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「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第六章

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第7話 死者蘇生

「……待って」


 シャルルが顔を上げる。

 何かに気づいたように、翠色の瞳が一点を見据える。


「まだ……まだ終わってない……!」


 震える指先が、とある一点を指した。

 全員の視線が、そこへ自然と集まる。


 悠真が戦闘の冒頭、手札事故の際に静かに伏せた一枚のカード。

 誰も気にする余裕がなかったそのカードが、今も微かな光を放ち続けていた。


「ま……まさか、悠真様は……」


 ホウキが息を呑む。


「そんな……」


 アイリスが、蒼い瞳を見開いた。


「手札事故を起こしながらも、敢えてあのカードを残した……? つまり最初から……自分が死ぬことを想定して……?」


 アウラの声が、低く震える。

 全員が悠真の死体の周りに集まった。


 誰も言葉を発しない。

 ただ、そのカードを見つめている。


 次の瞬間、カードが輝いた。

 これまでの青白い光とは異なる、金色の輝きである。


 暖かく、力強く、まるで命そのものが凝縮されたような光が、階層内を照らす。

 そして場に伏せられていたカードがオープンする。


 そこに描かれていたのは、天使のような存在が死者の手を取り、光の中へと引き上げる姿だった。

 カードの名称が、空中に浮かび上がる。

 ──リターン()オブ()()ソウル()


「……やっぱり、悠真くんは……分かってたんだ。自分が死ぬかもしれないって……だから事前に……」


 シャルルが声を震わせた。

 そしてオープンされたカードは静かに消えてゆく。


 だが同時に悠真の身体に変化が起きた。

 まず傷口が塞がり始める。


 漆黒の魔法が貫いた痕が、ゆっくりと、しかし確実に修復されていく。

 皮膚が再生し、骨が戻り、失われた血が補われていく。

 全身を蝕んでいた死の気配が薄れていく。


「……悠真様……聞こえますか……!」


 ホウキが前に膝をついた。

 切れ長の黒い瞳が、悠真の顔を凝視している。


「悠真くん……! 戻ってきて……!」


 シャルルが彼の手を両手で握り締めた。

 長く細い耳が立ち、翠色の瞳が涙を流しながらも、希望の光を宿している。


「おい……悠真……! 聞こえてるか……!」


 シュンリンが悠真の肩を揺さぶった。

 燃えるような赤いツインテールが乱れ、赤金色の大きな瞳が懸命に彼を見つめている。


「目を開けなさいな……! まだ終わっていませんわ……! ダンジョンクリアの報告を、みんなで一緒にしなければなりませんの……!」


 アイリスが彼の傍に膝をついた。

 蒼い瞳が涙で溢れ、金色の狐耳が前方へ向いている。


「悠真、聞こえるなら返事をしろ。命令だ」


 アウラが短く、しかし声を震わせながら言った。

 猫耳が逆立ち、青灰色の瞳が悠真の顔を見つめている。


『カードが光った……!』

『死者蘇生……?』

『悠真くんが復活するの……?』

『頼む頼む頼む』

『傷が治ってる……!』

『起きてくれ悠真くん……!』

『視聴者全員が願ってる、起きてくれ……!』

『ずっと応援してた、だから……起きてくれ……!』


 コメントが爆発した。

 悠真の傷が、完全に塞がった。


 死の気配が、消える。

 代わりに、胸が静かに上下し始めた。


「呼吸してる……。呼吸してるよ……! 悠真くんが!」


 シャルルが息を呑む。

 五人全員が固唾を飲んで、悠真の顔を見つめた。


 傷の一つも残さず修復された顔が、静かに眠っているように見える。

 彼の前髪が、微かな呼吸に揺れた。


 そして茶色の瞳が、ゆっくりと開き始める。

 焦点が合わない。だが天井は見えた。

 石材が砕けた跡がある。


(……どこだ、ここは……)


 次の瞬間、悠真の全身に感覚が鮮明に戻る。

 痛みではなかった。

 むしろ、何も痛くない。傷がない。


 あれほど全身を蝕んでいた死の感覚が、跡形もなく消えていた。

 そして、記憶が戻る。


 漆黒の魔法。ホウキを庇い、両手を広げて。

 あの瞬間の、世界が終わるような感覚。


「し……死にたくねえええ!」


 勢いよく彼は起き上がった。それは心からの叫びである。

 本能が、肉体が、魂が、生への渇望を絞り出した叫びだった。


「悠真くん……!」


 シャルルの声が、真っ先に届く。


「悠真様……!」


 続いてホウキの声。


「悠真……!」


 続いてアウラの声。


「悠真……!」


 続いてアイリスの声。


「悠真!」


 最後にシュンリンの声。

 五つの声が、同時に悠真の名前を呼んだ。


 その声を聞いた瞬間、彼は混乱していた頭が、急速に冷静さを取り戻す。

 冷静に周囲を見渡した。

 砕けた石畳。亀裂の走った壁。


 消えたサキュバスクイーンの残滓。

 そして、涙まみれの顔で自分を見つめる五人の仲間たち。


『起きた……!』

『悠真くんが……!』

『生きてる……本当に生きてる……!』

『泣いた、声出して泣いた』

『悠真くんおかえり……!』

『サキュバスクイーンも倒された……ということは……本当にクリアしたのか……!?』

『全部終わったのか……全部……』


 配信端末の光が点滅している。

 コメントが流れていた。


 ゆっくりと悠真は状況を把握する。

 床に漆黒の霧の残滓が漂う。


 サキュバスクイーンの姿は、どこにも存在しない。

 床の紋様が、戦いの終わりを示すように、静かに光を失っていた。


「……倒した、のか」


 静かに彼が呟く。


「ええ、当然ですわ。私たちが……倒しましたの」


 涙で濡れた蒼い瞳で、アイリスが答えた。

 ゆったりと金色の狐耳が揺れている。


 悠真は五人の顔を順番に見渡した。

 ホウキの黒いポニーテールが乱れ、和装の至る箇所に血が滲んでいる。

 切れ長の黒い瞳が涙で潤んだまま、彼を見つめていた。


 シャルルの髪が石畳に垂れ、長く細い耳が伏せられている。

 翠色の瞳から、まだ涙が伝い続けていた。


 アウラは制服が各所で裂け、猫耳が伏せられたまま、青灰色の瞳が悠真を捉えている。

 アイリスは金髪が乱れ、金色の狐耳が伏せられていた。蒼い瞳が涙で輝いていた。


 シュンリンの赤いツインテールが乱れ、龍化の鱗の痕が腕に残されている。

 赤金色の大きな瞳が、涙でぼやけながら悠真を見ていた。


 全員が満身創痍の状態である。

 それでも全員は確かに、そこに立っていた。


「……よく、頑張ったな。本当に……お前たちなら、やれると信じていたぞ」


 一人ひとりに視線を向けながら彼は静かに、しかし感情を込めた言葉を重く発する。

 そして悠真は自分が死んだ後の出来事を確認するべく、素早く配信端末を弄りアーカイブを確認して、サキュバスクイーンが倒された決定的な瞬間に目を通した。


「ホウキ。膝の損傷を押して、奥義まで使ってくれたみたいだな。ありがとう」

「悠真様……っ」

「シャルル。あの状況で最大の攻撃魔法を展開した。お前の豊穣の力が、決定打になったはずだ」

「悠真くん……うぅ……っ」

「アイリス。幻影の連携、完璧だったぞ。あの動き、シャルルとアウラの攻撃への布石になったはずだ」

「……もう、黙りなさいな。貴方が褒めると……泣いてしまいますわ」

「アウラ。魔弾は全て決まったか?」

「……ああ、六発命中だ。しかしまあ……なんだ。最後の一発は……許せ」


 アウラが短く答える。猫耳が僅かに持ち上がった。


「そうか、さすがだな。……じゃあ、許してやるよ」

「……」


 猫耳がぺたりと伏せられ、彼女が顔を逸らす。

 微かに頬が赤くなっていた。


「シュンリン」

「……なんだよ」


 ぼそりとシュンリンが答える。

 赤金色の大きな瞳が潤んでいた。


「お前の最後の一撃が、決めたんだろう?」

「……そうかもな」

「よくやった」

「……うるさい」


 彼女が顔を背ける。燃えるような赤いツインテールが揺れ、その耳が赤くなっていた。

 沈黙が流れる。

 次の瞬間、ホウキが声を上げた。

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