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「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第五章

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第11話 共・鳴・覚・醒

『エマージェンシー・シフト、発動!』


 口が動く。声は出ない。

 しかしデッキから飛び出した一枚のカードを、悠真の手が叩きつけるような勢いで展開した瞬間、金色の魔法陣が三重に広がり、魔力が一気に空間を満たした。


 シャルルの身体がふわりと浮き、後方へと瞬時に退避する。

 長く細い耳が伏せられたまま、翠色の瞳が悠真を見つめていた。

 それと同時に彼は、次のカードを引き抜く。


『即時魔術、トリプル・サモン・ウェーブを発動! ビキニメイド・アクアリア、ビキニメイド・セイレーン、ビキニメイド・ライラ──三体同時召喚!』


 口だけが動く。魔力がその意志を形にした。

 光を纏う三体の女性が、悠真の前に並び立つ。


 アクアリアは長槍を構え、蒼の鱗を身に纏っている。

 長い銀髪が水のように揺れ、その瞳には鋭い戦意が宿っていた。


 セイレーンは巨大な弓を背負い、翡翠色の髪を編み込んだまま、軽く地を蹴り空中へ舞い上がる。

 その動きは水面を滑るように滑らかだった。


 ライラは短剣を逆手に持ち、黒髪のショートカットが、闘志を映すように輝いている。

 小柄な体格だが、その瞳に映る闘気は三体の中でも最も鋭い。


 悠真が手振りで合図する。

 三体は即座に主の意図を汲み取り、同時にシュルノームへと突撃した。


 アクアリアの槍が、シュルノームの前方触腕を受け止める。

 蒼の魔力が弾け、衝撃が地を揺らした。


 セイレーンが、その上から矢を放つ。

 水の流れを纏う矢が、空洞だらけの顔面へと直撃し、黒い霧が散った。


 その隙をライラが突き、腹部の節の隙間に短剣を突き立てる。

 硬質な感触が伝わり、刃が内部へと滑り込んだ。


 魔物が口を大きく開く。

 咆哮しているはずだが、音は存在しない。


 ただその動作から、激しい苦悶が伝わる。

 悠真は更なるカードを引き抜いた。


「魔術カード、フォーメーション・デルタ・クロスを展開!」


 三体のビキニメイドが同時に回り込み、シュルノームを中心にした包囲陣形を形成する。

 水の渦が空間に現れ、魔物の動きを制限し始めた。


 ホウキが包囲の外側から太刀で援護の一閃を加え、アウラが銃を構えて弾を放ち続ける。

 シュンリンは龍化した腕で触腕を掴み、強引に引き剥がした。


 アイリスの幻影が撹乱し、敵の注意を分散させる。

 白熱した連携が、無音の空間で展開されてゆく。


 だが──その瞬間だった。

 魔物が更なる変異を遂げる。


 背中から無数の骨のような触腕を新たに伸ばし、鞭のように振り回し始めた。

 魔力を帯びた触腕が、アクアリアの槍を砕き、セイレーンを吹き飛ばし、ライラを壁際まで弾き飛ばす。


 三体のビキニメイドが同時に消滅した。

 悠真は即座に、次のカードを構える。

 前髪が汗で額に張り付き、茶色の瞳が鋭く輝いていた。


『ここで倒れるわけには──いかねぇんだよ……!』


 口が動く。声は出ない。

 しかしその表情から、誰よりも強い意志がにじみ出ていた。


『共鳴覚醒・マスターリンク──ビキニメイド・グランフェリシア、召喚!』


 カードを胸元に押し当て、悠真は全魔力を込める。

 通常の召喚ではない。刹那、光が爆発した。


 天井が震え、地に張り巡らされた魔法陣が、一斉に輝きを放つ。

 そこに顕現したのは、一人の女戦士。

 全ビキニメイドを統べるリーダー格。


 グランフェリシアは金と蒼を基調とした装甲を纏い、腰まで流れる深紅の髪と黄金色に輝く瞳が、無音の空間に圧倒的な存在感を放っていた。


 彼女が一歩、シュルノームへと近づく。

 その歩みとともに、地が割れ、空間そのものが震えるような錯覚を覚える。


 無音であるはずの空間に、確かな”圧”が存在した。

 悠真が指を一本立てる。


 それだけで、グランフェリシアは剣を抜き、空間を一閃した。

 刹那、シュルノームの触腕が数本、地面へと崩れ落ちる。


 だが決着には至らない。

 シュルノームは依然として咆哮し、残りの触腕を振り上げる。


 その空洞だらけの顔面が、悠真だけを捉えていた。

 戦いは、まだ終わらない。


 グランフェリシアの一閃が、触腕を数本切断した直後、シュルノームが変異を遂げた。

 背中から新たな触腕が無数に伸び、今まで以上の密度で空間を埋め尽くしていく。


 悠真が手振りで全員に、後退を指示した瞬間、シュンリンが前に出た。

 燃えるような赤いツインテールが静かに揺れ、赤金色の大きな瞳がシュルノームを真っ直ぐに見据えている。


『下がってな、悠真』


 口だけが動いた。声は出ない。

 しかしその口の動きは、全員に確かに届いた。


 次の瞬間、シュンリンの全身から深紅の光が溢れ出す。

 それは完全なる龍化の始まりを告げていた。


 まず額の両側の龍角が伸び、鮮やかな赤へと変色していく。

 続いて両腕に赤黒い鱗が浮かび上がり、硬質な爪がさらに鋭く伸びた。


 背中の肩甲骨が盛り上がり、翼の骨格が皮膚を割って広がっていく。

 変身の余波が武道服を、各所から裂いていった。


 肩口が破れ、腹部の布地が裂け、引き締められた肌に赤い魔力の紋様が浮かび上がる。

 鱗に覆われた腕と、滑らかな人肌が混在する姿は、神秘と野性が入り混じった異質な美しさを持っていた。


 龍化第二段階。翼の骨格が大きく広がる。

 無音の世界でも配信端末の光は点滅し続けていた。


『シュンリンさん変身してる!?』

『これ龍化じゃん! 初めて見た!』

『武道服が……』

『無音の世界で戦うの怖すぎる』

『視聴者数また跳ね上がった』


 視聴者コメントが流れる。


『下がってな、悠真。ここからは、あたしの狩りだ』


 口が動く。声は出ない。しかしその表情が、確かにそう告げていた。

 次の瞬間、地が爆ぜる。


 龍化した脚で地を蹴るシュンリンの身体が、爆風と共に宙を舞いシュルノームへと肉薄する。

 触腕が迫りゆく。


 シュンリンは翼の骨格を広げてそれを弾き、鋭く伸びた爪でシュルノームの表層を引き裂いた。

 黒い霧が散り、無音の空間に視覚的な衝撃波だけが広がる。


 続けて、シュンリンは口を大きく開いた。

 紅蓮の炎が一直線に射出され、シュルノームの胴体を焼き貫く。

 鱗が焦げ、触腕が溶け、黒い霧が爆発的に散した。


『口から炎!?』

『龍の息吹じゃん……本物の龍人だ』

『シュルノームが押されてる!』


 コメント欄には白熱した言葉が投下されてゆく。

 シュルノームが激しく動揺する。


 これまでの攻撃とは次元が違う。

 シュンリンは着地と同時に尾を薙ぎ払い、触腕の密集した部分を根元から叩き折る。


 続けて両翼を大きく広げ、全身に魔力を集中させた。

 龍化第三段階。額の中央に三本目の角が浮かび上がる。

 全身の鱗が深紅に輝き、空間の温度が明らかに上昇した。


『三段変身!?』

『だいぶ前に使用時間は五分って言ってたよな……急いで!』

『シュンリンさんかっこよすぎる』


 多くのコメントが彼女に驚愕し、応援するものが多い。

 悠真は歯を食いしばりながら、手振りで残りの仲間に指示を出す。


 ホウキが左から太刀で牽制し、アウラが銃で弱点を狙い、アイリスの幻影が注意を分散させる。

 シャルルが長杖に残る魔力を集め、援護の光弾を放つ。


 全員の連携が、シュンリンの最後の一撃の為の布石となっていく。

 彼女は両脚を地に踏み込み、両翼を限界まで広げた。

 全身の紋様が最大限に輝き、熱が空間を歪める。


『終わりだ』


 口が動く。次の瞬間、広場全体が爆ぜた。

 紅蓮の爆発が、シュルノームの全身を覆い尽くす。


 音のない世界に、灼熱の光だけが広がる。

 触腕が、空洞の顔面が、巨大な体躯が、炎の中に溶けていく。


 やがて光が収まった。

 赤い残光の中心に、龍化を解きかけた少女が立つ。


 鱗が徐々に剥がれ落ち、滑らかな肌が露わになっていく。

 翼の骨格が消え、角が縮む。


 燃えるような赤いツインテールだけが、彼女がシュンリンであることの証として揺れていた。

 肩で息をし、裂けた武道服のまま、ゆっくりと彼女は膝をついた。


『シュルノーム討伐!』

『やったああああ!』

『シュンリンさん神すぎる』

『悠真くん早く行ってあげて』

『今日の配信伝説すぎる』


 コメント欄が一斉に沸き立つ。

 悠真は即座に駆け寄った。


 手振りで『大丈夫か』と問いかける。

 シュンリンは片手で悠真の外套を掴み、赤金色の大きな瞳で見上げた。


『なぁ、悠真。あたし、カッコよかった?』


 口が動く。疲れ果てた表情の中に、満足げな笑みが宿っていた。

 悠真は迷わず頷く。


『完璧だった』


 口が動いた。その言葉に、シュンリンは安心したように目を閉じる。

 無音の世界に、静寂だけが残された。

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