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「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第五章

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第8話 覚醒、軍属少女

「一人、夢の中へ誘った。次は……誰を招こうか」


 その声は依然として穏やかで知的で、そしてどこまでも冷徹だった。

 だが次の瞬間、アウラの身体が跳ねるように動いた。


「ぐ、ああああああああッッ!」


 耳をつんざくような悲鳴。それは獣の咆哮にも似ていた。

 それと同時に、彼女の銃が火を噴く。


 乾いた銃声が石造りの空間を反響し、弾丸が近くの柱を破壊した。

 銀灰色の長髪が乱れ、猫耳が限界まで逆立つ。

 そして彼女が暴走すると同時に、白い仮面の者は場から姿を消した。


「シャルル! 今のって……」

「幻覚魔法だよ!」


 ホウキの声に、シャルルが直ぐに反応した。

 長杖を地面に突き立て、長く細い耳が逆立つ。


「……多分、心の闇を見せられてる。アウラの中の、最も深い恐怖や痛みが、今この瞬間、現実と区別できない形で再生されてるはずだよ……!」


 翠色の彼女の瞳が、緊張に揺れていた。

 既にアウラは仲間を認識できていない。

 

 顔は苦悶に歪み、銃を乱射しながら、その場をのたうち回っていた。

 息は荒く、猫耳が伏せられたまま固まり、青灰色の瞳は涙で濡れている。


「退避ですわ! 今の彼女は正気じゃない!」


 アイリスが叫び、レイピアを構えながら悠真の前へ出た。

 金色の狐耳が逆立ち、蒼い瞳が緊張に細まる。


「ちょ、待てって! アウラだぞ!? 落ち着け!」

「悠真! 今のアウラは幻覚の中にいる! 下手に近づいたら──!」


 その瞬間、アウラの青灰色の瞳が悠真を捉えた。

 次の刹那、銃口が一直線に向けられる。


「――ッ!」


 彼は咄嗟にデッキケースからカードを引き抜いた。


「ビキニメイド・パラディン・レイラ、防御体勢で召喚!」


 青白い光の中から白銀の装備を纏う乙女が現れ、悠真の前に立ち塞がり防御障壁を展開する。

 弾丸が正面から衝突し、衝撃波が空気を歪ませた。

 バリアが弾丸を散らしたが、直後にアウラは跳躍し、突進を仕掛ける。


「おいおい……やるなら徹底的にかよ……!」


 彼はレイラの召喚を解除し、自ら前に出た。

 仲間たちの制止も聞かず、真っ直ぐ彼女へと歩みを進める。

 その間にも、何度も撃たれた。腹部、肩口、脚。避けきれず、数発が直撃する。


「う、あ……ぐッ……!」


 痛みが走る。意識が霞む。

 それでも歩みを止めない。仲間たちの悲鳴が背後から飛ぶ。だが振り向かない。


「おい……アウラ……聞こえてんだろ……」


 青灰色の彼女の瞳は、まだ虚ろだ。

 何かを、誰かを、追い続けている。


 心のどこかに、逃れようのない闇。

 そして悠真は、その腕を掴んだ。

 ──その瞬間、激しい蹴りが腹部に突き刺さる。


「ぐ、あ……!」


 膝をつく。だが離さない。

 そのまま彼女の両肩を力強く掴み、顔を真正面から向けた。


「アウラ!」


 ……一瞬、猫耳が動いた。


「お前のことは、俺が信じる!」


 その言葉に、アウラの瞳がわずかに揺れる。呼吸が乱れ、頬が濡れ、指先が震えた。


「どんな幻覚を見てるか知らねぇ。でも、お前が苦しんでるのは分かる。助けたい。お前は俺の仲間なんだよ!」


 しばらくの沈黙の後、アウラの膝が崩れ落ちる。

 銃が手から滑り落ち、転がる金属音が空間に響く。


「ゆ、ま……?」


 ようやく彼女の声が届いた。

 青灰色の瞳から、滝のように涙が流れている。

 ゆっくりと猫耳が持ち上がった。


「よかった……戻ってきたか……」

「……こわかった……悠真……みんなが……みんなが死ぬところが……見えて……止まらなかった……!」


 嗚咽混じりの声に、悠真は静かに手を置く。

 その身は未だ震えていたが、暴走は止まった。


「馬鹿野郎……幻覚ごときでお前が壊れるかよ……」

「……わたしは……また迷惑を……」

「今さらだろ。もう俺たちは、そういう関係だ」


 そのとき、仲間たちが駆け寄る。


「アウラちゃん……っ、よかった、本当によかった……!」


 泣きそうな顔でシャルルが彼女に駆け寄り、長く細い耳を伏せながら手を握った。


「アウラ……怖かったわね。もう大丈夫ですわ」


 もう片方の手を、アイリスが包み込む。

 金色の狐耳が伏せられ、蒼い瞳が涙で滲んでいた。


「……無事でよかった。本当に」


 ホウキの静かな声に、アウラが目を向ける。

 切れ長の黒い瞳が、珍しく感情を剥き出しにして揺れていた。


「アタシも……心配した。バカ野郎」


 燃えるような赤いツインテールを揺らしながら、シュンリンが赤金色の瞳を潤ませて顔を逸らす。


「悠真様……。貴方も本当に無茶ばかりして……」

「ま、仲間だしな」


 そして悠真の身体は、限界を迎えたように、その場に崩れ落ちる。

 仲間たちの声が闇の中に遠ざかっていく中──彼は微かに笑った。


『クソかっけぇ……』

『泣いた』

『アウラを守った悠真、マジで男』

『悠真くんがんばれ!』

『これは伝説回だろ……!』


 視聴者コメントが流れ続けている。

 それから数秒の沈黙の後、アウラは全身を震わせながら顔を上げた。


 銀灰色の長髪がぶわりと舞い、額に貼りついた汗を振り払うように揺れる。

 猫耳が持ち上がり、青灰色の瞳に、静かな怒りの炎が灯っていく。


「……よくも私に、こんな低俗な魔法をかけてくれたな」


 彼女の肩がびくりと震えたかと思うと、顔を紅潮させ奥歯を噛み締めた。


「許さない……絶対に、仕留める」


 その声が響き渡った瞬間、アウラの体表に一陣の光が走る。

 怒りそのものが触媒となったかのように、魔素が爆発的に解放され、床石を中心に円状のクラックが広がっていった。


 だがその時、白い仮面の存在が再び姿を現した。

 先程の余裕ある佇まいはそのままに、黒い装束を翻しながら空間の中心へと浮かび上がる。

 銀糸のような髪が静かに揺れ、仮面の裂け目が緩やかに開いた。


「……素晴らしい。恐怖を乗り越えた者の魔力は、実に美しい」


 その声は依然として知的で、穏やかで、そしてどこか愉しげである。


「だが──乗り越えたからといって、勝てるとは限らぬよ、旅人たちよ」

「黙れ……っ!」


 低くアウラが吼えた。猫耳が限界まで逆立ち、青灰色の瞳が深く燃えている。


「アウラ、これを使え!」


 悠真は咄嗟にデッキケースから、一枚のカードを引き抜いた。


「装具魔術──ビキニメイド・オーバーフォース!」


 カードが彼女へと飛んでいく。

 アウラの掌に触れた瞬間、強い光が放たれ、眩いエネルギーの波動が全身を包み込んだ。


「……なるほど。これが、お前の力か」


 アウラの口元に、うっすらと笑みが浮かぶ。

 帝国軍の制服が、装具魔法の効果により、光の鎧へと変化していく。


 胸部には輝く紋章、背には魔力の結晶体が浮かび上がった。

 猫耳が凛と立ち直り、銃に魔力が集束していく。


「……悠真。あとは任せろ」


 彼女が銃を構えた瞬間、空間そのものが歪んだ。

 魔眼が発動し、瞳が赤い魔法陣の紋様へと変質する。

 七発の魔弾が弾倉に自動装填された。


「私の全てを込めて、必ず仕留める」

「……興味深い。では、受けてみよう」


 仮面の存在が両手を広げた。その余裕が、しかし次の瞬間に崩れる。


「──デッドアイ・シュート!」


 アウラが引き金を引いた。

 数発の魔弾が一点に収束し、光の奔流となって知性体へと殺到する。


「っ、伏せろ!」


 悠真が叫ぶ。次の瞬間、猛烈な衝撃が目前に迫る。

 咄嗟にシャルルが悠真へしがみつき、二人は床に身を投げ出した。


 ホウキが太刀を地面に突き立て、風圧に耐える。

 アイリスが幻影で衝撃を分散させ、シュンリンが龍化した腕で仲間を庇った。


 爆風が全域を襲い、壁面が削られ、柱が砕け、天井に亀裂が走る。

 だがその中で、アウラだけは動じず、光の中心に堂々と立ち尽くしていた。

 やがて、爆光が収まった。


「……消えた。跡形もなく」


 床に伏せていた悠真が、シャルルを支えながら起き上がる。

 長く細い耳が伏せられたシャルルが、翠色の瞳で呆然と中心を見つめていた。


 辺りは破壊の跡が広がり、ただアウラだけが、その中心に毅然と立つ。

 青灰色の瞳には静かな炎の残滓が揺れている。


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