表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/114

第5話 魔弾

「前衛制圧。シャルルは右、ホウキは左。三方から駆け下りるぞ」

「御意」

「了解だよ」


 三人は同時に、高台の端から飛び降りる。

 ──着地と同時に、戦場が動いた。


「豊穣の棘蔓──」


 シャルルの長杖が地面を叩くと、地面の割れ目から無数の茨の蔓が噴き出す。

 鋭い棘が骸骨兵の関節を絡め取り、引き裂き、腐敗した騎士の胴体に深々と食い込んでいく。

 蔓の先端からは緑色の毒液が滲み出し、触れたアンデッドが黒く変色しながら崩れ落ちた。


「植物の毒はアンデッドにも効くんだよね、これが」


 おっとりと呟きながら、シャルルは更に蔓を伸ばす。

 今度は薔薇の蔓だ。

 

 鮮やかな赤い花弁が咲き乱れる中、棘が群れの中心へと突き進んでいく。

 一方で左側では──


「桜花千凜──散華の型!」


 ホウキが太刀を大きく薙ぐと、刀身が淡い桜色の光を帯びて弾け、無数の花弁へと変わる。

 花吹雪が舞うように広がり、その一枚一枚が刃となり、骸骨兵の群れを切り裂いていく。

 白骨が散り、腐肉が裂け、桜の花弁だけが美しく宙を舞う。


「正々堂々と、往生いたせ──!」


 花弁が空中で収束し、再び刀の形を成す。

 ホウキの手元に戻りし太刀が次の一閃を放ち、腐敗した騎士の首が音もなく飛んだ。

 そして中央では悠真が──


「即時魔術──神の盾・ホーリーフォートレス、発動」


 光の障壁が円形に展開され、少女の縛られた台座を中心に、神聖属性の結界が広がる。

 アンデッドたちが結界に触れた瞬間、白い光に焼かれて後退した。

 そして月光の刃をを右手に、ただ真っ直ぐに駆ける。


 カードの力で実体化した剣は、通常の武器とは異なる青白い魔力を帯び、触れたアンデッドの骨を砕き、腐肉を焼くように断ち切っていく。


 骸骨兵が行く手を塞ごうと群がるが、悠真は最小限の動きで躱しながら剣を振るい続けた。

 派手な魔法はない。召喚もない。

 ただ一本の剣と、戦況を読む目だけで、悠真は死者たちの海を割り進んでいく。


「このっ──即時魔術! 斬撃陣を発動!」


 さらに一枚のカードを彼は、デッキから引き抜き即座に展開。

 魔法陣から幾筋もの斬撃が奔り、密集したアンデッドの群れを薙ぎ払う。


 三人の能力が絡み合い、戦場を削り取っていく。

 桜の花弁と茨の蔓と斬撃が、死者たちの海を着実に切り崩していった。


「アイツのとこまで、もう少しだ──押せ!」


 悠真の号令が、阿鼻叫喚の死者たちの中に響き渡る。

 そして悠真たちは荒い息をつきながら、縛られた少女のもとへと辿り着いた。


 周囲ではアンデッドたちの呻き声が幾重にも響き渡る。

 骸骨兵、溶けかけたゾンビ、四肢の千切れた異形の死者。


 どれもこれも理性のかけらもなく、生者の肉に飢え、瞳なき眼窩をギラつかせて迫り来る。

 しかし、今の悠真の視界に映っているのは、ただひとつ。少女の姿のみ。


「……安心しろ。すぐに助けてやる」


 静かに呟きながら悠真は、震える指で縄へと触れた。


「ッ……!?」


 その瞬間、電撃のような衝撃が彼の右手を駆け抜ける。

 指先が痙攣し、手首まで麻痺したような感覚を受け、思わず手を跳ね除けた。

 月光の刃が手から弾かれ、甲高い音を立てて地面に転がる。


「魔力反応……強力な封印魔法か……?」


 顔を顰めながらも悠真は、左手で腰の鞘からナイフを引き抜いた。

 銀色の刃が微かな魔力光を帯びて揺らめいている。


「ならば──力ずくで──!」


 刃を縄に押し当て、一気に切り裂こうとした。

 ……しかし、ナイフは滑る。


 まるで弾かれるように刃先が軋み、傷一つつけられない。

 魔力を帯びた繊維が、刃を拒絶していた。

 いかなる技術で編まれた縄か、それすら判断できない。


「ちっ……通らないか」


 焦燥が喉を焼く。

 後方から、仲間たちの叫び声と、剣戟音が木霊した。


「囲まれすぎ! もう、この──豊穣の棘蔓!」


 焦りの色が宿るシャルルの声が響く。

 長杖が地面を叩くたびに無数の茨が噴き出し、アンデッドを絡め取り引き裂いている。


 クリーム色の軽鎧は所々で汚れ、銀髪が汗で額に張り付いていた。

 それでも翠色の瞳は冷静で、長く細い耳が周囲の気配を鋭く捉えている。


「悠真様──長くは保ちませぬぞッ!」


 ホウキの鋭い声も重なった。

 桜の花弁を舞わせながら斬り結ぶ彼女は、血飛沫を浴びながらも一歩も退かず、次々と敵を屠る。


「急げ! 早く、その御方を解け! このままでは──!」


 黒いポニーテールが乱れ、東の国風の軽装和装に腐肉が飛び散るが、切れ長の黒い瞳の奥には折れぬ意思が宿っていた。


 悠真は唇を噛み締める。

 脳内に浮かぶのは、デッキの中の一枚のカード……一か八か使うしかない。


「……最終手段だ」


 月光の刃(カード)の能力を解除し、デッキケースから新たな一枚のカードを抜き取る。

 銀色の枠に荘厳な輪が描かれた装具魔術カード。


「装具魔術──聖輪の守護環、発動!」


 低い声で悠真は唱えた。

 カードが宙に浮かび、淡く発光する。


「装備対象は俺自身。この武器の効果は……相手の魔法効果を一度だけ無効化する。そして、結界を破る事が可能だ」


 カードが弾けるように消え、悠真の胸元に白銀の指輪が顕現した。

 五芒星の紋が浮かび、輝きが淡く全身を包む。


「……もう一度」


 震える右手で悠真は、ナイフを握り直した。


「お願いだ……耐えてくれ」


 細い鎖のような縄に、再び刃を押し当てる。

 その直後、電撃のような抵抗が走るが、彼の身体は反応しなかった。

 聖輪の守護環が発動し、魔法効果を無効化したのである。


「切れる……!」

 

 更に悠真は力を込める。

 ナイフが繊維を裂き、縄がひとつずつ解かれていく。


「まだ湧いてくる──! 散華の型──ッ!」

「触れるんじゃないよ、もう──茨の檻!」

「悠真様、あと何秒ですか!?」


 仲間たちの叫びが飛ぶ中、彼は黙々と縄を切り続ける。

 指先に汗が滲み、心臓の鼓動が耳にまで響いていた。


 そしてついに――少女の身体を縛り上げていた、黒縄は乾いた音を立て裂け落ちる。

 しかし少女は、すぐには反応を示さなかった。

 悠真が顔を覗き込もうとした刹那──


「……どけ」


 即座に猿ぐつわを外し、凛とした声が闇を裂いた。

 次の瞬間、少女は地面を蹴り上げ跳ね起きる。

 銀に近い淡い灰色の長髪が、戦場の空気を切り裂くように靡く。


 血に濡れた雪白の肌は青ざめているが、冷淡な青灰色の瞳には、灼けつくような怒気が宿っていた。

 猫耳が逆立ち、尻尾が激しく揺れている。

 彼女は地面に転がる銃剣付きの長銃を、それを迷いなく掴み、軽々と持ち上げた。


「……許さん。絶対に、許さん」


 その声は低く、静かである。

 怒鳴りもしない。叫びもしない。


 ただ、その一言が持つ温度の低さが、かえって凄みを帯びていた。

 刹那、彼女は言葉もなく走り出す。


「おい、待てっ──!」


 悠真が制止するより早く、彼女の身体はアンデッドの群れへと飛び込んでゆく。


デッドアイ・シュート(正確無比な射撃)──」


 低く、静かな詠唱だった。

 その瞬間、彼女の長銃の弾倉に、七発の魔弾が自動で装填される。


 青白い光が、それぞれの弾に宿り、銃身がわずかに震えた。

 少女は表情一つ変えず、最初の一体に照準を合わせる。

 引き金を引く。


 魔弾は一直線に奔り、骸骨兵の眼窩を正確に貫いた。

 着弾と同時に青白い閃光が爆ぜ、躯が塵となり崩れ落ちる。


 二発目。

 腐敗した騎士の胸甲の継ぎ目──僅か一センチにも満たない隙間を魔弾が迷いなく射抜いた。


 三発目。四発目。五発目。

 照準を合わせ、引き金を引く。


 それだけだった。感情もなく、迷いもなく、ただ精密な機械のように急所だけを刈り取る。

 魔弾は持ち主の意図した箇所を絶対に外さない。

最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます。

宜しければ評価とブックマーク登録をお願い致します。

活動の励みとなり更新が維持出来ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ