Part6
___街中 避難中___
かおりは遥冴の指示に従い天由姉弟達を連れてCountryFestivalの会場から逃げ出し、車を走らせていた。
車の後ろでは不安と恐怖を感じた姉弟達の怯えがひしひしと運転しているかおりに伝わっている。
会話はなく、みんなが俯いている。
一人だけ現場の中継を見ているが、その表情は決して良くはなかった。
「みんな大丈夫ですか?」
「「…………」」
かおりが話しかけても得られる答えは沈黙だけだった。
それもそのはず、初めての経験で自分達のお父さんと一人の姉弟が危険な場に残っていると言うのだから。
家族が大好きな姉弟故に思い詰めしまうのかもしれない。
「デュナ、自動運転頼める?」
「もちろんです、早く皆さんを落ち着かせてあげてください。気は沈んでますが心拍は上がり続けています」
「わかった、ありがとうね」
「いえいえ、結構ですよ」
かおりはハンドルから手を離して、運転席から後部座席に移動する。
「よいしょと、皆さん。みんな考える事は同じなんですね」
「「…………」」
「家族が大好きで、家族が危険な目に会うと自分の事のように感じてしまう。でもね、みんな大丈夫ですよ。
心配はいりません。現地には華蓮さんや鶴見さん達もいます。
それに……遥冴くんが居るんですよ? ここだけの話、この世で一番安全な場所は彼と一緒に居ることですから___」
「どうしても、そんな事が言い切れるんですか?」
「………………」
「どうして言い切れるんですか? もしかしたら死んじゃうかもしれないのに、もしかしたらもう会えないかもしれないのに、なんで笑ってるんですか?
……私達を安心したさせようとしてる為の気遣いだとは分かってますが、流石に……」
かおりの話を聞き最初に口を開いたのは、長女の妃乃だった。そして妃乃の声につられてなのかは分からないが他の姉弟達は声を発することはしなかったが、かおりの顔を一点に見つめていた。
しかしかおりはその様子を見てさらに笑みを零した。
姉弟達は逆にかおりのその様子を見て戸惑いが隠せていなかった。
「妃乃ちゃん、遥冴くん達は死にませんしまた会えます。彼は……いいえ、彼達はそういう人です。どんなイレギュラーが起こったとしても、必ずです。
希望的観測ではなく、絶対なんです」
「「………………」」
「不安に感じるのも分かります。でも帰ってきます、必ずです。何があってもです。
だから信じてください。私ではなく彼を……パパを信じてあげてください」
かおりの言葉に納得したのかしてないのか…それは分からないが心做しか姉弟達の顔から緊張がほぐれたように見受けられた。
次の瞬間……車が急停車した。
「デュナ? 何かあったの?」
「道を変えます、この辺り半径三十キロ圏内にコードブラック相当の生体反応を検知しました」
「えっ! コードブラックってあの時依頼じゃ……」
デュナは車のハンドルを切り別ルートを走り出した。天由姉弟達はデュナとかおりの会話内容を聞き頭に疑問符を浮かべていた。
コード…ブラック……初めて聞く単語に姉弟達はお互い目を見合わせていた。
「デュナ! その生態反応をパソコンに送ってくれる?」
「わかりました、少々お待ちください」
「うん…………もし本当にコードブラック相当なら、いち早く伝えなえればなりません…」
「___送信完了しました。かおりさん」
「ありがとう、デュナ!」
かおりは早速送られてきた情報を元に解析を始めた。生体反応の分析、心拍や血脈のパターン全てを解析しだす。
片手に無線の用意をしながらパソコンをいじるその姿に姉弟達は落ち込んでいる暇は無いのではと感じ出していた。
「これって……コードブラック所じゃないですよ…」
「かおりさん、何かあったんですか?」
「何もないといえば嘘になりますが、恐らくは大丈夫だ思います」
かおりは妃乃の問に答えながら無線をつける。
〈もしもし、聞こえますか? かおりです〉
〈かおりさん! 大丈夫ですか? CountryFestival の開催地で襲撃が起こったと報告を受けたのですが〉
〈私達は大丈夫です。現場には遥冴くんと遥兎さんを抜く四英の皆さんが残って対処しています〉
〈わかりました、一応こちらでも原因を探っているのですが、一点気になる事と言いますが目を逸らしたい事実がございまして〉
〈わかっています、コードブラックの件でしょう?〉
〈はい、誠に信じ難いですが……〉
かおりが無線をしていると再び車が急停車をしたと思ったら……
『防衛システム起動』
と不穏な音が車内に響き渡り、かおりも姉弟も大なり小なりはあれど嫌な予感が過ぎっていた。
車の装甲が変化し、トランクから機関銃が現れる。タイヤは仕舞われホバリングのような状態になるり、いつでも空中に逃げる準備が整う。
「デュナ!」
「皆さん、掴まっててください。急いで避難します」
デュナがそう叫ぶと車が宙に飛びたつ。
だが、そう上手くいくはずもなく……かおり達を乗せた車は道路から突如現れた触手の様なものに絡まれ逃げる事が出来なくなってしまった。
「まずいですね……みんなは恐怖で声すら出ないようですし…ここは私が行くしか……」
「いや、待ってください。今……来ます」
「えっ? もしかして!」
かおりは天由姉弟達を抱き寄せながら、デュナの言う事をの意味を知り安心した表情を浮かべる。
すると次の瞬間、空から降り注ぐ無数の光の矛が車を避け触手だけに当たっていく。
「キリリリリリリリ゛ッ!」
「やっぱり、この攻撃は___エリー!」
天から光を放ち、姿を表したのはかおり達の古くからの友人エリーだった。
エリーのおかげで触手が車から離れた一瞬の隙をつき脱出する事に成功し、エリーの真横に車をつける。
「ありがとう、エリー! 助かりました!」
「大丈夫だった? 遅くなっちゃってごめんね?」
「ううん、大丈夫です。むしろ来てくれてありがとうごさいます」
「本当はいっぱい話したいことあるけど、今はこっちをどうにかしないとね」
エリーは光の矛を取り出し、地にいる植物人間に向け戦闘態勢をとる。
奴は下半身が植物、上半身が人間の植物人間。
無数の触手と様々な効果を持つ花粉を使用することが出来る。
だが、弱点として動くことができない事や上半身の胴体部分は通常よりもだいぶ脆いという事があげられる。
「うーん、どうしよう……」
「エリー、どうかしましたか?」
「かおりぃ、ほらだってあいつって倒すとさ……」
「ん? …あぁ、そうですよね。
でしたら、私の力で結界を張りましょうか?」
「うん! お願い!」
「はい、わかりました。それではエリー、気をつけてくださいね」
「はい、行ってきます。えへへ」
エリーは可愛らしい笑顔を浮かべながら、植物人間目掛けて攻撃を仕掛けた。




