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さくら台駅前ペット探偵事務所 「FXで数億稼ぐサヴァンの天才」×「バツイチの40代おじさん」。凸凹バディが挑むのは、迷子のペットと「人間の感情(バグ)」!?  作者: あおにし
CASE10 さくら台の絆と探偵の誇り

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36/39

File 36 捜索開始

「いつも応援ありがとうございます!さくら台駅前ペット探偵事務所、第36話です。捜索を開始します。お楽しみください!」

翌日の早朝。


俺たちは始発電車に乗り込み、さくら台から東へ2駅先、10キロ離れた隣町へと向かった。


『さくら台CIA』のマリさんたちから送られてきた写真によって、ボーダーコリーがこの緑地帯周辺にいることは確定していた。


駅を降りると、そこには広大な緑地帯が広がっていた。


「かなり広いな。ヒカル、どうする? 」


俺が尋ねると、ヒカルは単眼鏡を取り出し、静かに首を横に振った。


「……犬は『軌跡(ベクトル)』で探すのが基本。でも、今回は例外。いなくなってからすでに数日が経過している以上、パニックで走り続けた対象の疲労は限界。……現在も移動を続けていると考えるのは困難」


ヒカルは広大な緑地帯を見渡した。


「休める緑地帯周辺に留まり、身を潜めて休息している確率が極めて高い。……猫の捜索と同じように、この緑地帯という『領域』をしらみつぶしに探す」


「よし、徹底的に『領域』を潰すぞ」


ヒカルの推測に従い、俺たちは緑地帯の捜索を開始した。


俺は機材バッグから『LEDヘッドライト』を取り出して頭に装着し、冷たい冬の風が吹き抜ける緑地帯の茂みや枯れ草の奥、暗い排水溝の中まで、地面に這いつくばりながら徹底的に照らして探していった。


一方のヒカルは、単眼スコープ型の『サーモグラフィ』を構え、広大な自然公園のエリアを冷徹にスキャンしていく。


「……2月のこの低い外気温なら、恒温動物の熱源はノイズなしで赤外線で鮮明に可視化される。……だが、対象と一致する熱源反応は、未だゼロ」


俺たちは丸一日かけて広大な公園を徹底的に探して回った。


だが、犬一匹の姿を見つけ出すのは容易ではない。足が棒になるまで歩き回り、泥だらけになったが、手がかり一つ見つからないまま、無情にも日が暮れてしまった。


「クソッ、これだけ徹底的に草陰から何から探してるのに、見つからねえ……。今日も空振りか」


完全に日が落ち、今日の捜索を打ち切って撤退しようとした、その時だった。


緑地帯の外れにある『高い鉄板の塀に囲まれた敷地』の横を通りかかった時、俺はふと足を止めた。


ごみ収集業者か資材置き場のようなその敷地の中から、複数の犬の鳴き声が聞こえてきたのだ。


「……妙だな。何匹もいるようだが、どの犬の鳴き声も、不自然なほど怯えたように静かすぎる」


俺は不気味な違和感を覚えつつ、その敷地のすぐ外れの道端で、あるものを拾い上げた。


「ヒカル、これ……犬の血と毛がこびりついた、ケージ取り付け用のプラスチック製給水器だぞ」


「……エラー」


ヒカルが、ピクリと眉をひそめた。


「……ただの自然公園の近くに、ペット業者が多頭飼育に使うようなケージの備品が落ちているのは、不自然なノイズ」


ヒカルはそれを証拠袋に入れて機材バッグにしまい込み、俺たちは緑地帯での1日目の捜索を終えて事務所へと帰還した。



その日の夜。さくら台駅前ペット探偵事務所。


「今日も空振りだったな。明日の緑地帯の捜索は、どうする?」


俺が尋ねると、ヒカルは画面に東の緑地帯のマップを表示した。


「……今日は『数日経って疲労しているから休んでいるはず』と推測し、領域を捜索。だが、結果は完全な空振り。……今日の推測は外れた」


ヒカルは静かにそう断定した。


「……領域捜索は失敗。対象は、もう移動している 」


ヒカルはマップ上の緑地帯を指差した。


「明日は、犬の捜索の原則に戻る。CIAのマリさんたちから提供された目撃情報という『一つ目の点』が存在。現地で徹底的に聞き込みを行って『二つ目の点』を探し出し、現在の正確な『ベクトル』を引く」


「なるほど。推測で『領域』を探すのはやめて、足で『点』を見つけ、確実に『ベクトル』を引くってことだな。よし、明日は俺の足の使いどころだ!」


ヒカルのロジカルな方針転換に、俺は力強く頷き、明日の二日目の捜索に備えた。



翌日の早朝。東の緑地帯での二日目の捜索へ向かおうと事務所を出た俺たちの前に、向かいのパン屋からエプロン姿のカスミちゃんが小走りでやってきた。


「おはようございます! 今日もお仕事ですよね。これ、2月の新作です! いま、焼き立てです。お父さんが『節分とバレンタインを融合させた究極のハイブリッドだ!』って……!」


渡された紙袋の中を見て、俺は絶句した。


甘いチョコレート生地のフォンダンショコラから、節分の魔除けの柊鰯のように焼いた『イワシの頭』が何本も天に向かって突き出ている、おぞましい物体だった。


ヒカルはそれをじっと観察した。


「……イワシのDHA・EPAとカカオのポリフェノールの組み合わせは、脳の疲労回復に極めて合理的。……だが、チョコの漆黒の海から魚の頭が突出している視覚的エラーと強烈な生臭さが、スイーツのプロトコルを完全に破壊している。……未定義のカオス……」


プシュー、と。 カオスな情報入力によってヒカルの脳がバグってフリーズしかける。


「うわっ!ヒカルのスーパーコンピューターが親父さんのパンを見ただけでショートした!どんな破壊力だよ、親父さんのパン!」


俺は呆れながらツッコミを入れた。


「でも、いつも味は抜群にいいから、仕事の合間にヒカルと一緒に食べるよ。カスミちゃんありがとう」


「はい。いってらっしゃいませ」


俺は、ヒカルの背中を押して急いで駅へと向かった。

「ここまで読んでいただきありがとうございました!

次回、今度こそ見つけられるか?ヒカルはパンを食べるか……!?


もし『続きが気になる!』『このコンビ、面白い!』と思っていただけましたら、下部の☆☆☆☆☆から【評価】や、作品フォロー&ブックマークをしていただけると、執筆の励みになります!ぜひよろしくお願いします!」

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