殺し屋の末路
◇◇◇
リーパーの能力で姿を消した三人は、館の廊下を走っていた。
しかし光学迷彩も長時間は続けられず、姿が丸見えとなる。
それでも、まだ見つかってはいない。
「俺の超能力も限界だ。光熱カッターが出せん」
「そうか……」
ヴァイパーは何度も壁に穴を開けて逃げ道を確保してきたが、それも打ち止め。
三人は覚悟を決めて、互いに顔を見合わせる。
「……ここまでだな」
「ああ、バラバラに逃げよう」
「運が良ければ、誰か一人くらいは脱出できるかもしれない」
レイヴンは命懸けで時間を稼いでくれた。なので、むざむざ捕まるわけにはいかない。
三人は一斉に別方向に走り出す。
「むっ!」
リーパーは気配を感じて姿を消す。あと数分なら、光学迷彩能力をまだ使えた。
角を曲がって歩いてきたのは、紅美と夏美の二人。もちろん武装している
リーパーは両手を広げ、壁にぴたりと身を寄せる。
(早く行ってくれ)
と願いつつ、二人が通りすぎるのを待つが……
「そこニャ!」
「おう!」
夏美が指差した瞬間、紅美の拳がその場所へ叩き込まれた。
鈍い音が響き、顔面が変形したリーパーが現れて倒れ込む。
「ぐはっ! なぜ分かった……」
「勘」
「馬鹿な…………」
「んなわけねえだろ。夏美の鼻からは逃げられねえ……ああ、もう聞いちゃいねえか」
「そうニャ!」
姿は消せても、臭いまでは消せなかった。
「コイツ、まだ生きてるよな? 一応手加減はしたし。拷……尋問は琴音に任せるとするか。想像するとおっかねえな、ブルブル」
「怒った琴音は、本当に恐いニャ……」
怖いもの知らずの二人ですら脅えていた。
夏美は悪さをする度に折檻されたので、骨身に染みている。
ドS尋問部隊の狂華が肉体を責めるのに対し、琴音は捕虜を精神的に追い詰めて、口を割らせるのである。
誰も彼女には逆らえなかった。なにより強い。
その琴音はヴァイパーと向き合っていた。フードを被ったエルフ達が通路を塞ぎ、琴音は顔をさらして前にでる。
ヴァイパーは美しい顔と長耳に驚いたものの、エスパー特有のオーラを見て、敵だと認識した。
「くそっ、くらいやがれ!」
「障壁」
自動拳銃を撃ち放つも、あっさりと銃弾は防がれる。後方にいる三人が琴音を守っていた。
弾を撃ち尽くすと銃を投げ捨て、ヴァイパーは蛇のように襲いかかる。
まだ諦めてはいない。一瞬だけなら拳にプラズマを出せるので、それに賭けた。
「空鎌鼬」
「ぐわああああ!」
ヴァイパーは接近する前に、無数の真空の刃で切り刻まれた。
装甲服はズタズタに裂け、体のあちこちから血が吹き出す。
琴音はエスパーだが、自称「風を操る魔法使い」で、その力は凄まじい。
並の超能力者では相手にならなかった。琴音も優しく降伏勧告を行う。
「降参してください。さすれば、命までは取りません」
「う、うるせえー! この化けもんが!」
「……残念です。渦巻嵐!」
その一言に、琴音の表情がわずかに曇り、必殺技が繰り出された。
次の瞬間、暴風が渦を巻きヴァイパーの体を飲み込む。
「ぐあああああ!」
体は宙へと舞い上がり、そのまま天井へ叩きつけられ、嵐が消えると今度は床に落下した。
もしこれが屋外だったら、天高く打ち上げられて、地面へ激突して即死である。
ヴァイパーはピクリとも動かず、倒れたまま。
「ダメですね、少し感情的になってしまいました。反省です。でもやはり、私達を気遣ってくださるのは、名前を下さったアラシさんだけですね」
「その通りです、リーダー!」
「司令はいつも優しいです!」
「早く大人になってほしい!」
エルフ達はアラシの話で、しばらく盛り上がっていた。
悪口を言ったヴァイパーは完全に無視され、後からきた部隊に担架で運ばれていく。
「くそ、くそ、くそ! どうしてこうなった⁈」
ファントムは自分の能力をフルに使い、敵の位置を探りながら逃げ回っていた。
戦闘力がないので戦おうとはせず、ひたすら逃げて、身を隠すことだけに徹する。
しかし館にいる兵士の数は多く、どんどん逃げ場はなくなっていく。
「嫌な予感は当たってしまった。こんな仕事は受けるべきじゃなかった。ああ、どうすりゃいいんだ⁈」
後悔と絶望がファントムを襲う。呼吸は乱れ、額には冷や汗が流れる。
嘆いてもどうしようもなく、走り回って疲れてしまい、捕まるのも時間の問題だった。
「まだだ、まだ諦めるわけにはいかねえ!」
追っ手が接近してきたところで、ファントムは窓ガラスを破って外へ飛び出した。
当然、音を立てれば気づかれる。
「外に逃げたぞー! あっちだ!」
「絶対に捕まえろ!」
一斉に天女団の兵士達が集まってくる。機甲羽衣の動きは速い。
「これでもくらえ!」
「ま、眩しい!」
ファントムは女達を引きつけてから、閃光弾を投げつける。逃げるための道具は温存していたのだ。
続けて特殊煙幕弾を放り投げると、濃い煙が館の庭を覆い、赤外線スコープや熱源探知は効かなくなる。
「今だ!」
ファントムは塀の上へワイヤーアンカーを撃ち込み、一気によじ登る。
あとは向こう側へ飛び降りるだけ。逃げ切れたと思い、ホッとしてしまう。
「やった! あ…………」
ダダーン! と複数の銃声が木霊し、ファントムは撃たれて転落した。
待ち伏せしていた狙撃兵達にやられたのである。即死だった。
投降していれば命は助かったかもしれない。だが、生き延びたとしても死刑か終身刑だっただろう。死ぬのが遅いか早いかの違いだ。
人を金で殺し続けてきた男は、その報いを受けたのだ。
最後に残ったのは、リーダーのレイヴン。彼はアラシと闘っていた。
◇◇◇
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