表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/114

第21話 安息地へと到着

「……本当に、こいつらがダンジョンを攻略するのか……?」


 一部の生徒たちから漂う心が折れた雰囲気を察知しながら、ラヴィニアは低く呟くように口を開いた。

 その声音は明らかに嘲笑や怒りではない、純粋な困惑と懐疑が滲んでいる。


 鋼鉄の女の声であるにも関わらず、どこか疲れた母のような響きすら含まれていた。

 内臓を撒き散らし、脳漿を零して崩れたアンデッドの姿を見て、吐き気と恐怖で立ち竦む者、足を震わせて嗚咽する者。

 今もなお背中を丸め、壁伝いに歩く者さえいる始末だ。


「……やめろ、考えるな。考えるべきは信じること。疑念は己を蝕むのみ」


 ラヴィニアはは眉間に皺を寄せ、頭を小さく左右に振る。

 淡い灰色の髪がわずかに揺れ、頬を撫でた冷気に晒された。


 しかし、その直後だった。

 前方、通路の右手から低く唸るような音が聞える。


 ラヴィニアが反射的に手を剣に掛け、即座に停止の合図を背後へと出す。

 騎士たちは瞬時にそれを察知し通路の両側へと展開、クラスメイトたちを背後へと庇うように配置した。


 地を這うような唸りが次第に高まり、やがて姿を現したのは灰色の鱗に覆われた、三対の目を持つ異形の獣。


 その口腔からは糸を引いた唾液が滴り、既に一度戦闘を経験したばかりの少年少女たちの間には、またしても一部の恐怖と好奇の空気が走る。


 だがラヴィニアの指揮の下、騎士たちはその巨体に一斉に襲い掛かった。

 先陣の二人が両脇から斬撃を加え、残る者たちが突撃槍で脚部の腱を狙う。


 咆哮を上げて暴れる魔物も、その肉体が複数の切断面を刻まれるにつれ、次第に動きを鈍らせていく。

 最終的にはラヴィニア自らが、魔物の額へと一閃を加え、その巨体を沈黙させた。


 魔物の死体は瞬く間に塵と化し、残るのは戦いの余韻のみ。

 けれど、その後も道中では多数の魔物との遭遇が続いた。


 腕が四本ある骸骨兵、翼を持つ漆黒の蝙蝠、地面を這う触手状の粘体生物。

 いずれも凶悪な攻撃性を持ちながら騎士たちは、統率の取れた動きと鋭利な武器を用いて、いかなる損害も出す事無く撃破し続ける。


 一部のクラスメイトたちは、その都度騎士たちの背に隠れる形で守られ、ただ祈るように怯えながら進むだけだ。


 戦闘のたびに誰かが悲鳴を上げ、誰かが涙を流し、誰かが口を押えてしゃがみ込む。

 しかし、騎士たちはそれを責めず、ただ“守る”という行為のみに徹していた。


 ラヴィニアは戦いの度に剣を収め、振り返る事なく次の通路へと足を進める。


 それから暫くダンジョン内を進んでいると、もはや時間の感覚などは完全に失われ、悠真は殆ど無意識のまま足を進めている状態。


「ここの空気は……息苦しいな」


 誰ともなく呟いた男子生徒の言葉に、小さく頷く者が数名いた。

 今現在、悠真たちが歩く区域は湿度が高く、気温もやや高い蒸し暑い。


 濡れた石の匂いと時折、どこからか漂う腐敗臭が鼻を刺す度に、生徒たちの顔が曇る。

 そんな中、一人の騎士(ミリエル)が歩みを緩めて、列の横に並び口を開いた。


「……少し話でもしないか? どうやらキミたち、まるで右も左も分からないようだからね」


 その口調に苛立ちはなかったが、厳しさと教官のような温度が混じっていた。


「ここはファル=ルミナ大陸の東域、ヴァルゼリード王国の領土にあるダンジョンだ。まあ、こんな事を言っても異界から来たキミ達からすれば、すべてが不可解だろう。このダンジョンは階層ごとに地質も生態系もまるで変わる。この先を進めば今度は瘴気が強くなり、アンデッドだけでなく、呪毒を撒き散らす魔獣や、精神を狂わせる幻獣も多く出てくる。まあ、それでも第十階層の安息地までは、私たちが命懸けで護衛するから任せてくれ。しかし、その先はキミたち次第となる……ははっ」


 ミリエルの言葉の節々に滲む現実感と死の匂いに、その話を聞いていた一部の生徒たちは言葉を失う。

 数人の女子は顔を青ざめさせ、男子の何人かは自分の足音にまで過敏になっている。


「では、あの……この世界の文字とかって、どうやって読んだらいいんですか……? 僕達、日本語や簡単な英語しかできませんよ……? それに今こうして普通に会話できている事も不思議です……」


 一人の男子生徒が、勇気を振り絞ったように、手を挙げながら質問を投げた。


「簡単な事だよ。言語は”信託の自動翻訳”だ。私たちの世界では、異界から来る者の大半に、女神の加護が宿る。それがキミたちにもあるから、意思疎通が可能なのだ。なにも心配することはない」


 少年の質問に対して、ミリエルは目を細めながら詳細な事を話す。


「え……じゃあ、今話しているこの言葉も?」

「そうだ。だが書物や魔術式の読み書きだけは特別でな。別途訓練が必要になるが、そちらは追って教官から学んでくれ」


 そう言うとミリエルは軽く肩を竦めてから、視線を少年から外して正面を見据えた。


「それから、お前達の背に括りつけられている箱型の魔道具。それは映写石筐(えいしゃせっきょう)と呼ばれるものだ。内部に光晶石と記憶媒体が組み込まれており、己の意識で起動と停止ができる」


 低く艶のある声を出しながらヴァネッサは、人差し指をその箱へと差しながら説明を始める。

 彼女の言葉に生徒たちは、自身が背負う装置に目を向けた。


 黒漆仕上げの直方体で、背中のベルトに固定されている。

 側面にはレンズのような魔石が埋め込まれていた。


「視点は自動で追尾し、映像は女神の導管を通じて上界(ダンジョンの外)観測者(リスナー)たちに届けられる。配信はこの世界において名誉であり、商業的価値もある。視聴者数が増えれば、加護が強化されたり、後方支援の物資が届けられる事もある。キミたちは女神の預言でこの世界に招かれた。ならば、その姿を世界に晒し、生き抜く過程を示すことこそが使命であり、信仰でもある」


 ヴァネッサは重々しい口調で、配信機材の事やダンジョン配信の意義を語る。


 それを聞いて一部の生徒たちは言葉を飲むが、悠真も同様であり静かに背中の映写石筐を指で撫でた。

 ――それから第五階層を出て幾つもの魔物との遭遇も越え、気が付けば悠真たちは第十階層へと到達する。


 そのことに気づいたのは、遠くの岩壁に取り付けられた、巨大な魔光灯が放つ白銀の光を見た時だ。

 時間の感覚を奪われるほど暗く広がる、ダンジョンの道を彼らは歩き続けていたのである。


 五時間は歩いていたのではないか。

 騎士達が何度か小休憩を提案し、水分補給を促す度に悠真は、ようやく現実の時間が流れていたこと思い出した。


 気温は徐々に下がり、湿り気を帯びた空気は、乾燥し始めている。

 天井の光苔はすでに消え、代わりに装備された魔導灯が、一定の感覚で設置されていた。

 この変化は、ここが明らかに”管理されている”階層であることを示している。


「……ここが……第十階層……?」


 悠真の声が思わず漏れた。

 次の瞬間、彼の目に飛び込んできたのは、想像すらしていなかった光景である。

 それは、地下とは思えぬ壮麗な街だった。


 ダンジョンの岩壁を削り、天然のドーム状に広がる巨大な空間に築かれたそれは、まるで地上の王都を思わせるような都市空間である。


 直径にして優に、一キロメートルはあろうかという広大な空間に、無数の建物が並んでいた。

 天井は遥か高く、そこには複雑な魔導ラインが雲の巣のように張り巡らされている。


 青白い光を放つ魔導ラインは、まるで人工の星空のように輝き、空間全体を柔らかく照らし出していた。


 天井の中央部には疑似的な”太陽”を模した巨大な魔法陣が設置され、そこから降り注ぐ魔光が淡く温かく街を包み込んでいる。


 まるで本物の昼間のような明るさだ。

 街の外周部分には、高さ十メートルはあろうかという、石造りの城壁が築かれている。


 城壁の表面には無数の魔法陣が刻まれ、淡く光を放っていた。

 これが魔物の侵入を防ぐ結界なのだろう。


 城壁の各所には見張り塔が立ち、武装した衛兵たちが巡回している。

 この場所は――レーヴェルグ。


 幾多の冒険者たちが、危険な探索の合間に命を繋ぎ、傷を癒す為に集まる拠点だ。

 街の入り口には、巨大な門が聳え立つ。


 黒い鉄で作られた門は、表面に金色の装飾が施されており、その中央には剣と盾を交差させた紋章が刻まれている。

 門の両脇には衛兵が立ち、訪れる者を監視していた。


 そして一行が何事もなくラヴィニアを先頭に門を潜ると、目の前に広がるのは賑やかな大通りである。


 舗装された石畳のメインストリートは、幅が優に二十メートルはある。

 その両側には二階建て、三階建ての建物が立ち並び、一階部分には様々な店が軒を連ねていた。


 果物や干し肉を売る食料品店、ポーションや魔法薬を売る薬屋、武器や防具を売る武具店、魔法の道具を売る魔道具店――ありとあらゆる店が並んでいる。


 店主たちは客を呼び込む声が飛び交い、香辛料の匂い、焼かれる肉の音、笑い声、怒鳴り声が入り混じる。悠真の嗅覚と聴覚が、騒然とした人の熱気を一気に浴びた。


 だが、それ以上に目を引いたのは行き交う人々の姿である。

 人間、エルフ、獣人、ドワーフ、様々な種族が混ざり合い通りを歩いていた。

最後まで読んで頂きまして誠にありがとうございます。

宜しければ評価とブックマーク登録をお願い致します。

活動の励みとなり更新が維持出来ます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ