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さくら台駅前ペット探偵事務所 「FXで数億稼ぐサヴァンの天才」×「バツイチの40代おじさん」。凸凹バディが挑むのは、迷子のペットと「人間の感情(バグ)」!?  作者: あおにし
CASE10 さくら台の絆と探偵の誇り

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39/39

File 39 探偵の誇り

「いつも応援ありがとうございます!さくら台駅前ペット探偵事務所、第39話です。

今回は第一部最終話です。お楽しみください!」

2月20日の夕方。窓の外では、冷たい冬の風が落ち葉を揺らしている。ストーブの上で、ヤカンがシュンシュンと湯気を立てていた。


ガチャリ、とドアが開き、上品なコートを羽織ったヒカルの姉、冴子さんが入ってきた。


「ヒカル、イナガキさん。今月もお疲れ様です。……はい、今月の『事務所の経費』と、『イナガキさんのお給料』。それと、『ヒカルの生活費』ね」


冴子さんは微笑みながら、三つの封筒を机に並べた。


俺は自分の名前が書かれた給料袋を大事に胸に抱きながら、西城さんから受け取った報酬の入った封筒を机に置いた。


「お姉さん、聞いてくださいよ! 今月、1件目のムギちゃんの捜索は詐欺業者への意地もあってタダ働きになっちまいましたが……2件目のカイの捜索でキッチリ4日分、8万円の報酬(売上)をいただきました!」


冴子さんがパッと表情を明るくして目を丸くする。俺は誇らしく笑って続けた。


「まだまだ俺の給料を賄うには足りません。……でも、俺たちが這いつくばって稼ぎ出したこの8万円は、奇しくも俺が毎月払ってる『息子の養育費』と全く同じ額です。俺の探偵としての稼ぎが、今月は養育費に追いついたんですよ。……先は長いですけど、今月は、いつも以上に胸を張って、お姉さんからもらったこのお給料から養育費を振り込めます!」


ヒカルが、プロテインウォーターに口をつけながら淡々と言った。


「……イナガキさんの自立心による売上の増加。だが、僕の資産の運用益から見れば、依然として――」


「ゴサノハンイ! ゴサノハンイ!」


ステラがヒカルのセリフを横取りして、鳥かごの中で嬉しそうに羽をパタパタさせながら叫んだ。


「だからステラ! お前がヒカルのセリフを横取りすんな! 俺たちが死ぬほど這いつくばって稼いだ金は、誤差じゃねえ!」


俺のツッコミに、冴子さんは心から嬉しそうに、温かく目を細めて笑った。


「ええ。ふふふ、本当に、立派な探偵事務所になってきたのね。イナガキさん、いつも弟を支えてくれて、本当にありがとうございます」


俺が胸を張ると、冴子さんがデパ地下の袋を机に置いた。


「ヒカル、今日は『熱々のおでんと、ブリの照り焼き』を買ってきたから、ちゃんと季節のものを食べて栄養をつけるのよ」


ヒカルは空間の一点を見つめたまま、静かに口を開いた。


「……ブリに含まれる豊富なDHAと良質なタンパク質、およびおでんのダイコンに含まれる消化酵素。凍える寒さの中で消耗した脳と肉体の疲労を回復させ、体を芯から温める。極めて合理的なリカバリー食。……感謝する、姉さん」


「相変わらず理屈っぽい奴だな! 素直に美味そうって言えよ」


俺は笑いながら、ブリを大きく一口ほおばり、ふと思い出したように言った。


「……それにしても、詐欺業者に隠されてたカイより、ムギちゃんの方が、見つけるのがずっと難しかったな。『本物の迷子』を舐めんなって話だ」


ヒカルは、おでんのダイコンを箸で掴もうとして、その動きをピタリと止めた。


ヒカルは、部屋の隅に置かれたあの『空っぽの犬用ベッド』をじっと見つめたまま、ぽつりと呟いた。


「……計算外」


ヒカルは視線を逸らさず、小さく1度だけ瞬きをした。


俺はニヤリと笑い、熱々のおでんを大きく一口、口に放り込んだ。


おでんの温かい湯気が揺れる中、ヒカルは再び、静かに箸を動かした。 窓の外では、さくら台の温かい街並みを、冬風が優しく、優しく吹き抜けていった。


(第一部 完)

「ここまで読んでいただきありがとうございました!

『さくら台ペット探偵事務所』も、無事第一部を完了しました。現在第二部を執筆中ですので、公開までしばらくお待ちください。

もし『続きが気になる!』『このコンビ、面白い!』と思っていただけましたら、下部の☆☆☆☆☆から【評価】や、作品フォロー&ブックマークをしていただけると、第二部開始の通知が行くと思います!ぜひ、よろしくお願いします!」

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