第27話 下衆な集団
「毒塗り武器に魔法の同時照準……用意周到なことだ」
アウラが低く舌打ちを放つ。頭頂部の猫耳が限界まで逆立っている。
「いや、待て待て。そこの女たちがよぉ……ちょっと"あっちのサービス"してくれるんなら、俺たちも考え直してやってもいいけどな。げははっ!」
その声に盗賊どもの視線がシュンリン、アウラ、そして後方のホウキ、シャルル、アイリスへと順に移っていく。
シャルルは淡い金色に近い銀髪を揺らし、長く細い耳を不快そうに伏せながら、白い法衣に包まれた胸元を一瞬手で庇うように押さえた。
ホウキは東の国風の軽装和装の裾を静かに払い、切れ長の黒い瞳を細めて前を見据える。
アイリスは金色の狐耳を逆立て、蒼い瞳に冷たい炎を灯しながら唇を引き結んでいた。
「……あれ、すげぇ……」
「ムレてそうだな……」
「うへへっ……いただきてぇ……」
涎を垂らしながら盗賊たちは、各々の欲望を露わにする。
その中には既に腰布の下が盛り上がり、興奮を抑えきれぬ様子で体を震わせている者もいた。
「……下衆どもが」
忌々しげに吐き捨て、アウラはナイフの柄に手を掛ける。
猫耳が逆立ったまま、青灰色の瞳が怒りに燃えていた。
「貴様ら……」
ホウキの声は低く、静かで、しかし底知れぬ殺気を帯びている。
太刀の柄を握る白い指が、わずかに力を増す。
「シルヴェスター家の名において……これは絶対に許しませんわ」
冷たくアイリスが言い放つ。
金色の狐耳が逆立ち、一本の尻尾が激しく揺れていた。
レイピアの柄に添えられた指先が、硬く握り締められている。
シュンリンは、うっすらと笑っていた。
無垢な少女のような表情でありながら、赤金色の大きな瞳の奥には、血の匂いを求める獣のような光が灯る。
短めの前髪の奥で、その光が大きくなっていくのが分かった。
額の両側の龍角が僅かに赤みを増し、硬質な爪の指先が静かに握られていく。
「悠真……どうする?」
小声でシャルルが問いかける。
長く細い耳がぴんと前方へ向き、翠色の瞳は震えていたが、視線は逸らしていない。
彼女の中にも確かな決意があった。
悠真は前髪の奥で静かに目を細め、周囲の布陣を素早く確認する。
毒塗りの刃、半完成の魔法、そして退路を完全に塞ぐ包囲網。
「くそっ、実に厄介だな……!」
彼の声は低く、しかし鋭さを孕んでいた。
その隣でホウキが静かに、太刀の柄に手を掛けてゆく。
黒いポニーテールが蒼白い灯藻の光の中で揺れ、東の国風の軽装和装の裾が静かに翻る。
切れ長の黒い瞳には、一切の揺らぎがなかった。
「……不埒者めが。女を侮り、武人を愚弄した報い、今宵ここにて受けさせて差し上げます」
彼女の言葉は穏やかだが、その声音の奥に潜む怒気は研ぎ澄まされた刃の如し。
盗賊たちの薄ら笑いが一瞬だけ引き攣る。
続いて、シャルルが一歩前に出た。
淡い金色に近い銀髪を揺らし、長く細い耳を前方へ向ける。
その翠色の瞳は艶やかに濡れていた。
「ごめんなさいね、あなたたち。そういう目で見られるの……僕、嫌いなんだよね。でも……ふふ、やっぱり好きなのは、逆の立場、かな」
柔らかく微笑む彼女の口元は、どこか危うい甘美さを孕んでいる。
長く細い耳が、ゆっくりと前方へ向き直る。
アウラが腰のナイフを抜き、地面へと突き立てた。
金属の音が空気を裂き、銀灰色の長髪が揺れる。
頭頂部の猫耳が逆立ち、青灰色の瞳が戦場を俯瞰するように、盗賊どもを見渡した。
「任務目標変更。敵性集団への殲滅戦へ移行する。……黙って従え」
号令のような言葉に、盗賊たちが眉をひそめる。
この女は戦場慣れしていると、本能が告げたのだろう。
「へっ、舐めやがって。こっちには数が……」
そう言いかけた盗賊の一人が口を閉じた。
アイリスが前に出たからだ。
「人のものを盗る下賤な輩が、我らに刃を向けるとは笑わせますわ。シルヴェスター家の名において……あなたたちには、鉄の味と苦痛こそがお似合いですのよ」
腰まで届く金髪を背に翻し、金色の狐耳を逆立て、蒼い瞳で盗賊どもを見下ろしている。
しなやかな動作でレイピアを構え、尻尾が怒りに激しく揺れていた。
そして最後に、シュンリンが一歩前に出る。
「調子に乗ってんじゃねえぞ、クソ野郎ども! 股間膨らませてヨダレ垂らしてんじゃねえっつの、マジでキッしょいんだよアンタらッ!」
燃えるような赤いツインテールが怒りに激しく揺れ、短めの前髪の奥で赤金色の大きな瞳が爛々と輝いている。
額の両側の龍角が僅かに赤みを増し、硬質な爪の指先が握り締められた。
その言葉に、盗賊どもの顔が怒りと羞恥で歪む。
悠真は静かに息を吐いた。冷えた空気が肺に入り、脳を冴えさせる。
五人の仲間が前に出た今、背後を守る者はいない。だが、それでいい。
「──よし、交戦を許可する。お前ら、好きにやれ。俺は棟梁を押さえる。領域能力――"決闘結界、デュエル・フィールド! オープン!」
その言葉と共に、彼の足元に魔法陣が展開された。
青白い光が円形に広がり、半径数メートルの結界が瞬時に形成されてゆく。
――そして、悠真たちと盗賊たちの戦闘が開始されて、数時間が瞬く間に経過した。
戦闘は、あまりにも一方的である。
ホウキが最初の三人を斬り伏せるのに、十秒とかからなかった。
刀閃が走ると同時に、肉が裂け、骨が砕ける生々しい音が続く。
燕返しが、無駄な動き一つなく敵の急所を断ち切った。
「武人を愚弄してくれましたな……下郎ども」
黒いポニーテールが乱れずに静止する。
頬に跳ねた返り血は朱のように鮮やかで、その切れ長の瞳には一片の動揺もなかった。
白磁のように滑らかな肌に赤の点描。まるで絵画の一幕だ。
「ぎゃははっ、次はオレの番だ──ぶげぇっ!」
刹那、男の顔面にアウラの軍靴がめり込んだ。
跳び上がりざまの回し蹴り。顎が歪む音を立てて砕け、男の身体は地に転がり二度と動かない。
銀灰色の長髪が、跳躍の余韻でしなやかに揺れ、猫耳が逆立ったままだ。
「軍法会議も不要だろう。貴様らのような輩には」
表情一つ変えず彼女は、鉄血のような声色で言い放つ。
「いやぁ~、声も顔も下品ってのは救いようがありませんねぇ。清楚の世界から見れば、地獄の底から這い上がってきたゴミの山みたいで……ふふっ」
穏やかな微笑みを浮かべながらシャルルは、魔力の光を帯びた長杖をゆっくりと下ろした。
ゆったりと長く細い耳が揺れ、翠色の瞳が艶やかに細まっている。
その足元には、股間を押さえて悶絶する盗賊が一人、転がっていた。
さきほどの戦闘で、彼女は無慈悲な一撃を股間へと叩き込んでいたのである。
アイリスは三人を相手に幻影を二体展開し、三方向からの同時攻撃で瞬く間に制圧した。
金色の狐耳を立て、レイピアを一閃するたびに、盗賊が地に伏していく。
金髪が翻り、尻尾が弧を描いた。
その騎士装束には、傷ひとつついていない。
「……ほんとうに、下品極まりない連中ですこと」
フッと息を吐き、アイリスは剣を鞘に納める。
まるで戦場の女王のような威容だ。
そしてシュンリンは──最も苛烈である。
「調子に乗ってんじゃねえぞッ!」
燃えるような赤いツインテールを振り乱しながら、拳が盗賊の顎を砕く。
追撃の蹴りが胸骨を陥没させ、硬質な爪が肩口を引き裂く。
痛みを快楽に変換する龍人族の体質が、彼女の戦闘を加速させていた。
被弾するたびに赤金色の瞳が輝きを増し、額の龍角がさらに赤みを増していく。
「これがアタシのやり方だ……。文句があるなら地獄で言えッ!」
気づけば、盗賊たちは残らず地に伏していた。呻く者もいなければ、立ち上がる者もいない。
嵐のように吹き荒れた五人の攻撃の前に、彼らの抵抗は文字通り無意味だったのだ。
そして悠真の眼前には、唯一生き残った盗賊の棟梁だけが残っていた。
脂ぎった顔面には血がこびりつき、膨らんだ腹が恐怖に震えている。
右手には毒刃、左手には護符。だが、その姿はもはや棟梁には見えなかった。
最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます。
宜しければ評価とブックマーク登録をお願い致します。
活動の励みとなり更新が維持出来ます。




