その吸血姫、強敵につき
私は自分の部屋にある椅子に座り、ルイスがよこす使者を待っていた。
その使者とはオールアイ第九席 エマ・ガルシア。
二つ名はルイスが万能ならエマは沈黙である。
そしてエマがカッコよく小窓から入ってくる。彼女は背が小さく蜜のように黄色い髪と瞳を持っている。
彼女は十二の魔剣の中で一番年下で一番小さくさらに無愛想である。
しかもそれだけではなく
「ワ ガ ア ル ジ ホ ウ コ ク シ マ ス(我が主、報告します)」
彼女は喋らない。
全て手話である。私はこの子が自分の口からしゃべっている所を見たことがない。
「サ ク セ ン ハ ガ ク エ ン シ ュ ウ ヘ ン ニ テ ン ザ イ ス ル キ ー ル ハ ノ ア ジ ト ヲ シ ュ ウ ゲ キ シ セ ン メ ツ ス ル コ ト デ ス(作戦は学園周辺に点在するキール派のアジトを襲撃し殲滅する事です。)」
「わかったわ。そして カルナ・キールは今どこにいるの?」
「ダ ン シ リ ョ ウ ノ ス ミ ス コ ウ タ イ シ ノ ヘ ヤ ニ チ カ イ ア ジ ト ニ ヒ ソ ン デ イ マ ス(男子寮のスミス皇太子の部屋に近いアジトに潜んでいます。)」
「それはどこ。」
エマが地図を広げある一点を指す。
「コ コ デ ス」
「よしでは今から作戦開始。カルナには手を出さないよう伝えて。彼女は私の獲物よ。」
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彼女、カルナ・キールは皇太子を襲撃するための最終準備をしていた、その時だった。
部屋の扉が勢いよく開く
「カルナ嬢!!今、他のアジトから連絡が入りました。襲撃を受けたのとの事です。」
「え??」
彼女は動揺した。なぜアジトの場所が、バレたのか。なぜこんな時にに、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ
「カルナ嬢、我らはどうすれば、、、」
配下の声で彼女は冷静さを取り戻した。
まず、するべき事はどのアジトが襲われたか。敵の兵力は。そして敵の正体は。自分たちの被害は。確認するべき事は沢山ある。
彼女は配下に連絡の続きを言うことを促す。
「襲われたアジトは今回の作戦に使う事になってたアジト全て。敵は少なくとも100人以上で個々がとてつもない実力を持っています。我々の被害は、」
『ドガーン』
とてつもない破壊音が建物の外から聞こえてくる。多分襲撃されたどこかのアジトだろう。配下が少し驚き報告を続ける。
「報告を続けます。襲撃されたアジトは壊滅状態。敵の正体は依然として不明です。」
「私たちのアジトを襲撃されるのも時間の問題かもしれませんわ。あなたは本部にこのことを報告してください。私はなんとしてでも皇太子を暗殺しに行きます。」
「ハッ。ご武運を!」
こうして彼女は皇太子を暗殺する為、男子寮に続く地下通路に入った。この地下通路は緊急脱出ように使われていた避難通路だった。
そして彼女は駆け足でその通路を抜けようとした。ここを抜ければ皇太子の首は目と鼻の先である。
しかし通路の途中に血のように赤いドレスを着た少女が立っていた。
彼女は仮面で素顔を隠している。明らかに怪しい人物である。
だがどんな奴でも邪魔をするなら容赦しない!!そして少女に切り掛かる。
しかし少女はその攻撃を容易く避けた。まるで舞う様に。
この女強い!!
彼女は驚きを隠し質問する。
「あなた、何者!?」
そして目の前の少女の笑い声が通路の中に響く。そして少女が口を開く。
「私の名前は アイ あなたもアトランティスの一員なら聞いたことくらいはあるでしょ?」
そう彼女はこの『アイ』と言う名前に聞き覚えがあった。
それは組織から聞いた、危険・要注意人物が載っている名簿に太い文字で書いてあった。
「だったらなんだっていうの!!」
また彼女は切り掛かる。それはこの世界の基準ではとても洗練された動き。
しかしその少女はさらに洗練された動きで、背後に回り込み背中をハイヒールで蹴る。
「う!!」
彼女はたまらず少女から距離を取る。
彼女はこれほどの強者が組織以外に存在していることに驚愕した。
しかもこの少女、身長的に彼女と同年齢くらいに見える。
彼女は嫉妬した。その歳での、その強さに。敵を相手取っても、緊張しないその強い心に。
そして彼女は自身の過去を思い出す。
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彼女の家はもともと貴族ではなかった。平民で貧しかったが家族3人で幸せにひっそりと暮らしていた。
しかしその平穏な生活はいつまでも続かなかった。
彼女の母がとても重い病にかかったのである。町で一番腕のいい医者も彼女の母の病を治すことは不可能だった。
アトランティスを除いては。彼女の家系は代々魔力の保有量が多い家だった。
そこにアトランティスが目をつけたのだ。組織は彼女と彼女の父親に母親を助ける代わりに組織に入り忠誠を誓えて言ってきた。
その時は母親の状態があまりにも酷かったため、もはや彼女たちに拒否する選択肢はなかった。
そして彼女と彼女の父親は組織の一員になった。
組織に入る時、彼女の父は貴族階級を適当な理由で渡された。
こうして彼女たちの平穏で幸せな生活は崩れ去った。
彼女の母親は組織について全く知らない。もし母親が全て知ったら彼女は助かった自身の命を恨み懺悔したと思う。
そして恐ろしいのはこれからである。
後から知ったのだが、彼女の母親の病は意図的に仕組まれたことだった。
組織が彼女を手に入れるため母に強力な毒を飲ませたのである。彼女は憎んだ。自身の魔力を。
しかしそんな彼女も今では一つの派閥を束ねるほどの人物になった。
そしてこれからやっと権力や金など組織の恩恵を受けられるのである。
なので彼女はこんな所で死ぬわけにはいかない!!
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