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「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第六章

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第8話 女神フォルトゥナ、再び現る

「ゆ……悠真様ああああ……!」


 名前が叫びになる。


「悠真くんぅぅぅ……!」


 シャルルも声を上げた。


「悠真ああああ……っ!!」


 アウラが、珍しく大きな声を出す。


「悠真……っ、このっ……! 死ぬんじゃありませんわああああ……!」


 アイリスが叫びながら飛びつく。


「悠真ぁぁぁあ……! このバカああああ……!」


 シュンリンが最後に叫び、そのまま勢いをつけて突進してきた。

 五人が同時に悠真に抱きつく。


 衝撃で彼が後ろに倒れそうになるが、そのまま全員で石畳に倒れ込んだ。

 誰かの涙が悠真の頬に落ちる。誰かの手が背中に回る。誰かが肩に顔を埋める。


「ぐっ……お、おい、重い……。さすがに全員同時は……」

「黙りなさいな」


 アイリスが押しつけるように言い放つ。

 金色の狐耳が、悠真の頬をくすぐる。


「もう少し……このまま」


 ホウキが静かに呟く。切れ長の黒い瞳を閉じ、彼の肩に頭を預けている。

 悠真は抵抗を諦めた。

 五人の温もりが、全身を包んでいる。


『全員生きてる……良かった……』

『ダンジョンクリア……本当に……』

『ずっと応援してきた……報われた』

『悠真くんのパーティー最高すぎる』

『泣いてる、声出して泣いてる』

『一生ついていく悠真くん』

『これが本物のクリアだよ……』


 コメントが流れていた。

 徐に悠真は天井を見上げる。

 砕けた石材の隙間から、僅かな光が差し込んでいた。


「……クリアしたな」


 誰に言うでもなく彼は呟く。


「ああ……」

「……うん」

「……ようやく」

「当然ですわ……」

「最高だったぜ……!」


 五つの声が重なるように、その場に木霊する。

 そして悠真は目を閉じる。

 胸の奥で静かに、何かが溢れてくるのを感じた。


 実に長い旅だった。何度も死にかけた。何度も仲間を失いそうになった。

 それでも、ここまで来た。全員で。


「本当に……ありがとうな、みんな」


 その彼の言葉に、五人は何も答えなかった。

 ただ、それぞれが少しだけ強く、悠真に寄り添う。

 やがて、配信端末のコメントが再び激しく流れ始める。


『うおおおおお!』

『全員生還……!!クリアしたぞ……!』

『泣いた、声出して泣いた』

『これが伝説ってやつか……!』

『悠真くんのパーティーが歴史を作った……』

『一生忘れない、この配信……』

『視聴者数が桁違いになってる……!』


 コメントが文字通り画面を埋め尽くしていた。

 そして、ボス部屋の外からも音が届き始めた。


 固く閉ざされていた扉が開いたのである。

 ダンジョンクリアの認定と同時に、外部との遮断が解除されたのだろう。


 廊下の向こうから、複数の足音と声が近づいてくる。

 その直前、シャルルがホウキの傍に膝をついていた。


「ホウキ、膝を見せてください」

「私は……大丈夫にございます……」

「噓だね。大丈夫じゃないのは、見てれば分かるよ」


 シャルルは有無を言わさず、彼女の膝に両手をそっと当てた。

 ゆったりと長く細い耳が揺れ、翠色の瞳が集中により細まる。


「豊穣の賜り物──自然癒香」


 柔らかな緑の光が、彼女の掌からホウキの膝へと流れ込んだ。

 温かく、穏やかな光が傷口を包み込み、損傷した組織を丁寧に修復していく。


「……あっ、痛みが……消えていく……」


 ホウキが小さく声を漏らした。切れ長の黒い瞳が、膝に向けられる。


「しばらく、そのままでいてください」


 そう言うと、シャルルの両手から放たれていた光が収まった。

 やがてホウキは、ゆっくりと立ち上がる。


 膝に体重をかけ、数歩歩く。

 先程までの損傷が嘘のように、足取りが戻っていた。


「……見事な腕前にございます、シャルル」

「いつも悠真くんが無茶をするから、僕も腕を上げざるを得なかったんだよ」


 苦笑しながらシャルルが立ち上がる。

 そのタイミングで、廊下から声が響いてきた。


「なんだこれは……本当にクリアしたのか……あのサキュバスクイーンを……」


 最初に顔を覗かせたのは、見知らぬ冒険者である。

 ゴールドランクと思しき装備を纏う中年の男が、ボス部屋の惨状を見渡して息を呑む。


 次々と野次馬が集まってきた。

 冒険者、配信者、安息地から駆けつけてきた者たち。

 その全員が倒れた床の紋様と、六人の姿を交互に見渡している。


「なんだ、このカリスマ……」


 誰かが呟いた。


「あのパーティーが……ダンジョン最深部をクリアしたのか……」

「しかも配信しながら……信じられない……」


 感嘆の声が廊下から、次々と流れ込んでくる。

 ――――その時だった。


 部屋の中央に、虹色の光が出現する。

 地から湧き上がるように、複雑な幾何学模様を持つ魔法陣が広がった。


 それは単なる魔法の光ではない。

 温かく、神聖で、見る者の魂に直接語りかけるような輝きだった。

 

 その光を見て悠真は立ち上がる。仲間たちも、それぞれ身を起こす。

 魔法陣が完全に展開した瞬間、それは正式な宣言のように感じられた。


 このダンジョンのラスボスを撃破した事を認める。

 そう告げているかのような、荘厳な光だった。


「……これは」


 低くアウラが呟いた。猫耳が前方へと向く。


「ダンジョンクリアの認定……ということでしょうか?」


 静かにホウキが口を開く。

 ――その時、悠真たちの後方から騒々しい足音が響いた。


「俺達の出番だぜ!」


 それは嫌というほど聞き覚えのある声。

 そう、樟葉が我が物顔でボス部屋に乗り込んできた。


 銀髪が揺れ、深紅の瞳が輝いている。

 その後に続くように、奏恵、鈴音、麗華、姫香。

 そしてクラスメイトたちや、担任までもが次々と入ってきた。


「これで日本に帰れるぞ! うおおおお! 俺達はついにやり遂げたんだああああ!」


 両腕を天に向けて樟葉が叫ぶ。


「そうよ! 私たちが頑張ってきたから、こうなったんだわ!」


 興奮した声を鈴音が上げる。


「帰れる……帰れるぞ……!」


 目を潤ませながら、奏恵が周囲を見回す。

 まるで自分たちこそが、サキュバスクイーンを倒したかのような振る舞いだ。


 汗一つかかず、血も流さず、外で待機していた者たちが、勝利者のように振る舞っている。

 悠真は一瞬、何か言ってやろうかと思った。


 あれだけの戦いを、ここにいなかった連中に横取りされるのは、癪だ。

 だが次の瞬間、部屋全体の空気が変化する。


 虹色の魔法陣が、さらに強く輝いた。

 そしてその中から、一つの存在が現れる。


「やれやれ、騒がしいことじゃな」


 白銀の髪が光を纏いながら流れ、整いすぎた顔立ちに、気怠げな微笑が浮かんでいた。

 その存在が足を踏み出した瞬間、場の空気が一変する。

 その存在は紛れもなく、女神フォルトゥナだ。


「……っ」


 樟葉が固まる。一軍の男女や、クラスメイトたちも、全員が軒並み声を失う。

 横から覗いていた野次馬たちも、一斉に息を呑んだ。


 誰も言葉を発しない。言葉が出ない。

 目の前の存在が何者であるかを、全員が本能的に理解していた。


 配信のコメントが止まる。

 数秒の沈黙の後、恐る恐るコメントが流れ始めた。


『女神……?』

『あれが……女神様……?』

『本物の女神がいる……』

『神様が本当にいたのか……』


 ボス部屋全体が、神々しい静寂に包まれる。

 ゆっくりとフォルトゥナは視線を動かし、樟葉へと向けた。

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