表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
77/114

第32話 仲間たちの必殺技!

「……まだですの?」


 彼女が呟いた瞬間、ゴーストが咆哮を上げる。

 声ではなかった。破裂するような怨嗟と怒気の塊が空間を震わせる。


 霧状の腕が三体のアイリスを包み込むように広がり、右側の幻影を一閃で霧散させた。

 彼女は即座に判断した。


「幻影を組み替えますわ──囮二体、攻撃は私のみ」


 残る一体の幻影が前面へと躍り出て、本体を庇うように立ちはだかる。

 ゴーストの意識が幻影へと向いた瞬間、彼女は低く身を沈めながら回避行動を取った。


 だが、間に合わない。反撃の瘴気の矢がアイリスの肩口を貫く。

 軽装鎧の金の装飾が音を立てて砕け、肉にまで達した魔力の針が血を滲ませた。


「っ……!」


 一歩、二歩と後退する。金色の狐耳が伏せられ、呼吸が浅くなる。

 それでも蒼い瞳は曇らず、レイピアを構え続けていた。尻尾が、痛みをこらえるように静止している。


「はっ、次は私の番だな。──デッドアイ・シュート」


 低く通る声と共に、アウラの左眼が光を帯びた。

 魔眼の発動。青灰色だった瞳孔が細まり、虹彩が赤い魔法陣のような紋様へと変質する。


 魔力が収束し、魔導狙撃銃のスライド部分に赤い紋様が浮かび上がった。

 空だった弾倉へ、蒼く輝く七つの魔弾が浮遊しながら自動で挿入されていく。


 銀灰色の長髪が静かに揺れ、彼女は吐息を整えながら引き金に指をかけた。

 頭頂部の猫耳が鋭く前方へ向く。


「第一射──急所、核を狙う」


 ほとんど銃声は響かなかった。

 魔弾は音速を超え、空気すら裂かずに闇を貫く。


 ゴーストの身体の中心部に位置する淡く発光する核──霊体の弱点へ、それは正確無比に突き刺さる。

 弾が核に触れた瞬間、小さな魔力の爆発が迸り、周囲の瘴気を吹き飛ばした。

 だが──


「核の再生が、速すぎる……!」


 舌打ちと共にアウラは、再度照準を定める。

 霊体は核の損傷を僅か数秒で修復し、こちらへ猛然と突進してきた。

 影を伸ばしながら、異形の悲鳴を上げて。


「第二射──動作拘束、関節部」


 再び引き金が引かれた。

 魔弾が霊体を構成する仮初の四肢の関節へと命中し、ゴーストの動きを一瞬鈍らせる。


 しかしその効果も短く、たちまち復元が始まった。

 銃を構えたまま彼女は後退し、崩れかけた岩柱の陰に身を潜める。

 銀灰色の長髪が宙を払うように揺れた。


「第三射──視覚妨害、眼窩」


 閃光弾のような魔弾が放たれ、ゴーストの頭部にある空洞へと突き刺さる。

 白銀の閃光が迸り、敵の視界を一時的に封じた。


 残弾、四発。

 しかし──その時だった。

 弾倉が再び光を帯びた瞬間、アウラの左眼が一瞬だけノイズが走るように明滅する。


「……っ」


 息を呑む。七発のうち一発だけは、射手の意志に従わない。

 それが悪魔の弾だ。


 射手が最も大切にする者を、問答無用で射抜く呪いの一発。

 どのタイミングで飛ぶかは、誰にも分からない。


 だから勝負は、常に即断即決でなければならない。

 彼女は僅かに照準を外した。


 その直後、霊体が放つ瘴気の一撃が、アウラの左肩を掠める。

 鋭い衝撃と共に、帝国軍の制式制服の肩口が裂け、血が迸った。

 肩の関節に直撃していたなら、即座に戦闘不能だっただろう。


「……ッ」


 痛みに顔を歪めながらも、彼女は再び銃を構え直した。

 猫耳が逆立ち、魔眼の赤い紋様が輝きを取り戻す。

 青灰色の瞳に、強い意志が宿っていた。


 そして突如、前へと躍り出たのはシュンリン。

 燃えるような赤いツインテールを振り乱し、赤金色の大きな瞳が血濡れのゴーストを真っ直ぐに見据える。


 短めの前髪の奥で、その瞳が爛々と輝いていた。

 引き締まった体躯が低く沈み、硬質な爪の指先が静かに握り締められる。


「龍よ、我に力を──」


 低く唸るような声と共に、シュンリンの体躯が変化し始めた。

 まず両腕が赤黒く染まり、鱗のような硬質な皮膚が浮かび上がる。

 爪が鋭く伸び、鉤爪のように弧を描いた。


 両脚も同様に鱗に覆われ、その足取りに重みと力強さが宿る。

 額の両側に生えていた短い龍角が、みるみる大きく、鮮やかな赤へと変色していく。

 龍化第一段階。鱗の覚醒。


「──サヴェージ・(野蛮な)デストラクション(破壊)、行くぞ」


 その宣言と共に、音速すらも置き去りにする加速が始まった。

 ゴーストとの距離は十メートル。

 

 だが視線を切り替える間もなく、シュンリンの拳が一閃し、既に敵の目前に迫っていた。

 振るわれた右拳は雷のごとき一撃であり、ゴーストの霊体を歪ませるほどの衝撃波を生む。

 同時に反対の膝が鳩尾へと突き上げられ、捩れた霊体が一瞬、霧散しかけた。


「次っ!」


 怒号と共に、追撃が始まる。

 両手の鉤爪でゴーストの上半身を掴み、地面に叩きつけた。


 飛び上がった膝が、胸骨部分へと叩き込まれた瞬間、ゴーストの輪郭が爆ぜる。

 血は出ない。だが霊的な魔力の残滓がシュンリンの腕に絡みつき、焼けるような痛みを与えた。


 それでも、彼女は止まらない。

 二分が経過した頃、シュンリンの肩甲骨の皮膚が盛り上がり、裂け目から赤い光が滲み出した。

 

 骨格が軋む音と共に、背中に翼の原型となる骨格が生え始める。

 龍化第二段階。翼の萌芽。


「まだ、終わってないっ!」


 拳、爪、肘、膝。体の全てを武器にして、シュンリンは猛撃を繰り返した。

 ゴーストが瘴気を放つたびに鱗が受け止め、翼の骨格が風圧を生み出す。


 三分半が経過した頃、額の両側の龍角がさらに大きく伸び、赤みが増した。

 皮膚の下で何かが動くような不気味な音と共に、額の中央に新たな角の芽が浮かび上がる。


 龍化第三段階。角の完全覚醒。

 全身が赤い鱗に覆われ、翼の骨格が大きく広がり、三本の角が鋭く天井を指す。


 もはやシュンリンの姿は、人というより不完全な龍のそれに近かった。

 燃えるような赤いツインテールだけが、彼女が人であることの最後の名残のように揺れている。


「限界……でも、まだ……!」


 使用時間は既に、四分半を超えていた。

 全身が悲鳴を上げている。だが赤金色の瞳は折れない。

 その時だった。


 ゴーストの内部に蓄積されたダメージが、霊体の限界を超えたのだろうか。

 シュンリンの肘打ちが胸部中央の核へと炸裂した瞬間──ゴーストの体がぐにゃりと歪み、形を保てずに崩れ始めた。


「キャァァァアアアアァァァァァァ……!」


 断末魔のような金切り声が広間を震わせた。

 音というより衝撃波に近い。鼓膜を切り裂くような振動が空間全体を支配する。


「っぐ……!」


 咄嗟に両手で耳を塞ぎ、悠真は片膝をついた。振動が脳を震わせ、目の奥にまで響く。

 片耳から血を流しシャルルは、長く細い耳を伏せながら顔を歪める。


 表情を歪めながらも猫耳を伏せ、アウラは銃を構え直していた。

 額を押さえアイリスは、金色の狐耳を伏せたまま歯を食いしばる。


 幻影の一体が音の衝撃で消滅した。

 無言で太刀を構え直しホウキは、切れ長の瞳を細めながら衝撃に耐える。


 そして──音が消えた。

 ゴーストの霊体は全て霧散し、黒い瘴気を散らして、広間に静寂が戻る。


 荒い息を吐きながらシュンリンは、膝をつき鱗を収めていく。

 翼の骨格が消え、角が縮む。


 燃えるような赤いツインテールが力なく垂れ、ゆっくりと赤金色の瞳が普段の色を取り戻した。


 そして地に膝をついた悠真は、濡れたような吐息を漏らす。

 空間が静寂を取り戻していく中、仲間たちもまた己の呼吸を整えていた。

 だが、静かであるほどに、先程までの異様な戦いの余韻が、皮膚に焼き付くように残り続ける。

最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます。

宜しければ評価とブックマーク登録をお願い致します。

活動の励みとなり更新が維持出来ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ