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「お前は戦力外だ」と追放されたカードゲーマー、伝説級レアカードで無双する ~元クラスメイトたちは没落したけど、俺は美少女パーティーとダンジョン配信で大成功しました~  作者: どすこい。お嬢様
第五章

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第15話 仲間たちへの感謝

「でもな、悠真。マジでここまで引っ張ってくれてありがとな! 最初はどうなるかと思ったけど……やっぱ頼れる奴って感じ?」


 悠真の背中を軽く叩きながら彼女は続けるが、その言葉にアイリスの金色の狐耳がぴくりと動いた。


貴女(シュンリン)、こういう時くらい真面目に──」

「充分に真面目だろ」

「……そうですわね、失礼しましたわ」


 彼は仲間たちのやり取りを見ながら、思わず口元を綻ばせる。

 この長い冒険の中で、何度命を救われたか分からない。

 戦闘で傷つき、罠にかかり、幻覚に囚われ、それでも常にこの仲間たちが傍にいてくれた。


「……俺の方こそ、言わなきゃいけないことがある」


 悠真は足を止め、仲間たちの方を振り返る。


「俺は何度も、お前たちに命を救われてる。戦いでも、心が折れそうな時も……たくさん助けてもらった。改めて本当に、ありがとうな」


 前髪を掻きながら、飾りのない言葉を落とす。

 沈黙が一瞬だけ空間を支配した。

 次の瞬間、それぞれの表情に温かなものが宿る。


「……まったく、まっすぐすぎて調子が狂いますわ」

「こういう時だけ素直だな!」

「うれしいよ、悠真くん」

「これからも期待している」

「ええ、こちらこそです」

「よーし、絶対生きて戻ろうぜ!」


 仲間たちの言葉が木霊すると、最後に悠真が握り固めた右手を力強く天に掲げた。


『ここまでの旅、走馬灯みたいに思い出した』

『悠真くんのパーティー大好きだよ』

『絶対ボスを倒してダンジョンをクリアしてくれ。頼む』

『泣いてる、なんで泣いてるんだ俺』


 感情が込められたコメントが流れてゆく。

 そして六つの影が、再び前へと動き出す。

 ラスボスの間へと続く最後の回廊。


 その先には、まだ見ぬ死闘が待ち受けているだろう。

 だが彼らの歩みには、一片の迷いもなかった。


 最下層──通称”奈落の門”。

 岩肌は漆黒に染まり、空間そのものが何かに侵食されているかのような感覚を与える。


 気温は低くはないのに、皮膚に張りつくような寒気が背筋を這い、心の奥を鈍く叩く。

 そこに存在するだけで、魂を蝕まれるような錯覚。空気が重い。視界が滲む。

 そして、扉。


 悠真は仲間たちと共に、その前に立っていた。

 高さ八メートルを超える重厚な鉄製の扉。

 その表面は古代の紋様で覆われており、どこかの時代に存在した王族の墓標のようにも見える。


 だが、その内側に眠るものは、王ではない。

 配信魔導端末の光が静かに点滅していた。


『ついに来た……ラスボスの間……』

『悠真くんたち、絶対勝って』

『ここまでの旅、全部見てたよ』

『泣きそう、なんで泣きそうなんだ俺』


 コメントが流れている。


「……ここか」


 悠真は声を低く漏らした。

 前髪の奥の茶色の瞳が、扉を静かに見据えている。


 誰も言葉を発しなかった。

 しばらくの沈黙の後、最初に変化が訪れたのは、シャルルである。


「……っ」


 淡い金色に近い銀髪がふわりと揺れ、長く細い耳が伏せられた。

 翠色の瞳が、じわりと潤んでいく。


「ごめん……なんか、急に……」


 細い指で目元を押さえた。

 それでも涙が指の隙間から伝い落ちていく。


 その姿を見て、アイリスが金色の狐耳を伏せた。

 蒼い瞳が揺れ、唇を噛みしめている。


「……わたくしも、なぜか……っ」


 プライドの高い彼女が、珍しく声を震わせていた。

 金髪が肩に流れ、尻尾が力なく垂れている。


 ホウキは無言だった。

 ただ、切れ長の黒い瞳から一粒だけ、静かに雫が落ちる。


 それだけだった。

 それ以上は、武人として堪えている様子。


「ん……泣いてんのか、アウラ」

「泣いていない」

「耳が赤いぞ」

「……黙れ」


 悠真の軽口にアウラは、前を向いたまま、猫耳を立てている。

 だが、その青灰色の瞳が光を帯びているのは、彼にも見えた。


「アタシは泣かないからな」

「泣いてるだろ」

「泣いてない」

「涙が出てるぞ」

「……これは汗だ」


 悠真の鋭い指摘にシュンリンは、燃えるような赤いツインテールを揺らしながら、空を仰ぐ。

 彼女の赤金色の大きな瞳は滲んでいた。


 彼は仲間たちの顔を順番に見渡す。

 ダンジョンの終わりを察し、笑いながら泣いている五人の顔を。


 気づけば悠真自身の目も熱くなっていた。

 前髪を掻き上げながら、天を仰ぐ。


「……俺も泣いてんのか」


 誰かが笑った。

 その笑いが伝染して、泣きながら笑うという、奇妙な空間が生まれる。


『全員泣いてるじゃん……』

『こっちも泣いてる、なんで泣いてるんだ』

『最高のパーティーだよ本当に』

『絶対クリアしてくれ頼む』


 コメントが爆発的に流れる。

 やがて彼は顔を上げ、真っ直ぐに漆黒の扉を見据えた。


「よし!」


 その一言で、場の空気が変わる。


「泣くのはここまでだ。この扉をぶち破って、さっさとクリアするぞ!」

「ようやく、それらしいこと言いましたわね」


 アイリスが涙を拭いながら、金色の狐耳を立て直した。


「ああ、絶対に勝つ。それだけだ」


 猫耳を逆立て、アウラが銃に手を掛ける。


「さぁ、行こう! 悠真くん! 僕たちはここまで来たんだから!」


 シャルルが長杖を構え、翠色の瞳に炎を灯した。


「悠真様……参りましょう」


 ホウキが静かに太刀の柄に手を添える。


「ぶっ倒して、肉焼いて、帰るぞ!」


 シュンリンが硬質な爪の拳を天高く突き上げた。

 燃えるような赤いツインテールが力強く揺れる。


 そして鉄製の扉を前に、しばしの静寂が流れた。

 最初に動いたのは、シャルルである。


「……悠真くん」


 淡い金色に近い銀髪を揺らし、ゆったりと長く細い耳が揺れた。

 翠色の瞳が、まだ涙で潤んだまま、彼の正面に立つ。


「行く前に……いいかな」


 それを言い終わる前に、彼女の細い腕が、悠真の背中に回っていた。

 ぎゅっと、力強く。


「っ……お、おい」


 彼が動揺する間もなく、シャルルは悠真の胸元に顔を埋めた。

 長く細い耳が彼の顎に触れる。


「絶対に、全員で帰ろうね」

「……ああ」


 戸惑いながらも悠真は、静かに彼女の背中に手を置く。


「……失礼いたします」


 次に動いたのは、ホウキだった。

 黒いポニーテールが揺れ、東の国風の軽装和装の袖がさらりと翻る。

 切れ長の黒い瞳が涙で潤んだまま、彼女は彼の腕を静かに掴んだ。


「悠真様……必ず、共に戻りましょうぞ」

「ホウキ……」


 珍しく言葉少なにホウキは、悠真の肩に頭を僅かに預ける。

 武人としての矜持を保ちながらも、その瞳からは一粒の雫が伝い落ちていた。


「……絶対に、生きて帰ろう。約束だ」

 

 彼女は静かに頷く。


「おいおい、アタシも混ぜろよ!」


 シュンリンが割って入った。

 燃えるような赤いツインテールを揺らし、赤金色の大きな瞳が滲んでいる。

 有無を言わさずに、彼の空いている方の腕に抱きついた。


「死んだら承知しないからな、悠真」

「お前に言われたくない」

「うるさい」


 彼女は顔を背けながらも、その腕の力は緩めない。

 額の両側の龍角が僅かに赤みを増していた。


「……わたくしも、参りますわよ」


 アイリスが一歩前に出る。

 金色の狐耳が伏せられ、腰まで届く金髪が揺れている。

 蒼い瞳が涙で潤み、頬が薄く紅潮していた。


「シルヴェスター家の長女として……このような真似は本来、はしたないのですけれど……必ず、クリアしますわよ。わたくしたちは」


 そう言いながら、彼女は悠真の腕に自らの手を重ねる。

 金色の狐耳が、僅かに持ち上がった。


「……ああ」


 短く言葉を返す悠真。

 最後にアウラが、静かに彼の前に立った。


 銀灰色の長髪が揺れ、ゆっくりと猫耳が前方へ向く。

 青灰色の瞳が彼を、まっすぐに捉えていた。


「……不器用なことは苦手だ」


 そう前置きしてから、彼女は悠真の肩に手を置く。

 猫耳が伏せられ、頬が微かに赤くなっている。


「だが……共に戦えたことを、誇りに思う。悠真」

「アウラ……」

「それだけだ。行くぞ」


 照れ隠しのように短く言い切り、アウラは前を向いた。

 それぞれの形で六人が、確かな温もりを交わす。

 その場で悠真は、仲間たちの体温を感じながら、胸の奥で静かに思っていた。


(──このラスボスを倒したら、俺はこの世界を去る)


 ダンジョンを攻略し、最深部のボスを倒せば、元の世界に帰還できる。

 女神フォルトゥナが、そう告げていた。

 つまり、これが最後の戦いであり、仲間たちの最後の時間である。

 

 ホウキとの戦場での絆。

 シャルルの温かな笑顔。

 アウラの不器用な優しさ。

 アイリスの誇り高い背中。

 シュンリンの底抜けの明るさ。


 全部、ここに置いていくことになる。

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