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「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第三章

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第6話 現る、エルフの少女

「仲間に……ですか?」

「ああ。もちろん、嫌なら無理にとは言わない。でも、お前の戦いぶりを見た。剣筋に迷いがない。何より、生きようとする気迫があった」

「……」

「それに、強がってはいたが実際の所、一人じゃ寂しいんだよ。ぶっちゃけた話な。だから……一緒に戦ってくれる仲間が欲しい。そう思った」


 悠真の声が風に乗り、沈むように響き渡る。

 三十三階層の静寂が、その言葉を否応なく包み込んだ。


 ホウキは、ゆっくりと目を閉じる。

 そして数秒ののち、静かに刀の柄に手をかけた。

 音を立てず、するりと抜かれた刀身が、階層の魔石灯に照らされて鈍く煌めく。


「恩人の頼みとあらば、このオリムラ・ホウキ。進戦の意を以って応じましょう」


 彼女は刀を横にし、胸元に引き寄せ、そして悠真の前で静かに――誓うように言った。

 その眼差しは、まっすぐである。


「命を救われた恩義、ここで果たさずして、どういたしましょうや。今この身を捧げて、悠真様の剣となり、道となりましょう」


 刃を通して放たれる気迫は、戦場に立つ者のそれである。

 悠真は、思わず息を呑んだ。

 その気高さ、その気迫。

 悠真が仲間として欲しかったのは、まさに――こういう存在だった。


「……ありがとう、ホウキ」


 彼は握った拳を静かに胸元へ当てた。

 それは配信者である前に、戦場に生きる者としての誠意の表れである。


 そして二人はパーティーを組んでダンジョン配信と攻略を再開させると、今現在悠真とホウキが歩いている階層は薄暗いが、深部に向かうにつれて段々と魔素濃度はより不安定になり、魔石灯の明かりが届く範囲も狭まっていく。


 特にここ、ダンジョン第四十階層――亡王の底都は、長年攻略者の踏破を拒み続けた危険地帯であり、地形は複雑を極め、音も光も歪められる。


 湿った石の床が、足音を吸い込むように静まり返っていた。

 悠真は重たくなる呼吸を押し殺しながら、鋭く前方を睨む。


 隣には、つい先ほど仲間になったばかりの少女――ホウキが寄り添うようにして並走している。

 既に数時間、彼女との連携を試行錯誤しながら進み、探索は小康を保っていた。

 ――だが、それは唐突な悲鳴によって破られる。


「きゃああああっ!」


 甲高く、恐怖を帯びた絶叫だった。聞き間違えようもない、若い女性の悲鳴。


「――っ! 女の、声……!?」


 ホウキは躊躇なく走り出した。足音が床に跳ね返り消える。


「お、おい待てって! ホウキ!」


 慌てて悠真も、その後を追う。

 彼女の姿は闇に溶けそうな速度で先行している。


「クソ……こんなとこで悲鳴なんて、まともな事態のわけがない!」


 彼の脳裏を、嫌な予感が掠めた。

 進んだ先は、瘴気に包まれた大回廊の奥――通常ルートから逸れた、攻略者たちの地図にも載っていない盲点の領域。


 まるで廃都の廃墟に足を踏み入れるような構造。

 砕けた石柱。剥がれ落ちた天井。腐臭とカビの匂いが鼻を刺す。


 その最奥――悠真とホウキが辿り着いた場所は、かつて宴が行われていたのだろう、円形のホールのような空間。


 その中央には、巨大な黒鉄のテーブルが傾いており、その背後――崩れかけた柱の陰で、一人のエルフ族の少女が複数の男たちに囲まれていた。


 六人の男たち。いずれも、見るからに異様な風体だ。

 全身に汚泥と乾いた血のこびりついた鉄鎧を纏い、顔には瘡蓋と刺青、牙のように尖った歯。


 背丈はまちまちで、大男から異様に背の低い小鬼のような者まで、種族の違うならず者が徒党を組んでいた。

 彼らは揃って獣のような笑い声をあげ、少女を地面に押し倒し、衣服を乱している。


 その少女は身長が百六十ほどで、上半身は既に引き裂かれ、淡い桃色の肌が寒気に震えて露出していた。


 淡い金色に近い銀髪が地面に広がり、ふんわりとした柔らかな髪が泥に汚れている。

 肩口で揺れる軽めのミディアムボブは乱れ、毛先が外へ跳ねていた。


 前髪は眉にかかり、その奥には涙で濡れた大きな翠色の瞳があった。

 エルフ特有の長く細い耳が髪の隙間から覗き、その先端が僅かに震えている。


 中性的寄りの美形な顔立ちは、少年少女の境目のような雰囲気を持っていた。

 細身で小柄な体型は華奢で、白く透明感のある肌が露わになっている。


 細く通った肩の線、喉元の窪み、露わになった太腿に、彼らの手が無遠慮に伸びていた。

 自然素材中心の軽装ローブは引き裂かれ、淡く上品な色合いの布地が無残に散らばっている。


 少し離れた場所には、彼女の背丈より少し長い長杖が転がっていた――本人よりも存在感があるはずのその杖も、今は無力に地面に横たわっていた。


 少女は叫び続けている。

 涙と恐怖に濡れたその声は、声帯が切れる寸前のかすれを帯び、それでも抗うように『やめて』と繰り返していた。


 穏やかで微笑めば空気が和らぐはずの表情は、今は恐怖と絶望に歪んでいる。

 だが、男たちは笑うばかりで、少女の叫びに耳を貸す者はいない。


 ――そして、その少女の姿を、悠真は目に焼きつける。

 まだ名前は知らぬ。だが、彼女の外見は一度見れば忘れ得ぬものだ。

 淡い銀髪、翠色の瞳、エルフの耳、中性的な美しさ――その全てが彼の記憶に刻まれる。


「……悠真様、これは……」


 ホウキの声が低く唸る。

 肩にかかる黒髪を揺らしながら、彼女は足を止めた。


 精悍な眉間には深い皺が寄り、腰の刀の柄に右手が添えられる。

 目の前に広がるのは、明らかに少女が性的に集団で襲われている非道な光景。


「ちっ……これは流石にまずいな。良い子の皆には見させらねぇ光景だ」


 悠真は呟くと、配信を再開させたばかりだが、直ぐに終了させるべくマギスフィア・ミニに触れた。

 すると微かに揺らいだ光が消え、配信の魔力が遮断される。

 その瞬間――。


「オ”オ”オ”ッ”!」


 ホウキが爆ぜるように動いた。腰の鞘から鋭く刀を抜き放ち叫ぶ。


「いえーーーい”っ”っ”っ”!」


 その声は、まさしく薩摩の戦士のような咆哮。

 気迫に満ちた奇声が洞窟内に反響し、男たちの蛮声と混ざり合う。


「なんだァ!? 誰だテメェらはァ!?」

「くそっ、見られたか!」

「いや、こっちのモンだろうが! ぶっ殺してやる!」

「ヒャッハァー! 新しい女が来やがったぜぇ!」

「はっ、またメスかよ! 今のが終わったらそっちも遊んでやるよ!」

「全員、ぶっ潰せ! 俺たちの至福を邪魔する奴は死刑だァッ!」


 男たちは、まるで理性の欠けた獣のようだ。

 皮を無造作に縫い合わせたような装備、錆びついた刃、ボロ布のような防具。


 身長が二メートルを超える大男から、異常に痩せた小人種まで、種族も風貌もばらばらだが、共通しているのは不潔さと狂気のみ。


 だが、その中心には――。

 当然の如く若きエルフの少女が、荒縄に縛られて地面に膝をついていた。


 全身が泥と血に塗れており、碧眼には恐怖と絶望、そして微かに残る抵抗の火が宿る。

 ホウキは一閃、刀を振るい男の一人に斬りかかった。

 斬撃は寸分の迷いもなく、一直線に襲いかかる。


「不埒千万ッ! なんと浅ましき所業……!」


 刀を構え直し彼女は、男たちを一瞥して吠えた。


「貴様ら……数にものを言わせ、力なき女子を嬲るとは……! それでも男か!  恥を知れ、恥をッ!」


 凛然たる怒声が、洞窟の闇を震わせる。

 その声には女としての怒りだけでなく、人間としての正義と憤怒が込められていた。

 そして悠真の視線が、野蛮な冒険者の集団へと定まった瞬間、彼の足元に魔力の波が奔る。


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