第12話 与えられるカードゲーム系の能力
(あれが俺と同じ……いや……陰キャに与えられていい能力なのか……?)
唐突に恭一が、かっこいい職業や装備を能力を与えられた事に、悠真は全身が痺れるような衝撃を受け、思わず心中にて独り言を吐く。
殆ど自分と同じ世界の住民だと思っていた者が、全く違う次元へと進んでしまったような感覚。
置いていかれたと思える妙な恐怖感。焦りや嫉妬に近いものが、悠真の心の奥で疼き始めた。
「……さて、最後はお前じゃが……」
やや間延びした調子で宙に溶けそうな声を出して、フォルトゥナは未だに一人だけ制服姿の悠真へと語り掛ける。
「お主、こんな状況下で一人だけ、ずっと冷静じゃな。こういう事には慣れているのか?ははっ、そんなわけないか。恐怖と困惑で感情が麻痺しているだけじゃろう。まあいい。そういう人間も中には居るじゃろうて」
軽く肩を竦めるとフォルトゥナは、徐に人差し指を立たせて彼の眼前へと向ける。
しかし、直後に静止するように動きを止めて、彼女は目を細めた。
「……ほう?」
何かに気がついたのかフォルトゥナは、興味を抱いたように唇を吊り上げる。
「どうやらお主は、この場に居る他の者と比較しても、随分と特殊な者のようじゃな。それに、かーどげーむ?とやらが好きときた。それは自分の命よりも大事とは……はははっ!まっこと変な人間じゃのう!」
視線を合わせただけで相手の情報を得られるのか、フォルトゥナはカードゲームという特徴的な言葉を口にすると爆笑していたが、どこかその笑いには冷たさと鋭さが混じるようだ。
「よし、お主には特別にそのかーどげーむとやらが絡んだ能力と職業を与えてしんぜよう。我に感謝するのじゃぞ。人から疎まれし外れ者よ」
そう言い放つと共に空間全体に振動が走り、フォルトゥナの指先から発せられた虹色の光が、悠真の身体を包み込んだ。
熱くも冷たくもないただの眩い光の中、彼の姿は次第に変化していく。
まず足元から黒革のブーツが現れ、膝下までを覆う。
硬質な革で出来たブーツの表面には、銀色の金属プレートが要所に配置され、縁には紫色のラインが走っている。
ソールは厚く頑丈で、底面には複雑な魔法陣が刻まれていた。
歩く度に淡く光を放ち、動き易さと防御を兼ね備えた設計である。
次いで下半身を覆う黒いパンツが形成された。
伸縮性のある素材でありながら、太腿部分には薄い銀色の装甲プレートが埋め込まれている。
膝の部分にも可動式の銀のプレートがあり動きを妨げずに、それでいて防御力を保つ完璧なバランスだ。
腰には幅広のベルトが巻かれる。
黒革のベルトには複数のカードホルダーが装着され、それぞれが銀色の金属で固定されていた。
ベルトのバックルは大きく、銀色の金属に紫の宝石が埋め込まれている。
宝石は微かに脈打つように光り、魔力を帯びていることで、一目で分かるようだ。
そして腰の左側には、特別なホルスターが斜めに装着される――カードデッキを収める為の、まるで剣士の鞘のような形状をしたホルスターである。
銀と黒革で作られ表面には、精緻な彫刻が施されていた。
ホルスターの中央には紫の宝石が埋め込まれ、カードを収めると淡く光る仕組みになっている。
上半身には黒を基調とした戦闘服が現れる。
胸部から腹部にかけては、フィット感のある黒い生地が覆い、動きやすさと重視した設計だ。
その上から銀色の胸当てが装着される。
胸当ては薄く軽量でありながら、魔法攻撃にも耐えられる特殊な金属で出来ていた。
中央には大きな銀のエンブレムが刻まれている――それはカードの裏面を模したような紋章で、そこから紫と青の光が脈動している。
エンブレムの周囲には複雑な魔法陣が彫り込まれ悠真の心臓の鼓動に合わせて淡く明滅した。
腰には小さな銀色の肩当てが装着されそこから布地が腕を覆う。
布地には紫色の紋様が編み込まれ、魔力を増幅する効果があるようだ。
肘から先には黒革のガントレットが装着され、手の甲には銀色のプレートが埋め込まれている。
指先は露出しており、カードを扱いやすいように設計されていた。
指の関節部分には、細い銀のリングが巻かれ、指を動かす度に淡く光る。
そして最も印象的なのが、制服のジャケットが変化した闇色のロングコートだ。
膝下まで達する長さのコートは深い黒色で、まるで夜の闇を纏うかのようである。
表面は滑らかで光沢があり、裏地には紫と青のグラデーションが施されていた。
コートが靡く度に、その裏地が覗き、まるで夜空に星が瞬くかのような美しさを見せる。
コートの襟は高く立ち上がり、首元を守るように設計されていた。
襟の内側には銀色の刺繍が施され、そこには複雑な魔法陣の紋様が描かれている。
コートの肩部分には銀色の装飾が施され、そこから細い鎖が垂れ下がった。
鎖の先端には小さな紫の宝石がついており、揺れる度に涼やかな音を立てる。
コートの裾には銀色の刺繍が連なり、そこにはカードのスート――剣、杯、棒、硬貨――を模した紋様が描かれていた。
背中の中央には大きな銀のエンブレムが刺繍されており、それは翼を広げた龍がカードを掴んでいる姿を表している。
まるで騎士の紋章のようで、威厳と神秘性を兼ね備えていた。
袖口には銀色のカフスがついており、そこにも紫の宝石が埋め込まれている。
コート全体から、どこか近未来的でありながらも、騎士の鎧のような厳粛さが感じられた。
やがて――虹色の光が収束してゆく。
すると、そこに立っていたのは、もはや東雲悠真ではなかった。
いや、悠真ではあるが、まるで別人のように変貌していたのである。
小柄な体躯は変わらないが、黒と銀の戦闘服が彼に威厳を与えていた。
闇色のロングコートが風に靡き、その裏地の紫と青が妖しく光る。
腰に備えられたカードホルスターが騎士の剣のように佇んでいた。
だらしなかった黒髪は魔力によって整えられたかのように、流れ前髪が目元に掛かる様はかえって神秘的な雰囲気を醸し出している。
死んだ魚のようだった濃い茶色の瞳は、今僅かに輝きを取り戻していた。
まるで異界の騎士――あるいは黒衣の魔導士のような姿である。
そして彼の手元に使い慣れたカードの束が現れた。
だが、それはただの紙ではない。
厚みと輝きがあり、一枚一枚が淡い光を放つ。
まるで魔力が流れが、その中に脈打つかのようだ。
カードの裏面には銀色の紋様が刻まれ表面のイラストは、まるで生きているかのように動いて見えた。
「職業名――デュエリスト。武器――魔導カード。領域能力――"決闘結界"を授けるのじゃ」
フォルトゥナは厳かな口調で宣言し続けて能力の詳細を語り始める。
「この能力は、相手との一対一の戦闘時に”デュエル・スタンドアップ”と叫ぶ事で発動する。結界内においてはすべてかターン制となり、交互に攻撃と戦略を展開する。これが”デュエル・フィールド”じゃ」
彼女が軽く右手を振ると、空間が変容する幻影が浮かび上がった。
その幻影の中ではデュエル・フィールドの中で二人の戦士が対峙し、各ターンごとに攻撃や召喚が行われている様子が映し出される。
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