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僕の胸に響く君の鼓動  作者: チームつちのこ
二章 見上げる空

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12/15

12話 食事番

 宝物庫ダンジョンの第一層を攻略して、再び家に戻って来た僕達。


 謎の執事ペンギンがついてきたり、カティアが昔遊んでいたお姉さんな女の子だったりと、情報過多になり頭がパンクしそうだ。


 こういう時は、体と手を動かして頭をスッキリさせるのが手っ取り早い。



「晩御飯は……どうしようかな」

 僕はそう思い、日が落ちていく空を見ながら夕食のメニューをどうしようかと思いを馳せる。


 カティアは腹ペコお姉さんだ、第一層攻略で一杯動いたのでお腹が空いているだろう。


 そんな事を考えていると……



 ペタペタ


 ペタペタ


 ペンギンが寄って来る。


 いや、竜の執事だったか?

 その竜の執事、ペンギンのペンタが口を開く。

「ここはワシに任せなされ」

 なんだかカティアに馴れ馴れしい僕に、ライバル心を出したのか、ペンギンなのにキメ顔でそう言う。



「ほぅ……」

 ご飯を作ってくれるのかな?

 ペンギンの作る料理というのにも興味が湧いた僕は、ペンタに任せてみることにした。





「さぁ、遠慮なく食べてくだされ!」

 場所は居間。

 調理時間……約6秒。


 全調理工程を見ていたが、


 1.皿を置く✕三つ。(1秒✕3)


 2.その上に食べ物を置く✕三つ。(1秒✕3)


 3.完成!



「ペンタは優秀な執事だけど」

「食事番だけは、させちゃダメなのよ……」

 目の前の料理?を見ながら頭を抱えるカティア。

 


「確かに……」

 目の前の料理?を見ながら、僕もカティアに同意する。


「なんでですじゃ!栄養たっぷりですぞ」

 ペンタは、僕とカティアに向かって叫ぶ。



「だってこれ……」

「ただの生魚じゃない!」

 カティアが皿に盛られた料理?を指差しながら叫ぶ。


 そう、目の前にあるのは皿に盛られた生魚一匹。

 一人一匹一皿で、計三人三匹三皿。


 この魚は……小振りのアジ?



「ペンギンだから……ごちそうって事、なのかな」

 生魚一匹丸呑みは、ペンギンにとってごちそう……それは間違いない。


「ペンタに食事番させると、いつもこうなるから」

「ペンタは食事番禁止!!」

 クールなはずのカティアが、珍しく怒ってそう叫ぶ。


 まぁこの腹ペコな状況、ご飯の事に関して熱が入るのも無理は無い気がする。


 そんなカティア見て、ぇ〜美味しいのに……って顔をしながら落ち込むペンタ。

 いや、ペンギンの表情は読み取れないけれど、そんな気がした。




「そう言えば……」

「こんな新鮮な魚、どこから出したの?」

「……まさか口から?」

 ふと鮮度の良いこの魚の出所が気になった僕が、ペンギンであるペンタに問いかける。


 ペタペタと歩きながら側に来たペンタが、それに答える。


「収納魔法じゃ」

「流石のワシも、飲み込んだモノは姫様に出せぬからの」

 気を使ってるのか使ってないのかよくわからない判断基準だが、飲み込んだモノで無いことを聞いて安心する。



「……当たり前でしょ」

「反芻した魚なんか出した日には」

「……死刑よ」

 目の前のお皿に盛られた生魚を見ながら、カティアがそう呟く。



「……うへぇ」

 カティアのその言葉を聞き、僕は気を引き締める。


 生魚を丸のままな晩御飯は、流石に僕でも無理なので……

「ぇと……」

「これを使ってご飯、作ってくるよ」

 僕はそう言って皿に盛られた生魚を回収する。



「ぉお」

 期待の眼差しで見つめてくるカティア。


 そんなカティアの期待に応えるためにも、美味しい晩御飯を作らないとね。


 そう思いながらカティアの頭を見る、ツノが生えている、まあ当然か。

 だけど、昔遊んでいたお姉さんカティアは、ツノが無かった記憶がある。


 そう言えば収納魔法とか言っていたし、巨大ハンマーもどこからか出し入れしていたみたいだったから、ツノと尻尾も出し入れ出来るのかもしれない。


 異世界では割とお馴染みの収納魔法、なんて便利なのだろう。


 などと考えながらキッチンへと向かう。



「……さてと」

 気合いを入れ直した僕は先ず、先程のアジを手に取り捌き始める。

 大学時代に色々なバイトをしていたので、手慣れた手つきで魚を捌く。


 最初の三匹に加え、ペンタから追加で貰った魚を捌き終えると、小麦粉と溶き卵、パン粉を準備する。


 そう、今から作るのはアジを使ったフライ。


 アジフライだ。



 魚を捌いた後の調理器具を洗い終え、油を準備して油の温度が上がるまでの時間を利用し、キャベツの千切りを準備する。


 このキャベツはご近所さんから頂いたものだ、ありがとうございますご近所さん。


 油の温度が上がった所で、メイン食材の作業に入る。


 アジの切り身に小麦粉、溶き卵、パン粉の順番で衣を付けて油の中へ投入する。



 ジューッ……ジュアァァァ……


 心地よい油の弾ける音が響き渡る。



 やがてその音が軽くなっていき、乾いた音へと変化する。


 パチパチ……パチパチ……


 衣の状態を見極め、絶妙なタイミングで上げる。


 衣はカリッと揚がり、香ばしい香りが立ち込める。



 それを繰り返し、捌いたアジは全て綺麗なアジフライへとなっていった。



 キャベツを盛り付けた皿にアジフライを乗せ、あらかじめ準備しておいたご飯と、味噌汁を添えて……



「よし、完成」

 そう言った辺りで、背後に視線を感じる。


 うん、カティアだ。


 食欲を唆る油の弾ける音と、香ばしい香りに誘われて、覗き込んでいたのだ。

「じゅる……」

 




 ちょっと前まで皿に生魚が盛られていた食卓が、一変していた。

 「さあ、召し上がれ」

 テーブルに並べられたアジフライ定食を皆に勧める僕。


「……おいしそう」

 グーペコなカティアがヨダレを垂らしながら、そう呟く。


「生魚を、熱した油に通した?のかの?」

 ペンギンのペンタは、物珍しそうにアジフライを眺める。



「では」

「「いただきます」」

 僕達はそう言って、アジフライに箸を伸ばす。



 サクッ……


 はふはふ……



「……ぅ」

「ぅまぁあ〜……」

 ほっぺたが落ちそうな程、顔をとろけさせるカティア。

 クールキャラが台無しだけど、とても幸せそうで何よりだ。



 ガツガツ……



 ガブガブ……


「なんじゃコレは!?」

「ウマイぞ、ウマイぞぉ」

 ペンギンに揚げ物って大丈夫かな?なんて思ったが、自称竜族だし、大丈夫でしょう。



「あ、コレかけ忘れてた」

「みんなもどうぞ」

 僕はそう言って、ソースを差し出す。


 アジフライにかけるものと言えば、ソースやらタルタルやら醤油やら、戦争になりそうなぐらい種類はあるが……ここはソースで行く。


 アジフライと共に、キャベツにも一緒にソースを回しかける。



 サクッ……


 はふはふ……



「……ぅ」

「ぅまぁあ〜(再)」

 ソースをかけることで何倍にも美味しくなる。


 ソースの染み込んだキャベツも絶品で、アジフライとのマリアージュが素晴らしい。


 カティアもペンタも、そして僕もアジフライ定食を満喫した。


「「ごちそうさま」」

 そう言った後、食べ終えた食器を片付けていると……



「ここはワシに任せてもらおう」

 さっきも聞いたような台詞を言い、ペンタが動き出す。



「……」

「大丈夫、なのかな?」

 先程の生魚の件で、ペンタを少々警戒する僕。



「大丈夫よ」

「食事番以外は割と優秀だから、ペンタは」

 カティアが僕にそう言う。

 ペンタが食事番をしようとしていた時とは違い、安心して任せている感じが見て取れる。

 そうなんだ……とペンタの動きを観察すると、器用にお皿を頭の上に載せて運び始める。


「ほほぅ……」

 頭の上にお皿を載せて歩く様が、ちょっぴり可愛らしい。


 そんなペンタの様子を見ていると、その後も上手に食器を洗い、片付けまでやってくれる。


 素晴らしい。


 流石執事ペンギン……いや竜族だったか。


 

 僕はペンタに片付けを任せ、居間に戻って見ると……



「スゥ……」


「スゥ……」



 ツノと尻尾を生やした銀色長髪の女の子が、気持ちよさそうに寝ている。


 お腹一杯になって眠くなったのだろう。

 それに今日は、なんだかんだ情報量の多い一日だった。



 頭も心も疲れているんだな、と思う僕。

 そんなカティアに毛布をかけながら、僕は呟く。

「今日はお疲れ様」

「ありがとう」


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