第7話 あられもないエルフの少女
「簡易領域能力――クイック・デュエル・フィールド」
低く呟かれた声に応じて、悠真の足元に青紫の魔法陣が展開する。
通常のデュエル・フィールドよりも小規模だが、カードの効果を瞬時に発動できる簡易的な結界だ。
彼は腰のデッキケースからカードを引き抜く。
「召喚――ビキニメイド・ヴィーナ、出撃」
宣言と同時に、カードが光に包まれ、空間を裂く閃光が走る。
眩い光の中から現れたのは、戦乙女然とした女戦士。
褐色の肌に映える露出度の高い銀のビキニアーマー、背には鋭く反り返った斬馬刀を二本背負い、氷のような視線を敵へと注ぐ。
「てめぇ! なんだそのエロいのは!?」
「クソっ、ビキニ女が何だってんだよ!」
「召喚士か!? ひゃっはー! そいつから殺れッ!」
敵の罵声が一斉に響き、同時に四人の男たちが突進してくる。
大男のオーガ系、斧を持ったヒューマン、歯が全て尖っているノーム、そして汚れた鎖を手にしたリザードマン――。
だが悠真の表情は、微塵も揺らがなかった。
「装具魔術カード発動――炎の剣、ヴィーナに装備!」
カードが光に包まれ、ヴィーナの手に炎を纏った剣が実体化する。
刀身は赤い炎で形成され、空気を焼きながら揺らめいていた。
「ヴィーナ、制圧開始。全力行動で構わない」
「了解。敵性存在――殲滅を開始します」
女戦士は飛ぶように前に出た。炎の剣を抜き放ち、回転しながら突撃。
地面を蹴り上げて舞い上がった彼女の一閃は、オーガ男の肩から腰へと深々と切り裂いた。
炎が傷口を焼き、悲鳴が響く。
「ぐああああッ!?」
肉が裂け、炎で焼かれた傷口から、赤黒い血が噴き出す。
斧男が反撃の一撃を放つも、悠真は新たなカードを発動した。
「即時魔術カード発動――瞬間移動!」
彼の足元が光に包まれ、姿が消失する。
斧が空を斬り、その直後、背後に移動した悠真が再びカードを引き抜いた。
「さらに装具魔術カード――ファントム・セイバー、装備!」
彼の右手に、半透明の魔力で形成された剣が現れる。
その剣を振り抜くと、斧男の肩が裂けた。
「がああああああっ! いってぇぇええっ!」
「はっ、調子に乗りすぎたな」
敵が負傷して悲鳴を上げ、行動不能になるのを確認し、悠真は言葉を吐き捨てる。
残りの二人も猛然と迫るが――ホウキが『チェストォォオオッッ!』と薩摩示現流のような奇声を放ちながら斜めから斬撃を浴びせた。
ノームの首が胴から外れ、リザードマンは飛びのいた先でヴィーナの蹴りを腹に受けて壁に叩きつけられた。
「お、おぼえてろよ! こんなのおかしいだろ!」
「反則だ! 反則だぁああああっ!」
残された二人が逃げ出し、広間から叫び声と共に姿を消す。
しばしの沈黙が訪れる。
悠真は静かに剣を消し、簡易領域を解除。
ヴィーナも主の意図を読み取り、軽く一礼して光の粒子となり消えた。
カードがデッキケースへと戻る。
「ちっ……くだらねえ連中だったな」
彼は肩を鳴らし、血の飛び散った袖口を払う。
「あの外道共に、生きている価値はない。次こそは必ず息の根を止めてやる」
ホウキの声は静かだが、その怒りの熱を孕んでいた。
そして二人は、ゆっくりと背後の少女へと振り返る。
「おい、大丈夫か? 意識ははっきりしてるか?」
悠真が問いかけると、エルフの少女は僅かに肩を震わせ、ゆっくりと顔を上げた。
視線が交差し、数秒の沈黙が流れる。
だが、やがて彼女はぺこりと頭を下げ、声を震わせながらも、はっきりと言葉を返した。
「……はい。助けていただき、本当にありがとうございました……!」
深々と腰を折り、額が地に付きそうになるほどの礼。
「堅苦しい礼など要らぬ。無事ならばそれでよい」
それを見てホウキが、やや呆れたように鼻を鳴らした。
「……お、おおう。まあ、落ち着け。ここはまだ完全に安全とは言い難い」
悠真は背後を振り返り、敵が完全に撤退したことを念のため確認する。
そして場が一段落したことを受け、彼は軽く咳払いをして、少女へと改めて向き直った。
「まずは、お前の身に何が起きたのか、事情を聞かせて欲しいが……。その前に、お互いに名乗っておこうか」
彼の言葉に、シャルルは素直に頷く。
「……はい。えっと、僕はシャルル・デュノアイエと申します。歳は九三で……種族はエルフです。職業は神聖術士……です」
外見の年齢は十七歳ほどに見えるシャルルは胸に手を当て、やや緊張した面持ちで名乗る。
肌の血色が、まだやや青白いが、意識ははっきりしているようだ。
さらに続けて、ホウキが無言で一歩前へ出る。
「私の名は、オリムラ・ホウキ。歳は十七です。職業は……戦巫女でございます」
ぶっきらぼうだが、言葉の端には信頼の色がにじんでいた。
そして、悠真が口を開く。
「悠真だ。フルネームは東雲悠真。人族、職業はデュエリスト──そして孤影の決闘士という二つ名で、多少は知られているかもな」
声のトーンをやや落とし、冷静に低く響かせる。
あくまで自然体を装っているが、どこか自己演出の匂いも感じさせる声色だ。
しかし、その名を聞いた瞬間、シャルルの瞳が大きく見開かれた。
「も、もしかして……あの有名配信者の、孤影の決闘士様ですかっ!?」
驚きと尊敬が混ざった声が広間に響く。
するとホウキが一歩引いた位置から肩をすくめた。
「ああ、そうだ。御存知、、孤影の決闘士だ」
彼は顔を崩すことなく、どこか芝居がかった冷静な口調で答える。
低い声に僅かな余裕が混ざり、まるで舞台の上に立っているかのような立ち振る舞いだ。
それを聞いたシャルルは、納得したように何度も頷く。
「なるほど……どおりでお強いわけです……」
だが彼女の視線は、やがてホウキへと向き、少し首を傾げた様子で口を開いた。
「ですが……噂では貴方様はパーティーを組まない“孤独の戦士”様だと聞いておりました。それがなぜ、今はこの方と……?」
そのまま疑問を口にしたシャルルの言葉に、ホウキが僅かに眉を上げる。
だが返答は、悠真が先に担った。
「まあ、ここに来るまでに色々とあってな。今はパーティーの重要性を理解しようとしているところさ」
それだけ言うと、彼は肩をすくめるように笑みを浮かべる。
その声には若干の照れ隠しが混ざっていたが、それを口にする様子は見せなかった。
そして悠真は改めて、野蛮な男たちに襲われていたシャルルへと視線を向け、その全体を捉える。
その身体は酷く乱れていた。
淡い金色に近い銀髪は汚れに塗れ、肩口で揺れる軽めのミディアムボブは乱れている。
前髪は眉にかかり、その奥には涙の痕が残る大きな翠色の瞳があった。
エルフ特有の長く細い耳が、髪の隙間から覗き、その先端が僅かに震えている。
自然素材中心の軽装ローブは、無残に引き裂かれていた。
淡く上品な色合いだったであろう布地は、今やほとんど原型を留めていない。
胸元は深く裂けており、小さな三角形の布が辛うじて、乳房の先端を隠しているだけだ。
片方の肩は完全に露出し、そこから二の腕、脇腹にかけての白い肌が惜しげもなく晒されている。
呼吸するたびに、布地の隙間から柔らかな膨らみが覗き、その曲線が艶めかしく揺れた。
華奢な体型ながらも、確かに女性らしい丸みを帯びた胸が、破れた布の下で上下している。
さらに下半身――ローブのスカート部分は、ほぼ完全に引き千切られていた。
腰から太腿にかけての布は僅かに残っているだけで、白く滑らかな太腿が丸見えになっている。
その肌には、血の跡と爪で引っ掻いたような痕、そして指で掴まれたような赤い痣が無数に残っていた。
太腿の内側――最も柔らかく、敏感であろう部分にも、同様の痕が生々しく刻まれている。
そして、その奥――股間を覆うはずの布は半分ずれており、下着の縁だけでなく、薄い布地に透ける肌の色までがはっきりと見えていた。
白い下着は、わずかに湿り気を帯びているようにも見える。
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