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さくら台駅前ペット探偵事務所 「FXで数億稼ぐサヴァンの天才」×「バツイチの40代おじさん」。凸凹バディが挑むのは、迷子のペットと「人間の感情(バグ)」!?  作者: あおにし
CASE1 事務所開業と雷パニックの柴犬

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File 3 遭遇確率1.6%!?

「いつも応援ありがとうございます!さくら台駅前ペット探偵事務所、第3話です。大幅に修正しました。果たして、二人はコロを見つけることができるのか?お楽しみください!」

夜。国道沿いの高架下。俺は頭に装着したLEDヘッドライトで、暗闇を隅々まで照らして回ったが、何もいない。


「……不在。移動速度、疲労度、気象データ、すべて計算通り。ここで休息行動をとる確率、98.4%。……エラー。なぜ?」


ヒカルは単眼ナイトビジョンスコープを下ろし、微かに眉をひそめた。


「ヒカル。お前の計算は『逃げ続ける犬』のデータだろ?雷はもう止んでる」


「……雷鳴の停止。安全な高架下で休息を取るのが最も合理的」


「違う。……コロは、結衣ちゃんに会いたいんだよ」


「自分が逃げたせいで結衣ちゃんが泣いてるんじゃないかって、心配でたまらねえんだ。……だからあいつは、来た道を引き返そうとしてる」


ヒカルは空間の一点を見つめ、それから俺を見た。


「……飼い主への愛着による、疲労を無視した逆走。非合理的。ノイズ。……計算。現在地から自宅への直線ルート上で休息を取っていると仮定した場合の遭遇確率、1.6%。極めて低い」


「上等だ。お前の完璧なデータが外れたんだ、今度は俺の『勘』に賭けろ」

俺は、今来た道を引き返し始めた。



「ここにもいねえな」


「……見つかる確率は1.6%。遭遇する可能性はほぼない」


「いや、絶対にいる。……あっ」


帰り道の路地裏。街灯の届かないブロック塀の影に、丸まってうずくまっている柴犬のシルエットがあった。


「よし、コロ……!」


大声で駆け寄ろうとした俺の腕を、ヒカルが鋭く掴んだ。


「……ストップ。迷子で警戒している個体への大音声での接触は非合理的。『怒られている』と誤認し、再逃走のトリガーになる。……失敗する」


「……!そうか、悪い」


俺が息を殺すと、ヒカルは音を立てずにゆっくりとコロへ歩み寄ろうとした。俺はそんなヒカルの無防備な両手を見て、思わず声を潜めて尋ねた。


「おい、ヒカル。お前、素手で行くのか?手袋はいいのか?」


俺が心配して確認すると、ヒカルは微かに眉をひそめ、ピシャリと言い放った。


「……不要。分厚い化学繊維や革素材。対象の微細な心拍などのバイタルの感知を著しく阻害。さらに、人工的な素材の匂いと物理的な威圧感は、対象に『捕獲される』という警戒心を抱かせる強烈なノイズ。……指先のセンサーを塞ぐのは、非合理的」


「そんなもんか……」


ヒカルは一定の距離を保ってしゃがみ込むと、完全に視線を外し、スッと全身の無駄な力を抜いた。


すると――。極限まで怯えきっていたコロの荒い呼吸が、嘘のように少しずつ落ち着いていったのだ。


「……呼吸数、低下。筋肉の硬直、解除。危険な変数、ゼロ」


動物行動学に基づく、絶対的な安全を示す『カーミングシグナル』。


ヒカルがそっと手を差し出すと、コロはクンクンと鼻を鳴らし、自らヒカルの腕の中へ擦り寄っていった。ヒカルは無表情のまま、泥だらけのコロを抱きかかえた。


「お前……」


「……人間の感情は、情報量が多すぎる。社会の複雑なノイズ。処理に無駄なカロリー消費」


ヒカルはコロの背中を優しく撫でた。


「……だが、動物たちが発する物理的なシグナルには、嘘が存在しない。行動のアルゴリズムが純粋。……だから彼らを探し出すこのタスクには、意味がある」


月明かりの下、いつもは無機質なヒカルの、少し不器用で優しい横顔。


「……そうか」


俺は、ヒカルとコロの頭をポンと撫でた。


「お前の『動物のシグナルを読む力』と、俺の『人間の感情を読む勘』。……案外、最強のコンビになれるかもしれねえな」


「ワン」


コロが小さく鳴いた。


「よし、ヒカル。すぐに大林さんにコロを戻してあげよう」


「……不正解。対象の心拍と呼吸は安定したが、肉球の摩耗と軽度の脱水症状の疑いあり。至急、医療機関での処置と医学的なクリアランスが必要」



深夜の『さくら台動物病院』。 急な来院にもかかわらず、白衣を着た獣医師・白石瑞希先生は、嫌な顔一つせずに俺たちを診察室へ通してくれた。


「夜分遅くにすみません。ペット探偵をやっているイナガキと申します。雷で一晩外を逃げ回っていた迷子犬を保護したんですが、念のため診てもらえませんか」


「ええ、もちろん。大変だったわね。さあ、こちらへ」


瑞希先生は、診察台に乗せたコロの全身を的確な手つきでチェックし始めた。


その時、俺たちの連絡を受け、パジャマの上にコートを羽織っただけの恵美さんと結衣ちゃんが、血相を変えて診察室へ駆け込んできた。


「コロッ……!」


診察台の上で大人しく処置を受けているコロを見て、二人は泣き崩れた。


瑞希先生はパニックになっている大林親子に優しく微笑みかけ、落ち着かせるように静かに口を開いた。


「大丈夫よ。泥だらけだけど、大きな外傷や骨折はないわ。ただ、一晩中逃げ回っていたせいで軽い脱水症状を起こしているし、肉球も少し擦りむいているわね。今から点滴で水分を補給して、消毒をしておくわ」


大林親子はホッと胸を撫で下ろした。


瑞希先生は手際よく点滴と処置を終えると、優しく大林親子に微笑みかけた。


「処置は終わったわ。少し脱水していたけれど、もう命に別状はないわよ。本当によく見つけてもらったわね」


「よかった……本当によかった……っ!」


恵美さんと結衣ちゃんが、ポロポロと涙をこぼして安堵する。


「イナガキさん、ヒカルさん……本当に、ありがとうございました……!」


「当然の仕事をしたまでですよ」


俺が大人っぽく微笑むと、ヒカルが淡々と言った。


「……感謝の意はイナガキさんに。僕の予測アルゴリズムでは、コロの現在座標は高架下。発見できたのは、イナガキさんのデータに依存しない『感情の推測』によるエラーの軌道修正。……僕一人では、不可能」


結衣ちゃんが、涙でぐしゃぐしゃの顔を上げて俺を見る。


「おじちゃん……ありがとう!」


「……おう。コロといっぱい遊んでやれよ」


俺は少し照れくさそうに、結衣ちゃんの頭を撫でた。俺と離れて暮らす息子には、もう5年も会っていない。最後に会ったころは、ちょうどこのくらいの背丈だったなと、ふと思い出しながら。

「ここまで読んでいただきありがとうございました!

次回、事務所開業の裏話が!?


もし『続きが気になる!』『このコンビ、面白い!』と思っていただけましたら、下部の☆☆☆☆☆から【評価】や、作品フォロー&ブックマークをしていただけると、執筆の励みになります!ぜひよろしくお願いします!」

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