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「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第六章

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第2話 ラスボス部屋へ

「悪いな。俺は今の大切な仲間たちと共に、ラスボスを倒しに行く」


 静かに悠真は言い切る。

 一瞬の沈黙。


「え……」


 鈴音が手を止めた。


「それって……お前、それを今言うのか……俺たちを、見捨てるってことか?」


 樟葉の張り付いた笑みが、初めて崩れる。


「見捨てるんじゃない」


 悠真は続けた。声は穏やかだが、揺るぎない。


「最初から、お前たちと一緒に行くつもりがなかっただけだ。俺が信頼できる仲間は、最初から決まってる」


 漆黒の外套の内側で、デッキケースを握り直し、悠真は振り返った。

 ホウキが切れ長の黒い瞳で静かに頷いている。

 アウラが猫耳を立てたまま、短く”行くぞ”と言わんばかりに前を向いていた。


 アイリスが金色の狐耳を逆立てながら、蒼い瞳に誇りの炎を灯している。

 シャルルが長く細い耳を揺らしながら、翠色の瞳を温かく細めていた。

 シュンリンが燃えるような赤いツインテールを揺らし、赤金色の大きな瞳で悠真にニヤリと笑いかける。


『かっっっこよすぎる』

『これだよこれ!』

『悠真くん最高すぎる』

『泣いた、なんで泣いてるんだ俺』

『一軍ざまあ!』

『これが本物のリーダーだ』

『悠真くんの背中、一生ついていく』

『視聴者数また上がってるぞ!』


 コメントが怒涛の勢いで流れた。

 一軍の男女やクラスメイトたちに、背を向けた悠真の背中を、沈黙が追いかけた。

 一軍の男女やクラスメイトたちは尚も、その場に立ち尽くしている。


 これだけの手を尽くして。

 色仕掛けも、甘言も、仲間意識への訴えも。

 全部、いとも簡単に一蹴された。


 しかも、その様子が全世界に配信されている。

 視聴者たちに丸見えの状態で、見下していた相手に断られた。


 その事実が一軍の男女や、クラスメイトたちの顔を歪ませていく。

 最初に限界を迎えたのは、樟葉だった。


「……はっ」


 乾いた笑いが漏れた。深紅の瞳が、屈辱と怒りで燃えている。


「そうかよ。まあ、お前なんか居なくても全然余裕だし? あんまし調子乗んなよ、キモオタク」


 その声は、震えていた。

 怒りなのか、恥辱なのか、それとも嫉妬なのか。

 全部が混ざり合う、みっともない声だった。


「そうそう! どうせすぐ死ぬんだから! 雑魚パーティーで頑張ってみたら? 超笑えるけど!」


 即座に鈴音が続く。

 ワインレッドの髪を乱しながら、赤金色の瞳を怒りで歪ませている。

 先程まで甘い声で、悠真の腕に触れていた口が、今は罵声を吐いていた。


「カードオタクが調子乗ってんじゃないわよ! いつか絶対後悔するんだから!」


 怒涛の勢いで麗華も続く。

 水色のツインテールを振り乱し、丸い水色の瞳から今度は怒りの涙が滲んでいる。


「こっちが親切心で声かけてやったのに。ほんとキモいわ、ありえない」


 苦々しげに奏恵が吐き捨てた。


「ふんっ……下賤な者に情けをかけた、わたくしの失態ですわ。所詮、陰キャはどこまでも陰キャなのでしょうね」


 扇で口元を隠しながら、姫香は深い赤紫の瞳を細める。

 周囲のクラスメイトたちも、つられるように負け惜しみの言葉を並べ始めた。


「ざこぱ、がんばってね!」

「どうせ全滅するんじゃない?」

「一人で調子乗ってみっともない」


 罵詈雑言が、最下層の通路に飛び交う。


『アイツらみっともなさすぎて滅』

『断られた途端にこれかよ~』

『さっきまで媚び売ってたのに豹変すぎ』

『ざまあ確定演出じゃん』

『悠真くんは何も言わないのがかっこいい』

『アイツらが勝手に恥晒してて笑う』

『視聴者数また上がってるぞ!』


 コメントが爆発した。しかし悠真は振り返らない。一度も。

 ホウキは無言のまま一歩を踏み出した。

 黒い瞳は揺らがず、ただ進む先だけを測っている。


 アウラは猫耳を立て直し、低く息を吐いてから扉へと歩み寄った。

 青灰色の瞳に迷いはない。


 アイリスは狐耳を前に向けたまま、胸の奥で燃える誇りを押し出すように足を進める。

 蒼い瞳が静かに熱を帯びていた。


 シャルルは細長い耳を揺らし、柔らかな微笑みを残したまま一歩踏み出す。

 翠の瞳は穏やかに、しかし確かに前を捉えている。


 シュンリンはツインテールを跳ねさせ、肩を回してから勢いよく踏み込んだ。

 赤金の瞳が愉快そうに細められる。


 六人全員の意識が、ただ一点に注がれていた。

 鉄製の扉。その先に待つ、ラスボス。


 背後の罵声など、まるで聞こえていないかのように。

 いや、聞こえていても、それに耳を傾ける価値を見出していないかのように。


 六人の足が、力強く地を踏みしめる。一歩、また一歩。

 その背中はどこまでも真っ直ぐで、揺るぎなかった。


 コメントが静かになっていく。

 代わりに流れ始めたのは、応援の言葉だった。


『行け悠真くん』

『絶対クリアしてくれ』

『ここまでの旅、今この時の為に!』

『最高のパーティーだ』

『頼む……頼む……!』


 やがて、六人の影が鉄製の扉の前に立つ。

 背後の罵声は、もはや遠く、どこか別の世界の音のように聞こえた。

 悠真はデッキケースをしっかりと握り直す。


「よし……行くぞ!」


 彼の一言に、五人が頷いた。

 重厚な鉄製の扉が、ゆっくりと開き始める。


 その瞬間、背後からの罵声が、再び激しさが増す。

 だが悠真への言葉が尽きると、今度は矛先が仲間たちへと向かった。


「あんな女どもと組んでも、どうせ即死だろ」


 樟葉が吐き捨てる。


「ほんとそれ。あんな連中に見向きもされないとか、超ムカつく」


 鈴音が続けた。


「あいつらのせいで、陰キャが調子乗ってんだろ。全員まとめてボスに殺されろ」


 奏恵が低く言い捨てる。

 周囲のクラスメイトたちも、それに続くように言葉を重ねていく。

 怒りと嫉妬と屈辱が入り混じった、みっともない言葉の羅列だった。


『悲報。元トップ配信者さん、惨めすぎる』

『断られた途端にこれはクカ』

『悠真くんの仲間たちに何言ってんだこいつら』

『一生ついていく悠真くん』

『これこそ本物のチームってやつよ』

『女子たちに一目惚れしたんだが俺だけ?』

『いや性格終わってるだろ、アイツら』

『悠真パーティー絶対クリアしてくれ』


 配信コメントが怒涛の勢いで流れてゆく。

 しかし依然として、六人は誰一人として、振り返らなかった。


 悠真は、漆黒の外套の内側でデッキケースを握り締めたまま、一度も振り返らずに扉を潜り抜けた。

 六人が次々と、扉の内側へと入っていく。


 そして最後の一人が扉を越えた瞬間だった。

 重厚な鉄が、轟音と共に閉じる。


 石畳が震え、空気が圧縮されるような感覚が、彼の全身を包む。

 背後の罵声が、分厚い鉄の壁に遮られ、完全に消えた。

 静寂。


 それまでの喧騒が嘘のように音が消えた。

 六人は扉が閉じた音の余韻の中で、新たな空間を見渡す。

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