氷ならば、寒色系」
「風は緑系や、土系統は茶色など、基本的な属性ならば、そういった色が鮮やかに出るはずですが」
「この感じ……」
ペンタ師匠が、僕のシャボン玉を見ながら考えている。
「ふむ、あれですな」
「無属性ですじゃ」
ひとしきり考えていたペンタ師匠が、僕の方を見てそう言う。
「……無属性」
「つまり、無個性的な?」
なるほど、魔法適正が無かったって事か。
少々残念だが、収納魔法は一応使えたので良しとしよう。
僕はそう思い、自分を慰める。
「基本属性とは違い、珍しい属性ですが」
「魔法が使えないという意味では無いですじゃ」
少々落ち込んでいる感じの僕を、励ましてくれるペンタ師匠。
「それで……」
「無属性って、どんな事が出来るの?」
水とか炎なら分かりやすくイメージ出来るが、無属性となると何が出来て何が使えるのか、さっぱりである。
「ふむ、無属性……」
「こればかりは、人によって違いますから」
「ワシにも分かりませぬ」
ペンタ師匠でも分からないとなると、ますます自分の魔法適正に自信が無くなってくる。
「先程したように、魔法の感能力を高めてみて」
「自身から浮かび上がってくるイメージを、感じてみるしか無いですじゃ」
「ワシは、それが水と氷でしたのでな」
ペンタ師匠はそう言って、水の球を出したかと思うとそれを氷にして見せる。
イメージか……確かにペンギンのイメージは、水と氷で間違いないと思う。
僕の中のイメージ……良く分からないが、何事もひとまずやってみますか。
そう思い僕は手を前に出して、手のひらを上にしたまま魔法の感能力を高める。
なんとなく目を瞑った方が集中しやすいかと思い、目を閉じた状態で自分の魔法をイメージしてみる。
「……」
「……ぅ〜む」
といったものの、火とか水とか風とか分かりやすいイメージでは無く、無属性?と言うこともあり、僕は悩ましげな顔をしながら頑張る。
「……ん?」
すると、心の中なのか奥なのかぼんやり何かが見えて来る。
それは白くて細い。
そして長く、どこかに繋がっている感じはするが、先は見えない。
「……糸?」
なんとなく糸の様なモノは見えた……が、目を開けてみても白い糸が具現化されている訳でもない。
物質として現れていない……のに、なんとなく感じたり見えてる様な気がする。
ただ、糸そのものの気配というか……それを感じる感覚だけはある。
この感覚、覚えがある。
物を落とした時や、探し物を頼まれた時の探している感じに似ている。
どこにあるか分からないものを、細い糸を頼りに手繰り寄せていく感覚。
何故か僕は、そういう落とし物や無くしたものを探して欲しいと頼まれる事が、ままあった。
自分が無くした訳でもないのに、感覚を頼りに探すと不思議と見つかる。
そんな事をしていたら、探し物を頼まれる様になった……という感じだ。
「これが僕の、能力?」
ちょっとした探し物が見つかる能力……なのかな?
火や水、風といった分かりやすい能力と違って、地味な力とも思えるが……以外に便利かも?なんて思える。
それは僕自身の能力だから、そう思えるのかもしれない。
「どうやら、感じ取れたようですな」
「あとは、おいおい慣れていけばいいですじゃ」
「ユウ殿の魔法適正は、ちゃんとありましたぞ」
そう言ってくれるペンタ師匠。
うん、優しい。
「なるほど……これが能力、というか魔法」
そう言いながら自分の右手を見つめる……と、
「あれ?」
再び糸が見える……というか、感じる?
どこからか長い糸が伸びていて、自分の右手の小指に結ばれているのに気付く。
「赤い?」
さっきまで感じたり、探し物をしていた時に見ていた糸は白色だった。
だけど僕の右手の小指に結ばれ、どこかに伸びているその糸は赤色だ。
白とは違う色もあるんだ……と思いながらその糸を見つめる。
ふ〜む、色によって効果とか見つけるものの種類が違ってくるのかな?なんて考えを巡らせながら、その糸がどこに繋がっているのか気になってきた。
ゆっくりと揺れる、その赤い糸の行く先を目で追う僕。
ゆらゆら……
ゆらゆら……
「魔法、使えたみたいで」
「よかったわね、ユウ」
目で追っていた先から、そんな声が聞こえてくる。
その声は……カティアだ。
魔法の練習で集中していたからか気づかなかったが……縁側に座り、僕とペンタ師匠の様子を見ていた様だ。
さっきは顔を赤くして急に部屋から出ていったりして、なんだか心配したけれど、どうやら普段のクールキャラに戻っているようで一安心だ。
そんな事を考えていると、先程まで見ていた赤い糸の先が、カティアの方に行っている事に気付く。
自分からの距離が離れると、ぼんやりして鮮明には見えなくなるみたいで、なんとなくの方向しか分からない。
それでも僕の右手の小指に結ばれてる赤い糸が、カティアの方向に向かって……ゆらゆら揺れている。
なるほど、この赤い糸はカティアと繋がっているのかな。
でも赤色って何だろう。
赤色と言えば警告とか……って、そんな訳無いし。
赤色……赤い糸……
ん?
右手の小指に結ばれた赤い糸?
それが……カティアと繋がっている!?
「ぇえぇぇ!?」
思わず変な声を上げてしまった僕。
「どうしたのよ、急に」
その赤い糸は、カティアには見えていない様で……変な声を上げた僕を訝しげに見つめる。
「ぁ、いや」
「何でもないよ……」
慌ててそう返答する僕。
それでも動揺は隠しきれない。
だって、赤い糸って……それはつまり、
運命の人!?




