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「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第四章

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第28話 テイマーでも召喚士でも、ありません。

「一人で何ができる……! オレは棟梁様だぞッ!」

「……なぁ、みんな。ちょっとだけ、見ててくれ」


 悠真が仲間たちの方へ視線を投げる。

 五人は一様に頷き、すでに武器を納めたまま、壁際から戦況を見守っていた。


 「存分に。お身体には、お気をつけて」


 ホウキが静かに一礼する。


「ふふ、楽しみにしてるよ」

 

 長く細い耳を揺らし、シャルルが微笑む。


「派手にやってくださいな」


  金色の狐耳を立てながら、アイリスが蒼い瞳を細めた。


「確実にやれ」


 アウラが短く告げる。猫耳が前方へ向いていた。


「あ~、アタシも混ざりたい……」


 名残惜しそうに呟きながら、シュンリンは赤金色の瞳で棟梁を見つめている。


「くそっ! ……お前だけは……確実に殺す!」


 棟梁の声は、もはや諦念ではなかった。

 死を覚悟した男特有の、凍りついた決意に満ちている。


 脂ぎった顔面に血がこびりつき、膨らんだ腹が荒い呼吸で上下していた。

 それでもその目だけは、獣のような光を失っていない。


 対峙する悠真は、漆黒の外套の前を静かに整えながら、一歩前に進んだ。

 寝癖混じりの前髪が目元にかかり、その奥の茶色の瞳が棟梁を静かに捉えている。


 怒りでも憎しみでもない。ただ、冷めきった確信だけが、そこにある。

 彼の右手には、一枚の古びたコインがあった。

 その手元を見て、棟梁の眉が僅かに動く。


「……何をしてやがる」

「決めるだけだ。先攻か、後攻か」


 その言葉と共に悠真は、コインを親指の腹に乗せた。


「表が出たら、俺が先攻。裏なら、お前だ」


 そう宣言すると、彼は静かに親指を弾く。


 金属音が沈黙を切り裂き、コインが空中で回転する。

 魔石灯の青白い光を交互に反射させながら、軌道を描いて落下していく──その一瞬。


「フザけてんのかァアアアッ!」


 棟梁の怒声が爆ぜた。

 刀身の根元には紫黒い液体が塗られており、空気に触れた瞬間、煙のような揮発臭が漂う。

 即死性の毒だ。


 狂犬のように吠えながら、棟梁は悠真へと突進する。

 剣の切っ先は、悠真の心臓を正確に狙っていた。

 だが、その瞬間──。


「グッ……!? なん、だと……?」


 棟梁の身体が、空間に弾かれたかのように、前のめりに止まる。

 剣は彼には届かず、見えぬ何かに完全に遮られていた。


 無理やり押し込もうとした剣先は空振りし、勢い余って足元が滑る。

 悠真の足元に、淡く青白い光の魔法陣が静かに輝いていた。


「今の……何だ? 見えない……壁……?」


 困惑と恐怖の入り混じった声が、老練な喉から漏れる。

 その姿を見て彼は、口の端をわずかに吊り上げた。


「まあ、そういう反応になるよな。俺と初めて戦う奴は大抵、今のお前と同じ反応をする」


 落下してきたコインを、悠真は自然な動きで手の甲に乗せる。

 乾いた金属音が、周囲の静寂を支配する。

 コインの面には刻まれた太陽の紋章──表が出ていた。


「先攻、俺だな」


 その声はどこまでも冷静で、激情とは無縁である。

 棟梁の額に汗が流れ落ちた。剣が、ぶるりとわずかに震える。


「説明してやるよ。お前の命を奪う前にな。この結界の中では、戦いにターンという概念が生まれる。先攻と後攻、コインで決まるそれぞれの順番の中だけが、唯一の戦いの基盤だ」


 悠真は一歩、また一歩と進み出る。

 漆黒の外套が地下の冷気にわずかに揺れた。


「先攻プレイヤーは、自分のターン中に相手の攻撃を一切受けない。防御も回避も不要だ。ターン中に受ける攻撃は、すべてこの結界が無効化する。お前が今、剣を弾かれたのはそういうことだ。まあ、たまに女神の悪戯で通る時もあるがな」

「く……狂ってやがる……!」


 棟梁が息を飲む。


「おい、焦んなよ。まだ続きがあるぜ。後攻プレイヤーにも同じ権利がある。相手のターン中は攻撃できない代わりに、自分のターン中は完全に守られる。まあ、これも女神の悪戯次第では通るがな」


 女神フォルトゥナの顔を思い浮かべながら悠真は肩を竦めた。

 そして棟梁が後ずさる。

 濡れた地面で靴が滑り、背後の岩壁に肩をぶつけた。


「まずは手札を用意しないとな」


 デッキケースが輝き、五枚のカードが空中へと射出される。

 それを受け取り彼は、素早く内容を確認した。


「先攻第一ターン。ビキニメイド・アクアマリンを通常召喚!」


 一枚目のカードを場に叩きつけるように展開する。

 魔法陣から水柱が立ち上り、その中から一体の美女が実体化した。


 煌めく水色のビキニアーマーと、貝殻の装飾品を身につけた細身の女性。

 濡れた銀髪が腰まで垂れ下がり、手には三叉の槍を携えている。

 透き通るような肌と大きく潤んだ蒼い瞳が、棟梁を静かに見据えていた。


「続けて、魔術カード──水神の加護・アクア・ブレッシングを発動」


 二枚目のカードが展開され、青白い波紋が結界全体に広がる。


「このカードの効果により、召喚したターンでも水属性の者は攻撃が可能になる。さらに──」


 三枚目のカードを展開した。


「即時魔術──双波の号令・ツイン・タイド! このカードの効果で、デッキから水属性モンスターを二体まで特殊召喚できる」


 魔法陣が二重に輝き、さらに二体の魔物が実体化する。


「ビキニメイド・ディープマレア、特殊召喚」


 一体目は、より成熟した体躯を持つ女性だった。

 深海を思わせる赤紫のビキニアーマーに包まれた豊満な体躯が艶やかに波打ち、手には長鞭型の水魔具を持っている。

 艶やかな笑みを浮かべながら、悠真の右側に静かに浮遊した。


「ビキニメイド・サーフブレイカー、特殊召喚」


 二体目は長身で、露出の高いスポーツビキニを着こなした褐色肌の女性。

 波を模したボード型の武具を携え、獲物を見据えるような鋭い目が棟梁を捉えていた。


 三体の美女が、悠真の周囲に整列する。

 結界内に水の気配が充満し、うっすらと地面が濡れ始めた。

 棟梁の顔が、初めて明確な恐怖に歪む。


「な、なんだこれ……! 何体出てくる気だ……!」

「バトルフェイズに移行する」


 悠真の指が静かに振り下ろされた。


「アクアマリン──攻撃」


 水流が足元に巻き起こり、アクアマリンが疾走する。

 その勢いのまま三叉槍が突き出され、棟梁の腹部を的確に貫いた。

 血が飛び散り、硬直した棟梁が咳き込むようにして膝を折る。


「……グッ、がああああッ……!」


 悲鳴混じりの呻き声が響き渡る中、アクアマリンは優雅に身を引いた。


「ディープマレア、続けて攻撃」


 鞭が水の尾を引いて唸り、棟梁の肩口を裂く。

 水飛沫と共に血が霧のように舞い、巨体が横転した。


「サーフブレイカー、トドメだ」


 褐色肌の魔物がボード型武具を振りかぶり、棟梁の背中へと叩きつける。

 鈍い衝撃音が広間に響き渡り、棟梁の体が地面に深く沈んだ。


「おぉぉっ……が……て、てめぇ……」


 棟梁は呻きながらも、腹部から流れ出る鮮血を手で押さえ、なおも立ち上がろうとする。

 血に濡れた瞳が、彼を睨み据えた。


「お前……テイマーか、召喚士か……こんな化け物、どうやって従えてやがる……」


 荒い息を吐きながら、棟梁は震える手で剣を再び構える。

 左腕は激しく震え、足取りも不安定だった。それでも闘志の炎は未だに消えていない。

 悠真は残りの手札を静かに確認した。


「ふっ、俺は一枚のカードを場に伏せるぜ」


 魔法陣に一枚のカードが裏向きにセットされ、青白い光が微かに揺れる。


「ターンエンド」


 その言葉と共に、結界内の水の気配が静まり返った。

 三体の魔物が悠真の背後に整列し、棟梁との間に静かな間合いが生まれる。

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