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さくら台駅前ペット探偵事務所 「FXで数億稼ぐサヴァンの天才」×「バツイチの40代おじさん」。凸凹バディが挑むのは、迷子のペットと「人間の感情(バグ)」!?  作者: あおにし
CASE10 さくら台の絆と探偵の誇り

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File 38 許せない真実

「いつも応援ありがとうございます!さくら台駅前ペット探偵事務所、第37話です。奴らに落とし前を付けさせろ!お楽しみください!」

「さくら台から10キロも離れた場所で見つかったという話だったけれど、この子の肉球はまったく擦り減っていないし、数日間放浪していたにしては栄養状態も良すぎるわ。それに、鼻先や歯にあるこの傷……」


先生はカイの口元をそっと持ち上げて見せた。


「これは長期間、狭い金網などに執拗に噛み付いていた証拠の『ケージバイト』ね」


「ケージバイト……?」


「ええ。極度のストレス環境下に置かれた動物が、ケージを破ろうとして狂乱した時にできる特有の傷よ」


その医学的事実が提示された瞬間、ヒカルのタイピングの手がピタリと止まった。


「……すべてのエラーが合致した」


ヒカルは立ち上がり、昨日拾った証拠袋を机の上に置いた。


「肉球の摩耗が計算値より著しく少ない。……長距離を自力移動した痕跡としては不自然。ケージバイトと先ほどのクレートへの異常な恐怖は、『狭い場所に長期間監禁されていた』というトラウマの証明」


ヒカルは証拠袋に入った給水器を指差した。


「……昨日、緑地帯の現場付近で拾ったケージ用の給水器。付着していた血は、金網を噛み続けて出血した歯茎からのもの。ボーダーコリーの高い知能で、業者が餌やりなどで扉を開けた一瞬の隙を突き、生きる執念で体当たりして自力で逃げ出した。その時に弾き飛ばされた給水器が現場に落ちていた」


「じゃあ……カイは、ずっと逃げ続けていたわけじゃなくて……!」


俺は戦慄し、昨日、緑地帯を捜索した時の記憶をフラッシュバックさせた。


「……昨日、俺たちが給水器を拾ったすぐ近くにあった、異常に静かな犬の鳴き声がしてたあの『高い鉄板の塀に囲まれた敷地』!……あそこが、奴らのアジトだったんじゃねえか? 」


点と点が、戦慄の線となって完全に繋がった。


「奴ら、さくら台で捕獲した後、設備のある自分たちのアジトまで車で連れ去って監禁し、探してるフリをして時間を延ばし、高額請求をしてたんだ! 命を……家族の絆を、ただの金蔓にするために!」


「……純粋な命のデータを、金儲けのノイズに利用する悪意。極めて不快」


ヒカルのビー玉のような瞳の奥に、氷のような冷たい怒りが宿った。



俺はすぐさま別行動で調査を進めていた大手の桐生へ電話をかけた。


「桐生か! 犬を見つけた。ケージバイトの痕があり、間違いなく監禁されていた。アジトは俺たちが捜索していた10キロ先の『塀に囲まれた敷地』で間違いないはずだ!」


『……了解した。すぐに裏付けを取る』


短い返答だったが、桐生の声にも明確な怒りがこもっていた。



数日後。 俺のスマートフォンに、桐生から短く連絡が入った。


『……お前たちの推測通り、言っていた場所が奴らのアジトだと確定できた。こちらの資金洗浄の裏付けと合わせ、警察への書類の提出も終わった。まもなくガサ入れが入る』


俺はニヤリと笑い、ジャージのジッパーを上まで引き上げた。


「行くぞヒカル。落とし前をつける時間だ」



10キロ先の隣町。高い鉄板に囲まれた不審な敷地。


俺とヒカルは、桐生が運転する高級車の後部座席から降り立った。大手のチーフと、地べたを這いずる下町探偵の異色のスリーマンセルだ。


プレハブ小屋の前に立つと、桐生がスッと前に出て、躊躇なくドアをノックした。


そして、相手の返事を待つことなく堂々とドアを開け放ち、大人の余裕を漂わせながら静かに言い放った。


「……失礼するよ」


突然の堂々たる来訪者に、室内にいた複数の男たちが驚いて顔を上げた。


プレハブ小屋の中には、不釣り合いなほど立派な「心と家族を繋ぐ」という胡散臭い動物愛護のポスターや、でっち上げの感謝状、そしてピカピカに磨かれた『探偵バッジ』が誇らしげに飾られていた。


だが、その実態は醜悪だ。


一人の男は複数台のパソコンを並べてネット上のボット工作や自動報告書を作成し、もう一人はヘッドセットをつけて


「はい、現在も全力で捜索中ですが難航しておりまして〜」


とマニュアル通りの追加料金の営業電話をかけている。


そして奥のデスクでは、リーダー格の小太りの男が、スマートフォンでゲームをしながらだらしなく足を投げ出していた。


現場で泥だらけになっていない、偽物の探偵の空間だ。


「な、なんだお前ら! 勝手に入ってきてんじゃねえぞ!」


リーダーの男が立ち上がって怒鳴るが、桐生は冷徹な表情のまま、分厚いファイルの束を男のデスクに叩きつけた。


「……アイヴィ・総合探偵社、チーフ調査員の桐生だ。以前から別件で追っていた、特定商取引法違反および詐欺罪に該当する証拠の束、そして君たちが巧妙に隠していた『ダミー会社と詐欺サーバーの全容』だ。すでに警察に受理されている。……君たちのビジネスは、ここで破綻した」


「なっ……! お前ら、何かの嫌がらせか!? うちの客は喜んで金を出してんだ、ビジネスの邪魔すんじゃねえ!」


男が青ざめながらも反抗しようとしたその時、ヒカルが一歩前に出た。


「……君の構築した詐欺サイトとボットネットワーク、すでに完全に破壊(デバッグ)完了。復旧不可能。さらに、現場で回収したこの『血のついた給水器』のDNAデータが、君たちの誘拐と監禁の事実を完全に証明している」


ヒカルが突きつけた証拠袋に、部下の男たちは慌ててキーボードや電話から手を離し、リーダーの男は完全に言葉を失ってへたり込んだ。


俺はリーダーの男の胸ぐらを力任せに掴み上げ、至近距離で睨みつけた。


「理不尽な罠で家族を奪われる痛みが……お前みたいなクズに分かってたまるかよ。探偵を名乗る資格もねえ、ただのクズどもが。二度と命を金儲けの道具にするな」


俺が男に引導を渡したまさにその瞬間。


ウゥゥゥゥゥゥ……!


遠くから無数のパトカーのサイレン音が近づいてくる。


桐生が静かに俺の肩へ手を置いた。


俺は、ゆっくりと男の胸ぐらから手を離した。


逃げ道を塞がれて震え上がる詐欺業者たちを背に、俺たちは振り返ることなく、その場を後にした。

「ここまで読んでいただきありがとうございました!

次回、第一部完です。


もし『続きが気になる!』『このコンビ、面白い!』と思っていただけましたら、下部の☆☆☆☆☆から【評価】や、作品フォロー&ブックマークをしていただけると、執筆の励みになります!ぜひよろしくお願いします!」

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