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僕の胸に響く君の鼓動  作者: チームつちのこ
二章 見上げる空

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15/15

15話 師匠

「では、早速始めますかの」

 そう言ってペンタ師匠は、居間から続く縁側に出ると庭に飛び降りる。



「はい」

「ペンタ師匠」

 そう言って僕もペンタ師匠に次いで、庭へと出る。



 ペタペタ歩くペンタ師匠。


「ここなら魔法が多少暴走しても、大丈夫かの」

「準備はいいですかの?ユウ殿」

 庭の中央辺りまで来ると、振り向いて話し始める。



「……準備って」

「なにをすれば……いいのかな?」

 魔法とか魔力とか言われても、正直良く分からないので、ペンタ師匠に聞いてみる。



「そうじゃな」

「先ずは……魔力を感じる所、からかの」

 胸を張ってそう話すペンタ師匠。

 そもそもペンギンの風貌は、胸を張ってペタペタ歩く感じなので違いがよく分からないが、胸を張っているのだろう。



「魔力……」

 異世界モノや異能力作品の知識はあるものの、実際に感じろ……と言われても、よく分かっていない。


 こういう時は自然体がいいとか良く聞くけれど……。


 そう思い、目を閉じてリラックスしてみる。




 微かに感じる風……。


 頬を撫でて気持ちいい。


 なんて……自然を感じていると、なんだか不思議な感じがしてくる。



「ほぅ」

「ユウ殿は、スジがイイですのぉ」

 そうペンタ師匠の声が聞こえてくる。


 ゆっくりと目を開けると、自身の周りに色のついた風の様なものが見える。


「これが……魔力?」

 不思議な風が自分の周りを包む感じ……なんだか温かいような、そうでも無いような。


 一度認識すると不思議な事に、始めからそこに存在していていたかのような一体感を感じる。



「初めてにしては、魔力の感能力が素晴らしい」

「姫様の力に影響されて、魔力に目覚めたのも頷けますな」

 ペンタ師匠は、僕の纏う魔力を見てそう言う。

 なんだか即興で言った言い訳に、説得力が追加されたようである。



「では早速、次の段階へと進みますかの」

 ペンタ師匠はそう言って、足元の小石を咥える。


 ペタペタ


 小石を咥えたまま僕に近づき、ペンタ師匠のお腹の星マークが光ったかと思うと、咥えていた小石がほんのり光出す。


 シュン……


 瞬きしたら、見逃しそうなぐらい一瞬で小石が消える。



「ぉお……」

 まるで魔法の様な光景に、感嘆の声を上げる僕。



「これが収納魔法ですじゃ」

 咥えていた小石が無くなり、ペンタ師匠が口を開く。


「それでは手を出して下され」

 ペンタ師匠の言われるがまま、僕は手のひらを上に向けたまま右手を前に出す。



「今から、先程の小石を出しますじゃ」

「魔力の感能力を高めた状態で、ワシの出す小石を感じ取って下され」

「さすれば、収納魔法の感覚も感じ取れる筈ですじゃ」

 ほぅ、そんな感じでいいんだ。

 いわゆる身体で覚えろ……的な教え方なのかな?と、思い覚えたての魔力を使って感覚を研ぎ澄ます。 



「では、いきますぞ」

「ゆっくりいきますので、それを感じ取って下され」

 ペンタ師匠がそう言うと、僕の右手の上がほんのり光り始める。


 感覚を研ぎ澄ましているからか、ペンタ師匠が分かりやすくゆっくりしてくれているからか、魔力の流れが鮮明に感じ取れる。


 亜空間?なのかストレージなのか、そこから取り出され僕の手のひらへと移行する小石。


 シュン……


 先程ペンタ師匠が収納していた小石が、僕の手のひらに現れた。


 なんでこうなるのか、とか理屈とかは正直良く分からないが、何故か収納魔法というものを身体で理解出来た僕。



「……凄いね、これ」

 収納魔法、いわゆる異世界的な話やゲーム等で良く出てくるアイテムボックス、というやつだ。


 異世界話で出てくる能力を目の前で見せられて、感動する僕。



「これを何度か繰り返せば、感覚を掴める筈ですじゃ」

「では、もう一度……」

 ペンタ師匠が、そう言って再び小石を収納しようとした所で、



「ちょっと待って……」

「ん〜」

「こんな感じ?」

 僕は先程ペンタ師匠がしていた様に、感能力を高めながら魔法の感覚を探る。


 ポゥ……



 シュン……



 手のひらに乗っていた小石が、ほんのり光ったかと思うと、一瞬で消える。



「うぉ!」

 目の前の小石が消え、ペンタ師匠が驚きの声を上げる。


 消えた小石はというと……なんだか脳内なのか感覚なのか、ちゃんと僕の収納リストに入っている。


「これは……便利」

 こんな便利なモノを異世界のみんなは使っていたのか、そりゃあこぞって使うわけだ。

 なんて思いながら、リストを見る……というか感じる。



「一回でここまで出来るとは……」

「ユウ殿は、器用ですな」

 ペンタ師匠が僕に向かってそう言う。


 

「……」

「そんなに……器用に生きてないよ」

 器用……その言葉に僕はあまりいいイメージが無い。

 特化していない器用貧乏……的なイメージでもあるし、なにより器用に物事をこなし過ぎると、色々と仕事を押し付けられてしまう。


 それにより、他の人より負担が増えてしまい、逆に身動きが取りづらくなる。

 大学時代のバイトや、ブラック会社で頑張り過ぎてしまいそんな目に多々あった。


 本当に器用な人は……脳ある鷹は爪隠す的な、器用な動きをして上手く立ち回る。


 僕は素直すぎるのか、頑張りすぎるのか、そんなに器用に生きてこれなかった。


 だから僕は、そんなに器用じゃない。



「でも、何となくは……掴めた気がします」

「ありがとうございます、ペンタ師匠」

 僕はそう言って、手のひらに先程収納した小石を出して見せる。


 シュン……



「出し入れも、完璧ですな」

「あとは……」

「容量の感覚ですかな」

 ペンタ師匠が、僕の方を見ながら説明を続ける。




「大きいとか小さいなどと言葉で説明しても」

「こればかりは、個人差がありますからの」

「どれくらいまで入るかは、本人にしか分からないですじゃ」

 そう言いながらペンタ師匠は、収納魔法で生魚を取り出し口に咥える。


 確かに実際に亜空間を測るわけにもいかないし、容量は本人にしか分からないのか。


「……あとは」

「一回で収納出来る大きさも、個人差があるぐらいかの」

「ワシは、マグロみたいな大きな魚は収納出来ぬのでの」

 なんだろう……例えるなら袋の口の大きさ?って所かな。


 袋の口が小さければ、車とか家とか大きいものは入らない。

 

 収納する容量は袋の大きさで、一度に入れれる限界は袋の口の大きさに依存する……そんな感じなのだろう。


 袋の口が小さくても容量が大きい人も居れば、袋の口が大きくてもあまり入らない人も居る。

 そういうのが個人差なのかな。



 僕の袋の口は……どこまで入るかはまだ分からないが、小石位なら全然余裕の様だ。

 容量についても、なんか一杯入りそうな気がするが、測れないので、まだ良く分からない。


 そんな事を考えながら、確かめるように手に持った小石を何度か出し入れして見る僕。



「もう会得したようですな」

「やはり器用ですぞ、ユウ殿は」

 ペンタ師匠が、そう褒めてくれる。


 器用……か、会社とかバイトなら仕事の負担を増やされる恐れがある為、セーブするところだが。


 実家の異世界化を防ぐ為とか、ダンジョン攻略の為とか、何よりカティアの力になれるなら……出し惜しみしなくても良いかな?なんて思える。



「あと、ワシが教えることが出来るのは……基本的な魔法ぐらいですかの」

「それ以上は、魔法の専門家とかに教わるのがよろしいかと」

 ペンタ師匠がそう言うと、再びお腹の星が光り始める。


 コポコポ……



 すると、目の前にバスケットボール程度の大きさの……水?が現れた。


 ペンタ師匠が出したのだろう、その水の玉は宙に浮いたまま、ゆらゆらと波打って居る。


「これは水の魔法ですじゃ」

「ワシは、水と氷の属性への適合性が高いですから」

「どの属性に適合しているかも、個人差がありますじゃ」

「さて、ユウ殿はどんな適正ですかの」

 再びペンタ師匠のお腹の星が光ったかと思うと、宙に浮いていた水の玉が霧散する。




「僕の……適正」

 そう呟きながら、ペンタ師匠を見つめる僕。

 

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