第4話 巨大で神秘的な女性現る
「おい、お前また隅っこかよ……虫けらみてーな存在感だなぁ? ペヤングでも買ってこいよ。まあ、こんな場所に売店なんかねぇーけどな。ちっ……クソが!」
見下すように樟葉は笑いながら悠真を指差すが、何も存在しないこの場の現実に怒りが込み上げたのか唾を吐き捨てた。
しかし樟葉の言動を見ていた一部の生徒たちは失笑すると共に、麗華は鼻で笑い『ちょっと喋らないでよ?悠真菌が飛ぶから』などと呟く声が聞こえる。
だが、そんな浮ついたやり取りの中で、それは突然の如く起きた。
――その瞬間、暗闇の一角、正確には悠真たちの目の前が何の前触れもなく、眩い閃光に包まれたのである。
「――――っ”!?」
悠真の視界全体が、再び白に染め上げられた。
目を覆い隠しても尚も感じる程の神々しい光。
その光の中から徐々に姿を現す何かがあった。
まず見えたのは白く光る、巨大な脚。
すらりと伸びた太腿は、まるで磨き上げられた大理石のように滑らかで、その曲線は神々しいまでに完璧だ。
膝から下も細く引き締まりながらも、女性らしい丸みを帯び、足元に至るまで一切の無駄がない。
薄絹のような白い布は腰から垂れ下がっているが、その布は太腿の付け根までしか隠しておらず、歩く度に長い脚がほぼ完全に露わとなる。
次いで腰が現れた。
くびれた腰は驚くほど細く、両手で掴めるでのはないかと錯覚するほどだ。
その細い腰から豊満な臀部へと続く曲線は、あまりにも艶めかしく目を奪われる。
布地は臀部かの膨らみを殆ど隠さず、丸みを帯びた双丘の形がはっきりと分かった。
そして胸部。圧倒的な存在感を放つ双乳は重力を無視するかのように高く張り、その大きさは人間の頭部ほどもあるのではないかと思えた。
深い谷間が覗く胸元は白く、柔らかそうな肌が惜しげもなく露出している。
布地は乳房の下半分を辛うじて支えているだけで、豊満な膨らみの大部分が剥き出しだった。
呼吸する度に巨大な双乳が、ゆっくりと上下する様は、見る者の理性を容赦なく削り取っていく。
乳白色の肌は透き通るように白く、まるで発行しているかのようだ。
滑らかな肌には一切の傷も染みもなく、完璧という言葉以外に表現のしようがない。
腹部は平らで引き締まり、へその周りから下腹部に掛けての柔らかな曲線が、薄布の隙間から垣間見えた。
顔が現れる。白銀の髪が腰まで流れ落ち、その一本一本が絹糸のように輝いている。
切れ長の瞳は金色に輝き、その視線は全てを見透かすよう。
眉は細く整い、鼻筋は完璧に整えられている。
唇は薄紅色で艶やかに濡れ、わずかに口角を上げた表情には、圧倒的な余裕と自信が滲んでいた。
そして背後で揺れる九本の尾。
白銀の毛並みを持つ狐の尾は、それぞれが独立して優雅に動き、時折互いに絡み合いながら、まるで生き物のように蠢いていた。
尾の付け根は豊満な臀部の上、腰のくびれた部分から生えており、その境界部分かの肌が微かに赤く染まっている。
全身を覆う衣装は、衣装と呼ぶのも憚られるほど布地が少ない。
胸部を支える布は幅が狭く、豊満な乳房を下から持ち上げるだけで、横から見れば乳房の側面がほぼ完全に露出している。
腰から垂れる布も前後に一枚ずつあるだけで、横から見れば腰から太腿に掛けての曲線が丸見えだった。
その巨大な姿は奈良の大仏にも匹敵する大きさでありながら、細部に至るまで完璧な美しさを保つ。
まるで神話の女神が、官能と神性を兼ね備えたまま、現実に降臨したかのようだ。
女神は口元を歪めて、余裕の笑みを浮かべる。
「ようこそ、女神の世界へ」
その声は低く艶やかで、空間全体に響いた。
声には妖艶さと威厳が同居し、聞く者の背筋を震わせる。
その刹那、全身が凍てつく感覚を全員が覚えた。
「あれは……なに……!?」
一軍女子の宝条鈴音が震えながら後退する。
「あ、あんなの……人間じゃないよ!?」
彼女の隣で立ち尽くしていた一般女子も顔を蒼白に変えて叫ぶ。
「な、なにこれ……ば、化け物……?」
目の前に聳え立つ巨大な相手に対し、麗華は独り言を吐き捨てる。
「ちっ……まったく、なにがどうなっていやがりますの? 本当に不快ですわ……なにかも」
怯えた素振りを見せるものの、姫香は露骨に表情を歪めて不満を漏らす。
そして巨大な女性は九本の尾をゆらりと揺らし、金色の瞳を全員を見下ろした。
その視線が向けられた者たちは、全身が射抜かれるような感覚に襲われる。
圧倒的な力の差を本能が理解してしまうのだ。
「なにをそんなに喚いている、人の子らよ」
ゆったりと肩を竦めながら巨大な女性は語る。
その声は天を震わせ腹の底間で響く重厚さを持つが、同時に何処か艶のある柔らかさも兼ね備えていた。
「この空間に招かれたこと自体、名誉なことだぞ?」
だが、その言葉に救われる者は、ほとんどいない。
むしろ逆に言葉が理解できる分だけ絶望が増していくようだ。
「おいおい、ありゃ一体何者なんだよ……」
「あれは……本物の人間じゃないよね……」
一軍男子たちの樟葉と奏恵は、混乱した様子を晒しつつも、震える言葉を巨大な女性へと向ける。
「僕達は……集団幻覚でも見ているのか……?」
「いや、もしかして……あの飛行機は本当に墜落して……ここは死後の世界なのか……?」
視線を相手に向けつつも、奏恵と樟葉は他の者とは違い、比較的冷静に装い思考を巡らせている様子。
「家に帰りたい……お母さんに会いたい……っ」
「もう……いや……どうしてこんな……っ」
一軍男子二人の仮説に呼応するかのように、隅に集まっていた数名の女子生徒たちが一斉に泣き出す。
「……大丈夫だから!先生がなんとかするから!」
その泣き叫ぶ生徒たちへの元へ、担任の荒川千秋は駆け寄る。
根拠などはないだろう。
だが、それでも口にせずにはいられない。
教師という立場が彼女に、それを言わせたのである。
一方で一軍の女子たちは泣く女性たちを見て、比較的に冷静さを取り戻しつつあった。
もっとも、それは心の内側ではなく表面を取り繕っているだけだと、悠真は見ていて分かる。
「うわ……あれ、絶対に整形してるでしょ。ていうか、ありえないってサイズ」
眉を顰めながら宝条鈴音は、巨大な女性の胸を見て呟いた。
「悠真菌が飛んできたら嫌ね……」
悠真の事を横目で見つつ、嫌悪の言葉を吐き捨てると麗華は、その場から移動するように鈴音へと近づく。
「まるで異文化の神って感じがしますわね、貴女。まあ、それでも?私の美貌には敵いませんことよ」
背筋を伸ばしたまま傲慢そうに両腕を組みながら姫香は、冷静に目の前の相手を見据えて口を開く。
そして一方で悠真は不思議と目の前の巨大な女性に意識が惹かれて、呼吸をする事すら忘れるように視線が釘付け状態であり、ただただその場に呆然と立ち尽くしていた。
「おい、てめぇ! ここは一体どこなんだ! 目的はなんだよ! 答えろッ!」
「お前は何者なんだ! 俺達をここに集めて何をさせる気なんだよ……っ!」
一軍男子たちも冷静な感情を取り戻しつつあるのか、樟葉と奏恵は一歩前に出ると強気な口調で問いを投げ掛ける。
だが巨大な女性は微笑を浮かべたままで、彼らの問いに直ぐに答える事はない。
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