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「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第四章

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第21話 責任取って貰うぜ!お前の体でな!

「な、なんでそんな無防備な……!?」


 目を逸らしながらホウキが叫ぶ。

 切れ長の瞳が僅かに赤みを帯びていた。


 当の彼女は全く気にする様子もない。

 むしろ僅かにだが──燃えるような赤いツインテールが揺れ、微かに頬が紅潮していた。


「治療するからね~。じっとしててね~」


 静かに魔力を練り始めるとシャルルは、簡潔な動作で治癒魔法の詠唱を始める。

 その指先から金色の魔力が、緩やかに彼女の身体へと向かう。

 だが、その時だった。


 低く、腹の底から絞り出されるような咆哮が、空間を震わせた。

 次の瞬間、武道服の少女は全身の筋肉を引き絞るようにして跳ね、悠真に向かい駆け出した。


「うおっ!? な、なにっ……!」


 反射的に防御姿勢を取る間もなく、彼の胸倉が掴まれる。

 硬質な爪の指が鋼鉄のように食い込み、漆黒の外套が軋む音を立てた。

 近距離で見据える赤金色の瞳は怒気に燃えており、荒い呼吸の度に熱い息が悠真の顔に掛かる。


「ちょ、ちょっと待て! なんだよ急に!」


 困惑した彼の声に、周囲の仲間たちも緊張を走らせる。

 アウラは即座に警戒心を高めると、腰に携えられたナイフの柄に手をかけた。


 シャルルは驚きで長く細い耳を立て、自身の手で口元を押さえる。

 ホウキは冷静に間合いを詰め、太刀の柄に手を添えた。

 アイリスが金色の狐耳を逆立てながら、レイピアの柄を握る。


「お、おい……まさか敵……?」


 震える声を悠真は口から吐く。

 だが、そんな疑念を吹き飛ばすように、少女が彼の顔に自分の顔を押しつけるほど近づけて、唾を飛ばしながら叫んだ。燃えるような赤いツインテールが怒りに激しく揺れている。


「違うっつってんだろがァッ! アタシはあの魚たちに襲われてたんじゃねー! 楽しんでたんだよ!」

「……は?」


 まるで理解が追いつかない。

 悠真の脳内に走る思考は、さながら詰まったギアのように軋み、答えを導かぬまま沈黙する。


「アタシはなぁ……あの鋭い嘴が皮膚を貫いてくるあの瞬間ッ! 肉が裂けて骨に達する感覚ッ! それがッ! 最高なんだよッ!」


 彼女の表情は、狂気と陶酔の入り混じったもので、頬は紅潮し瞳孔が僅かに開いていた。

 短めの前髪の奥で、赤金色の大きな瞳が快楽に濡れたように輝いている。

 その息づかいが彼の顔を熱く湿らせた。


「お、おい……え? え? マジで言ってんのか……?」

「マジだよッ! マジでマジでマジでマジでええええええ! アタシの趣味を邪魔しやがって、このボケカスクソ野郎ォ! どの面下げて助けた面してやがるッ!」


 吐き捨てるように唾が飛ぶ。

 悠真の頬に粘つく唾液が伝うが拭う余裕もない。


 少女は胸倉を掴んだまま引き寄せ、己の顔をさらに近づけてきた。

 鼻が触れるほどの距離で、狂ったような赤金色の瞳が、真っ直ぐに悠真の目を射抜いてくる。

 裂けた武道服の胸元が、荒い呼吸のたびに大きく上下していた。


「わ、わかった……なんかごめん」


 咄嗟に彼女の手を払い除け、外套の襟元を直しながら、小声で彼は呟く。

 無意識のうちに手の甲で顔についた飛沫を拭う。


 だが彼女の様子は、なおも危うかった。

 胸で荒く息をつき、血塗れのまま仁王立ちしている姿は、まさしく狂戦士と呼ぶに相応しい異様さである。燃えるような赤いツインテールが、まだ興奮に揺れていた。


「いいか……小声でいくぞ。円になって、ささっと作戦会議だ」


 悠真は仲間たちに目配せを送ると、素早く円陣を組むように合図を出す。

 仲間たちは戸惑いつつも頷き、声を潜めて輪を作る。


 少女からは少し離れた位置。

 魔物の死体の間に出来た血溜まりを避けながら、肩を寄せ合い小声で話し始めた。


「……どうやらアイツは、特殊な趣味を持っているみたいだ」

「……シルヴェスター家の者として申し上げますが、ああいった方は貴族社会でも稀に存在しますわ。痛覚への異常な執着……医学的には説明がつきますが、常識の範疇を大きく逸脱していますの」


 彼の言葉に対して、アイリスが金色の狐耳を小さく動かしながら口を開いた。


「武の道においても、極限の痛みの中に悦びを見出す修行者は存在しますが……あれは、その域を遥かに超えております」


 太刀の柄を静かに撫でながら、ホウキが目を細めて囁く。


「帝国軍でも、ああいった素質を持つ兵士は特殊部隊に回されることがある。戦闘能力は高いが……扱いに困るタイプだ」


 猫耳を伏せたまま、アウラが苦い顔で腕を組む。


「……僕は少しだけ理解できるかな。理解されない趣味というのは、時として何倍もの快楽を返してくれるものだし。特に痛覚を伴う刺激は、強く記憶に残るものだよ」


長く細い耳を伏せながら、シャルルは翠色の瞳を半眼にして囁いた。


「いや、理解できるのかよ……!」


 即座に突っ込みたくなったが、悠真は言葉を飲み込む。

 小声での会議は続いた。


「結論としては──うん。これ以上、変な奴に関わって面倒事になるのは御免だ。できる限り揉め事を避けて、この場を早急に立ち去るべきだと思う」


 彼の言葉に全員が無言で大きく頷く

 沈黙は、何より明確な賛同だった。


 変な趣味を持つ者は、まず間違いなくまともではない。

 さらに、その趣味を邪魔されて本気で怒るとなれば、もはや危険人物の範疇だ。


 これが、この短いが濃密な会議を経た、悠真と仲間たちの一致した認識である。

 血塗れの広間に、再び冷たい沈黙が満ちた。

 彼ら彼女たちは静かに、そろりと後退してゆく。


「……えーっと、だな……。その、すまん。本当に悪かった。お邪魔する気は全然なかったんだ。趣味ってのは、大切だもんな。うん……尊重し合おう、そういう感じで……な?」


 引き攣った笑みを浮かべ、やや汗ばんだ両手を悠真は小さく振る。

 その後ろでアウラが一歩踏み出しかけたが、その腕を静かにホウキが取って止めた。


 猫耳が逆立ったまま、青灰色の瞳が状況を冷静に見極めている。

 シャルルは長く細い耳を揺らしながら、うっとりと翠色の瞳を細めて、その様子を見つめており、まったく役に立ちそうにない。


「……早く離れた方がよろしいですわよ、悠真」


 金色の狐耳を伏せ、アイリスは蒼い瞳を細めながら小さく呟いた。


「アタシの"時間"を愚弄したことに謝るなら──」


 徐に足を進めて少女は、そこで声を止めると、唐突に悠真の胸元に顔を寄せる。

 燃えるような赤いツインテールが、するりと肩から流れ落ちる。


「……せめて、身をもって詫びるのが、筋ってもんじゃないか?」


 囁くような声。だが、鼓膜を叩く音は鋭く、毒のように染み込む。

 彼の背中に汗が流れる。


 そして彼女の手が悠真の肩に触れると指先は徐々に滑り、上腕へ、そして肘の内側へと這うように降りていく。硬質な爪が僅かに皮膚を引っ掻きながら。


「そ、そういうのは……ちょっと違うというか、な? 俺たち、まだダンジョン攻略の最中だし、な? 時間も限られてるし、そろそろダンジョンの奥へ……」

「それがどうした?」


 ピシャリと断ち切るような声。

 短めの前髪の奥で、赤金色の大きな瞳が、悠真を真っ直ぐに射抜いている。


「そんな言い訳が通じると思うなよ。アタシの楽しみを奪った罰は、そう簡単には終わらねぇ。……なあ、アンタの体、少しだけ貸してくれるよな?」


 瞬間、空気が凍り付いた。それは冗談として流せる空気ではない。

 赤金色の瞳は真剣そのものだ。愉悦と狂気が入り混じる双眸。


 幼さと勝気さが同居した顔立ちに浮かぶ光は、まさに捕食者のそれだ。

 裂けた武道服の胸元が、興奮に高ぶった呼吸のたびに、大きく上下している。

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