第16話 最後に現れる、アイツらが
(──でも今は、そんなことはどうでもいい)
静かに悠真は息を吐いた。今この瞬間、目の前に仲間がいる。共に戦える。それだけで充分だった。
そして絶対なる覚悟を決めた六人が、一斉に武器を引き抜いた。
ホウキの太刀が鞘走りに輝き、アウラの銃が構えられ、アイリスのレイピアが冷たい光を放つ。
シャルルの長杖に緑の魔力が灯り、シュンリンの硬質な爪の拳が握り締められる。
悠真は、デッキケースからカードを一枚引き抜き、前へと構えた。
六人が横一列に並んで、鉄製の扉の前に立つ。
その瞬間だった。
どこからともなく、声が聞こえてくる。
「──問おう、旅人たちよ」
低く、重く、空間そのものが震えるような声だった。
どこに発生源があるのか分からない。壁からか、天井からか、あるいは扉の奥からか。
「汝らは真に、この先へ進む確固たる意志を持つか。この扉の向こうに待ち受けるは、紛うことなき地獄の具現。このダンジョンの頂点に君臨せし最強の存在が、汝らを待ち受けておる。命を賭してなお、前へ進む覚悟があると申すか」
不吉な声が、六人の覚悟を試すように、ゆっくりと空間に染み渡っていく。
悠真たちは顔を見合わせた。
一瞬の間が生まれる。
そして――――
「「「「「「もちろん!」」」」」」
六つの声が、完全に重なって響き渡る。
その瞬間、六人は申し合わせたわけでもないのに、それぞれが独自の、しかしどこか様になったポーズを決めていた。
悠真は片腕を前に突き出しデッキケースを掲げ、ホウキは太刀を天へと向け膝を僅かに割り、アウラは銃を肩に担いで胸を張り、アイリスはレイピアを斜めに構えて顎を上げ、シャルルは長杖を地面に突き立てて長く細い耳を立て、シュンリンは両拳を前に突き出して足を大きく開く。
静寂。声からの返答は、なかった。
しばらく待っても、何も聞こえない。
「……あれ」
静かに悠真は呟いた。
「返事が……ないな」
「ないですわね」
金色の狐耳をアイリスが小さく動かす。
「……そもそも、あの声は何だったんだ」
猫耳を傾けるアウラ。
「ダンジョンの演出?」
長く細い耳をシャルルが揺らす。
「それにしても俺たち、ちょっと勢いで返しすぎたな……」
悠真が前髪を掻く。
「いや、最高だったろ」
赤いツインテールを揺らしてシュンリンが笑う。
「あのポーズは何だったんだ……。咄嗟にやってしまったが……」
ホウキが切れ長の黒い瞳を細める。
「なんかこう……なった」
答えになっていない答えを悠真が返す。
全員が苦笑した。
『六人のポーズ最高すぎる』
『あの声なんだったんだ?』
『全員息ぴったりすぎだろ』
『絶対クリアしてくれ頼む』
コメントが流れてゆく。
「……まあ、いい。あの声が何だったにせよ、やることは変わらない。行くぞ」
気持ちを切り替えるように悠真は、真っ直ぐに漆黒の扉を見据えた。
全員が頷いた。武器を構え直す。
六人が同時に、力強い一歩を踏み出した。
その瞬間だった。
「──待て」
声が背後から聞こえる。悠真の足が止まった。
それは聞き覚えのある声。だが、この場所で聞くとは思っていなかった声だ。
ゆっくりと振り返ると、通路の奥に、複数の人影が見える。
「……なんで、お前らが」
悠真の声が、低く漏れた。
その人影たちは──彼がよく知る顔ぶれだった。
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