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「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第六章

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第10話 ダンジョン・クリア

「悠真……! 大丈夫ですか……? 怪我は……」


 急いでシャルルが駆け寄る。

 長く細い耳が逆立ち、翠色の瞳が彼の様子を確認した。


「ああ、大丈夫だ。問題ない」


 軽く肩を竦めて悠真は返した。


「あの者、許せませぬ。今すぐ、成敗して差し上げましょうか?」


 低くホウキが言い切る。

 切れ長の黒い瞳が、樟葉へと向けられていた。

 太刀の柄に手が添えられている。


「今すぐ、ぶん殴っていいか?」


 燃えるような赤いツインテールを揺らしながら、シュンリンが硬質な爪の拳を握り締めた。

 赤金色の大きな瞳が、樟葉を睨みつけている。


「私も異議なしですわ」


 冷たい声でアイリスが言い添えた。

 金色の狐耳が逆立ち、レイピアの柄に指が掛かる。


「排除する準備はできている」


 短くアウラが告げた。猫耳が立ち、銃が構えられようとしている。

 全員が紛れもなく本気だった。


「やめろ。あんな奴らは殴る価値もない。相手にするだけ無駄だ」


 手を上げて悠真は、血気盛んな仲間達を制する。

 そして全員が止まった。


「……悠真様」

「俺たちには、やるべきことがある。次のダンジョンだ。今はそっちに集中しようぜ、な?」


 人差し指を立たせて彼は、何処か得意気な顔を見せる。

 そしてホウキが太刀の柄から手を離す。


 シュンリンが拳を解いた。

 アイリスがレイピアから指を外す


 アウラが銃を下ろした。

 シャルルが長く細い耳を揺らしながら、深く息を吐く。


 全員が、渋々ながらも頷いた。

 樟葉は、その様子を遠くから見ている。


 何か言いかけたが、悠真の仲間たちの視線に射抜かれて、口を閉じた。

 そしてしばらくの沈黙の後、シャルルが唐突に声を上げる。


「ねえ、悠真くん」

「なんだ?」

「次のダンジョンも、一緒に行くんだよね?」

「……ああ、そういうことになるな」

「それって……また皆と一緒にいられるってこと……?」


 シャルルの長く細い耳が立ち、翠色の瞳が輝き始めた。

 悠真は一瞬、言葉に詰まる。


 女神の言葉が本当なら、全てのダンジョンをクリアするまで帰れない。

 それはつまり、まだしばらく、この世界でこの仲間たちと共に戦い続けるということだ。


 それは実に複雑である。

 日本に帰れないことへの怒りは確かにあった。しかし同時に。


「……まあ、そういうことだな」

「やったあ!」


 彼が答えた瞬間、シャルルが両手を胸の前で組んで飛び上がった。


「……悠真様と、まだ共に戦えるということにございますな」


 ホウキが静かに、しかし確かな喜びを滲ませながら口にする。

 切れ長の黒い瞳が、柔らかく細まった。


「次のダンジョンも、私たちを頼りなさいな」


 金色の狐耳を立てながらアイリスは言う。

 蒼い瞳に珍しく弾むような光が宿る。


「……任務継続だな。悪くない」


 アウラが短く言い、ゆったりと猫耳を揺らした。


「次はもっと、やばい敵が出てくるかもだろ? 楽しみじゃねぇか!」


 燃えるような赤いツインテールを揺らしながら、シュンリンが赤金色の大きな瞳を輝かせる。

 五人の笑顔が、悠真に向けられていた。


 向日葵のような笑顔である。

 その笑顔を見ながら彼は、胸の奥が静かに洗われていくのを感じた。

 前髪を掻きながら、口元に苦笑が浮かぶ。


「……まったく、仕方ないな」


 それだけ言うと、悠真は前を向いた。

 そして彼の呟きは、静かに階層内に漂う。

 だがその背後では、一軍の男女たちが依然として混乱の渦中にいた。


「嘘だろ……嘘だろ……俺、本当に帰れないのか……」


 壁に背を預け樟葉が、その場に崩れ落ちる。

 銀髪が乱れ、深紅の瞳から光が消えていた。

 これまで見たことのない、完全に打ちひしがれた表情である。


「やだやだやだやだ……帰りたい……帰りたいよ……!」


 その場で麗華が泣きじゃくっていた。

 水色のツインテールが乱れ、丸い水色の瞳から涙が止まらない。


「こんなの……聞いてない……最初にそう言えよ……!」


 奏恵が壁を何度も殴りつけていた。


「糞女神……絶対に許さない……絶対に……!」


 地面に膝をつき、ワインレッドの髪を振り乱しながら、鈴音は呪詛のように言葉を繰り返している。


「わたくしは……一体どうすれば……」


 黒紫の髪を両手で掴み、姫香は場に立ち尽くしていた。

 クラスメイトたちも、泣く者、暴れる者、放心する者と、それぞれが絶望の色を全身で表している。


 その光景を横目に見ながら、悠真は静かに息を吐いた。

 女神への怒りは、確かにある。


 約束を破られた事実は、彼にとっても腹立たしいものだった。

 最初に言えと、そうは思う。

 だが、悠真は仲間たちの顔を見た。


 シャルルが翠色の瞳を輝かせ、長く細い耳を立てている。

 ホウキが切れ長の黒い瞳を柔らかく細め、黒いポニーテールを揺らしていた。


 アウラが猫耳を揺らし、青灰色の瞳で悠真を見ている。

 アイリスが金色の狐耳を立て、蒼い瞳に期待の光を宿していた。

 

 シュンリンが燃えるような赤いツインテールを揺らし、赤金色の大きな瞳で悠真を見つめている。

 全員が嬉しそうだ。

 その笑顔を見ていると、胸の奥に積もっていた怒りが、不思議と薄れてゆく。


「さぁてと、このダンジョンはクリアした事だし、いよいよ地上ってやつに出てみるか!」


 外套を正しながら彼は口角を上げると、それだけ告げて歩き出す。

 すると仲間達も踵を返し、ボス部屋の出口へと歩み始めた。

 そして、ダンジョンの外へと続く長い通路を抜けた先に。光があった。


「……眩しい」


 思わず悠真は目を細める。

 この異世界に転移させられてから、ずっとダンジョンの中での生活を強いられていた。

 女神の気まぐれでダンジョンに放り込まれ、そのまま攻略を続けてきたのである。


 それ故に外の空気を吸うのは、初めての事だ。

 鼻腔に草と土の匂いが届く。


 風が頬を撫でた。空が広い。雲が流れている。

 太陽が、惜しみなく光を降り注いでいた。


「……空だ。まさか当たり前のものが、こんなにも新鮮に見えるとはな……」


 その場で立ち止まり、悠真は空を仰ぐ。


「悠真くん、泣きそうな顔してるよ?」


 くすくすと笑いながらシャルルが言う。


「泣いてない……」

「目が潤んでますわよ」


 アイリスが続けた。


「……泣いてないと言ってる」


 そして次の瞬間、悠真は気づいた。

 ダンジョンの入口の前に、人々が集結していたのである。


 いや、集まっているどころではなかった。

 見渡す限りの人波が、ダンジョンの外に広がる。


 冒険者、商人、一般市民、様々な種族の男女が、一点を見つめて歓声を上げていた。

 そして六人の姿が見えた瞬間、その歓声が頂点に達する。


「クリアしたぞ——!」

「英雄たちが帰ってきた——!」

「悠真くんのパーティーだ——!」


 大地が揺れるような大歓声だ。


「……なんだ、これは……」


 呆気に取られて悠真は完全に固まる。


「おそらく、配信を見ていた人たちが集まってきたのでしょう」


 静かにホウキが言葉を口にした。

 切れ長の黒い瞳が、人波を穏やかに見渡している。


「これだけの人数が……」


 アウラが呟く。猫耳が動き、青灰色の瞳が計算するように群衆を見ていた。


『出てきた——!』

『ダンジョンクリアおめでとう——!』

『英雄誕生の瞬間を見た……』

『俺も現地にいたかった……!』

『チャンネル登録者数……億に到達してる……!?』


 配信端末のコメントが爆発する。

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