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「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第六章

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第9話 当たり散らす一軍の男子と女子たち

「盛り上がっているところ残念じゃが、これは一区切りに過ぎんぞ」


 気怠げな、しかし確かな重みを持つ声が空間に響く。


「なんせこの世界には、この他にも数多くのダンジョンが存在しておるからな。お前達には今後も我の暇つぶしとして、各地のダンジョン攻略を頑張ってもらうぞ」


 一拍置いて、フォルトゥナは口元を歪めた。


「ははっ、お主たちの日本帰還への道のりは、まだまだ遠いことよ」


 それだけ言うと、女神は虹色の魔法陣の中へと、優雅に踏み込んでゆく。

 やがて光が収束し、消えた。


 静寂。

 しばらくの間、誰も動かなかった。

 やがて、あちこちから声が漏れ始める。


「……あれが女神様……」

「本当にいたんだな……女神が……」

「信じられない……あの方が……」


 野次馬たちの声が、感嘆と畏敬に満ちて響く。

 悠真の仲間たちも、それぞれが女神の残した空気の余韻に浸っていた。


「……美しかった。本当に女神様って感じで……」


 ゆったりと長く細い耳を揺らしながら、シャルルが翠色の瞳を輝かせている。


「確かに圧倒的な存在感でしたな」


 静かに言いかけて、ホウキはふと口を閉じた。

 切れ長の黒い瞳が、わずかに細まる。


「……いや、待ってくだされ」

「どうした、ホウキ?」

「悠真様から以前、お聞きした話を思い出しました。あの方こそが……悠真様を含む異世界の方々を、一方的にこの世界へと送り込んだ張本人では……」


 彼女の声が、静かだが確かな温度を帯びた。

 沈黙。


「……そういえば悠真から聞きましたわ。ある日突然、何の断りもなく異世界に飛ばされたと」


 アイリスが金色の狐耳を、ぴくりと動かす。


「それが、あの女神の仕業……ということか。確かに暇つぶし……と、言っていたな。さっきも」


 アウラが低く言い切った。猫耳が逆立つ。


「お主たちの日本帰還への道のりは遠い……とも言っておりました。つまり……悠真様たちをこの世界に呼び込んで、ダンジョン攻略をさせているのは、全てあの方の気まぐれということに」


 静かにホウキが続けた。


「……なんですの、それ。じゃぁ……悠真が何度も死にかけたのは……女神様の暇つぶしのため……?」


 アイリスの声が、珍しく冷たくなる。


「そういうことになりますな」


 静かだが確かな怒りを込めてホウキが答えた。


「随分と……身勝手な話ですわね」


 震える右手をアイリスが静かに握り締める。


「まあ……確かに見た目は素敵だったけど……やってることは、かなり問題ありだよね」


 長く細い耳を伏せながら、シャルルが翠色の瞳を細めた。


「ああ、全くもって同意だ」

「ほんとそれ」


 アウラとシュンリンが、彼女の言葉に対して大きく頷く。


「まあ……そういう奴なんだよ、あの女神は」


 仲間たちのやり取りを聞きながら、悠真は口元に苦笑を浮かべた。


「悠真様は怒らないのですか?」


 ホウキが疑問を口にする。


「怒ってるよ。ただ……あの女神のせいで、お前たちと出会えたのも事実だからな」


 そう言いながら彼は、仲間たちを見渡した。

 沈黙が流れてゆく。

 そして、その沈黙を最初に破ったのはシャルルであり、彼女は自分の口元に手を添えながら笑った。


「……確かに。それは認めますわ」

「私も……同様にございます」


 アイリスとホウキが静かに頷く。

 一方で一軍の男女たちは依然として、その場で硬直していた。


 女神の言葉の意味を、まだ処理しきれていないようである。


『まだ終わりじゃないのか……!』

『でも悠真くんのパーティーなら大丈夫だろ』

『次のダンジョンも配信してくれ』

『一生ついていく悠真くん』

『伝説の始まりだったんだな……今日は』


 コメントが再び流れ始めた。


「さて……どうやら次のダンジョンが待ってるらしいぞ」


 悠真の言葉に、全員が揃って溜息をつく。

 そして全員が同時に笑みを零す。

 しかし、その笑いが収まる前に、場の空気が変化した。


 一軍の男女たちが、魂が抜けたように立ち尽くしている。

 まだ女神の言葉が頭の中で反響しているのか、誰も動かない。


 誰も喋らない。虚ろな瞳が、虚空を見ていた。

 そして次の瞬間、堰が切れる。


「……は?」


 最初に樟葉が声を漏らした。

 銀髪が乱れ、深紅の瞳が揺れている。


「話が違うじゃん……」


 奏恵が掠れた声で呟いた。

 蜂蜜色の瞳が焦点を失っている。


「ふっざけんな! 死ね糞女神! おら、出て来い!」


 再び樟葉が叫んだ。その声が、階層内全体に響き渡る。


「ちゃんと説明しろ! 後出しでそんな事を言うのは卑怯だろうがよ! 俺たちが何のためにここまで来たと思ってんだ!」


 奏恵が怒鳴り散らす。

 普段の穏やかな表情が完全に消え、蜂蜜色の瞳が怒りで燃えていた。


「意味わかんない……私、帰りたい……!ちゃんと帰れるって言ったじゃない……!」


 その場に鈴音が座り込む。

 ワインレッドの髪が乱れ、赤金色の瞳から涙が溢れている。


「……無理。無理無理無理。帰りたい……パパに会いたい……っ」


 麗華が頭を抱えた。水色のツインテールが乱れ、丸い水色の瞳から涙が止まらない。


「くっ……あの女神様、約束を破りましたわね……。わたくし、信じられませんわ! いや、信じたくありませんの!」


 笑いともつかない声を上げながら、その場で姫香がくずおれた。

 黒紫の髪が乱れ、深い赤紫の瞳が現実を拒絶するように揺れている。


 周囲のクラスメイトたちも、次々に声を上げた。

 怒声、泣き声、叫び声が入り混じり、階層内が混沌に包まれる。


 一部の者たちは行き場のない怒りを発散させるように、壁や床に魔法を放ち始めた。

 石材が砕け、焦げた匂いが立ち込める。


(……こればかりは、流石に同情もんだな)


 その光景を悠真は、黙って見ていた。

 女神は最初、このダンジョンをクリアすれば、日本に帰してやると言った。


 その言葉を信じて、全員がここまで必死に戦ってきた。

 なのに今になって、他のダンジョンもクリアしなければ帰れないと言い放ち消えた。

 約束の反故。後出しの条件変更。


 彼の胸の奥が、静かにざわついた。

 だが、その時である。


「……」


 一つの声が、頭の中に直接届いた。

 外には聞こえない。

 悠真だけに、そして周囲の日本人だけに届く声。


『真に日本に帰還できる者は、全ダンジョンの制覇者のみ』


 それは紛れも女神フォルトゥナの声だ。

 気怠げで、どこか愉しげな響きを持つその声が、それだけ告げて消える。

 それを聞いた瞬間、一軍の男女たちが完全に沸騰した。


「ふざけんなあああああ!」


 壁に拳を叩きつける樟葉。


「姑息すぎるだろ! そういう事は最初に言えよ……!」


 天井に向けて怒鳴り散らす奏恵。


「死ね! 本当に死ね! あの糞女神!!」


 その場で地団太を踏みながら叫ぶ鈴音。


「訴えてやる……! 訴えるからね……! どこに訴えればいいか知らないけど!」


 泣きながら麗華は叫んでいた。


「わたくし、女神様を信じておりましたのに……なんてことですの……!」


 憤怒に顔を歪めながら姫香が立ち上がる。

 怒声と魔法の爆発音が入り混じる中、その騒乱の向こうから、一つの荒々しい気配が近づく。


 しかし、それに気づいた時には、既に悠真の胸倉は掴まれていた。

 そう、それは樟葉である。

 深紅の瞳が、怒りと逆恨みで燃えていた。


「お前がちゃんと俺達に協力していれば、こんなことにならなかった!」

「……」

「お前が現地人なんかと組んで勝手にボスを倒したから、あの女神が嫌がらせで条件を変えてきたんだろうが! 俺達と一緒にやっていれば、ちゃんと帰れたはずだったんだよ! お前のせいだ! 全部、お前のせいだ……!」


 勢いよく彼の口から唾が飛び声が割れる。

 その怒声を静かに受け止め悠真は口を開いた。


「……また他人のせいにするのか」


 それは限りなく冷めた声である。

 怒りでも憐れみでもない、ただ乾いた、確認のような言葉。


「お前は本当に、変わらないな」


 羽虫を払うように、彼は樟葉の手を払い除ける。

 乱れた外套の前を静かに整えて、悠真は仲間たちの元へと歩いた。

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