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「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第五章

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第2話 追い詰められる、彼

「……どうして、こんなことに……っ」


 シャルルの細く震える声が、灼熱の岩壁に反響した。

 淡い金色に近い銀髪は汗と灰にまみれ、長く細い耳がへなへなと伏せられている。


「お願い……お願いだよ、悠真くん……。キミが目を覚ましてくれないと……僕……!」


 翠色の瞳には涙が溢れ、頬を流れる雫は熱く、深い悲しみと怒りに震えていた。

 普段の穏やかな笑みは消え、今はただひとりの少女として、悠真の傍に膝をついている。


「……っ、立て……立てますわ……!」


 岩壁に背を預けていた、アイリスが震える手でレイピアを、杖代わりに石畳へと突き立てた。

 蒼い瞳が朦朧としている。


 金色の狐耳は伏せられ、尻尾の毛が熱波で幾筋も裂けていた。

 白い肌が紅潮し、汗が顎から滴り落ちる。

 膝が笑い、立ち上がろうとするたびに、体が傾いた。


「アイリス、動くな! まだ熱にやられてる──」

「黙りなさいな……っ」


 仲間の言葉をアイリスが遮る。

 蒼い瞳が、朦朧としながらも確かな光を宿して、悠真を見据えた。


「悠真が……倒れているのに……わたくしだけが……座っていられますものですか……っ!」


 レイピアを支えに、一歩。また一歩。

 金色の狐耳が僅かに持ち上がった。


 尻尾が、力なく、しかし確かに揺れている。

 全身が熱波にやられたまま、それでもアイリス・シルヴェスターは立つ。


「シルヴェスター家の者が……ここで……倒れるわけには……いきませんの……っ!」


 震える声で言い放ち、彼女はレイピアを魔物の群れへと向けた。


「戦術再構築……っ。防御展開ラインを広げなさい。シャルル、アウラ……右から回り込む奴らを……止めて……っ」


 アイリスの声は震えていた。膝も震えている。

 だが、瞳だけは──揺れていなかった。


 アウラの軍靴が焼け石を打ち鳴らす音が、戦場の緊張を更に高める。

 猫耳を逆立てたまま銃を構え、押し寄せる魔物たちを牽制していた。


「……悠真くんが……みんなを守るために戦って、傷ついたのに……」


 シャルルの唇から、声が零れた。

 手には空になった魔力回復用のポーションの瓶が握られている。

 エルフとして持つ魔力は、既に枯渇していたはずだった。


「だったら、僕も……僕の力で……みんなを……っ!」


 長杖に淡い光が灯る。

 杖先から走る光は空間に紋章を描き、その幾何学模様が仲間たちを、包み込むように広がっていく。

 淡く、しかし確かな守護の膜が、仲間全員を覆う。


「……これは……シャルルの魔法……なのか?」


 アウラが呟いた。戦闘の中でも冷静な声に震えが混じる。

 猫耳がゆっくりと前方へ向く。


「こんな温かい魔力……初めてだ……」


 ホウキの声が震える。


「シャルル……貴女……」


 金色の狐耳が揺れ、アイリスの蒼い瞳の目尻に涙が滲む。


「ああ、なんて眩しいんだ……。まるで母親に抱きしめられているみたいだ……」


 硬質な爪の拳を握り締めながら、シュンリンが呟いた。

 燃えるような赤いツインテールが揺れ、龍化の鱗が張り詰めた肩に、何かが溢れるように揺れていた。

 シャルルは悠真の手を両手で包み込むように握り締める。


「悠真くん……キミがいてくれたから……みんなはここまで来られたんだよ……。誰一人欠けても、ここには辿り着けなかったのに……! お願い……もう一度……みんなの所に……戻ってきて……っ!」


 彼女の声が灼熱の岩壁に染み込むように響く。

 その瞬間――だった。

 悠真の指が、わずかに動く。


「……ん、ああ……なに、泣いてんだよ……俺は……まだ死んでねえっての……」


 その声は、震えながらも確かに、そこにあった。


「悠真くん!」


 シャルルが叫ぶと、仲間たちは一斉に、その名を呼び合う。

 彼の目蓋がゆっくりと開き、茶色の瞳が仲間たちを映し出す。


「……みんな……生きてる、よな……」


 ゆっくりと悠真は身体を起こす。傷は完全に癒えてはいない。

 しかし、前髪の奥の茶色の瞳に宿った光は、かつて見たどんなものよりも力強かった。


「ったく……俺が寝てる間に、泣きながら告白するんじゃねえよ……恥ずかしいだろ……」


 彼は苦笑し、漆黒の外套の内側から、デッキケースを引き抜いた。


「簡易領域能力──クイック・デュエル・フィールド!」


 魔物にやられた事で、一度解除された領域を、再び構築するべく悠真は宣言を行う。

 そして彼の足元に魔法陣が炸裂するように展開され、青白い光が灼熱の赤を押しのけるように広がる。


「行くぞ、お前ら! こっからは、俺たちがぶっ潰す!」


 デッキケースから、一枚のカードが射出された。


「ビキニメイド・パラディン・レイラ、召喚!」


 白銀の光が迸り、純白のビキニアーマーを纏い、聖なる剣を携えた女性が、悠真の前に降り立つ。

 灼熱の空間の中で、その白い光だけが鮮やかに輝いている。


「悠真……!」

「やっと目を覚まされましたか!」

「遅えんだよ、目覚めるのが……!」


 仲間たちの叫びが重なった。

 戦場に再び、光が満ちる。

 そして灼熱の回廊の中で──再び逆襲の戦いが始まった。


 炎王の回廊の深部。

 灼熱の空気が肺を焼き、視界が熱波で歪む中、悠真たちと魔物の激闘が繰り広げられる。


「ビキニメイド・パラディン・レイラ! 攻撃!」


 神々しい輝きを纏う聖剣が閃き、先頭の魔物を薙ぎ払う。

 だが魔物たちは怯まない。仲間が倒れた瞬間、残りが一斉に散開した。

 群れとしての統率が取れている。


「左から回り込んでいる!」


 アウラが叫び、デッドアイ・シュートの魔眼を発動させた。

 三発の魔弾が正確に魔物の頭部を貫いたが、それでもまだ魔物は多く居る。


「即時魔術――! 機雷輪!」


 一枚の魔術カードを使用すると、複数の機雷が輪のように出現した。

 それらは複数の魔物を取り囲むと、一斉に爆発を起こす。


 そして二体の魔物を吹き飛ばす事に成功。

 だがその瞬間、指揮系統を持つ個体が動く。


「──っ”!」


 悠真が察知した時には既に遅かった。

 指揮個体の四肢から放たれた骨のような棘が、彼の腹部に深々と突き刺さる。

 体が数メートル弾き飛ばされ、焼け石の床に叩きつけられた。


「悠真くんっ!」


 シャルルが叫ぶ。長く細い耳が限界まで逆立ち、翠色の瞳が恐怖に揺れていた。


「ああ、くそ……また腹かよ……。勘弁してくれ……っ!」


 歯を食いしばりながら、悠真は立ち上がろうとする。

 だが腹部の傷が深い。視界から色が抜け始めた。


 そしてホウキが颯爽と間に入り、桜花千凜で残りの魔物を斬り伏せる。

 アイリスが幻影の反逆で指揮個体の動きを封じ、シュンリンの龍化した拳が最後の一体を粉砕する。


 そして──静寂が戻った。

 全員が肩で息をし、汗と煤にまみれた衣服は、すでに戦闘前の姿を留めていない。


「──やっと……終わったか」


 息を吐きながら悠真は腰を落とす。

 漆黒の外套の内側に手を当てると、赤く染まる指先が戻ってきた。


 デッキケースは無傷だったが、収納されたカード数枚は熱で軽く湾曲している。

 その場に膝をつきアイリスは、レイピアを支えにしながら震えていた。


 金色の狐耳が伏せられ、腰まで届く金髪が乱れて肩に掛かる。

 蒼い瞳が疲労に滲んでいた。


「まったく……なんという消耗戦ですの……。悠真、貴方……本当に馬鹿な男ですわ……でも……ありがとう」


 彼女の声は震えつつも誇り高く、涙をこらえるような響きがある。

 金色の狐耳が僅かに持ち上がった。


「言葉を選んで貰えると助かるんだけどな。まあ……褒められたってことで受け取っておく」


 腹部を押さえながら、悠真は少し自嘲気味に笑う。


「まだ生きてんな……ったく、心配させんなよ」


 燃えるような赤いツインテールを揺らしながら、シュンリンが硬質な爪の拳で悠真の肩を軽く小突いた。赤金色の大きな瞳が、珍しく安堵の色を宿している。


「……すぐに治してあげるからね。待ってて……」


 今にも折れそうな足取りで、シャルルは悠真の傍らに膝をついた。

 魔力は既に枯渇し、杖を握る指先さえ白く震えている。


 頬を伝う汗、火花に焼かれた髪、力なく垂れた長い耳。

 その痛々しい姿に、仲間たちが迷うことなく駆け寄る。

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