ご機嫌取りは一苦労
「死ね! 死ね! 死ね!」
「おらおらっ! くたばりやがれぇ!」
四人は狂ったように銃を乱射しまくる。招待客達は悲鳴を上げ倒れて……いかなかった。
撃った銃弾は人の体をすり抜けていく。
「なにっ⁈ 射撃停止!」
「これは一体……」
「ようこそ、地獄のパーティに」
俺は四人に向かって、わざとらしく挨拶をした。
――時は遡る。
アルバートの独立宣言が終わった後、俺はホセリアに提案した。
「これで共和国の上層部――上級評議員だったか? そいつらは絶対に黙ってはいないぞ。俺の時と同じように、邪魔者を必ず消しにくるはずだ。だから、俺達に護衛をやらせてくれないか? ホセリア。敵が超能力者なら力になれると思う」
「ありがとうございます、アラシさん。それではお爺様に連絡してみます」
話はすぐにつく。
新生惑星機構の総裁ともなれば、殺し屋やテロリスト連中から、命を狙われるのはわかりきっていた。
独裁者は暗殺が好きだからな。
もし敵がエスパーなら、並のボディガードでは守り切れないので、ホークブルク家は天女団を護衛として雇うことになった。
俺としても借りを返せるので良いのだが、例によって人選は揉めに揉める。
「私が行きます!」
「いや、ここは私でしょう!」
今回は俺が独断と実力で選んだ。大人数は必要なく、対超能力戦を想定し、琴音とエルフ部隊を連れていくことにした。
「それでは、魔法で敵を倒して見せましょう。うふふふ」
笑いながら琴音はうそぶく。頭も良いので、臨機応変に対処できるだろう。
これで戦力は十分だが、それでも同行をねだる者達が大勢いた。
「なあ大将、アタイらも連れてってくれよー」
「連れてくニャ!」
紅美と夏美がしつこかったので、俺は根負けした。
仕方なく許可したが、口酸っぱく注意しておく。
「あくまで予備部隊だぞ。お前達は前に出るな。今回の任務は要人と琴音達の護衛が最優先だ。それができないなら、連れて行かんぞ」
「了解了解、ぐふふふふ」
「ニャハハハハ!」
抜け駆けする気、満々じゃねえーか。困った奴らだが、いざとなれば頼りになる。
誰よりも闘争心が強く、仲間を守るためなら体を張る覚悟があるからな。
しかし静香と志乃は連れて行けず、不満を爆発させた。
「何で私達が留守番なのよ! アラシ」
「ブーブー! 今度は私を連れて行くって言ったのに、司令がウソついたー!」
二人は子供のように、ふくれっ面になる。簡単には納得してくれそうにない。
俺は頭を下げ、ひたすらなだめるしかなかった。
「ごめん、すまん、許してくれ。今は開拓開発の方が大事だから、二人に離れられると、計画が立ちゆかなくなる。それに多分……になるだろうから、それの準備も進めてほしい」
俺はダメ亭主のように、ひたすら手を合わせて拝み倒した。この方法しか思いつかなかった。
二人ともしばらくグチグチ文句を言っていたが、やがて大きくため息をつく。
「はあー、もう仕方ないわね。行ってきなさいアラシ」
「司令、将来の貸し二発にしておきます。利子もつけようかなー」
「あ、ああ」
何の事かは分からなかったが、取りあえず静香と志乃は我慢してくれた。
戦うより部下に気を配る方が疲れる。機嫌を取らんと拗ねるから大変。
こうして俺は護衛部隊を引き連れ、カロリーゼへとやってきた。
この間に共和国はちょっかいを出してきたようたが、ホークブルク家の方が、一枚上手だったようだ。
ただ立て続けにテロに失敗すれば、面子と意地にかけても、より過激な手段にでてくるだろう。
案の定、ホークブルク家の情報局から、ゴリオシという奴が殺し屋を雇ったとの情報が入った。
最後の鎮魂歌という通り名で、暗殺成功率は高いらしい。
エスパー集団で間違いないだろう。そしてココにやってくるはず。
俺は当主のエドワードとアルバートに、この件で相談することにした。
顔を合わせるなり謝ってきたので、手を上げて制した。
「もう謝罪は十分だ。それより、暗殺者の対策を話し合おう」
「そうだな、今後の話もある」
俺達は対等の立場で意見を交わした。話してみるとアルバートとは気が合う。
もしホセリアと出会っていなければ、暗殺者になっていたのは俺の方だっただろう。
だが今は、ホークブルク家を守る立場になっている。運命とは皮肉なものだ。
何度も話し合って作戦が決まり、俺は二人と握手を交わす。
「孫をよろしく頼む、アラシ殿」
「娘はまかせたぞ、アラシ」
「ああ? 粗略には扱わんし、ホセリアの警護も万全にしておく」
なぜか二人は顔を見合わせ、意味深な笑みを浮かべていた。意味がわからん。
それから、機構に加盟した各国との会合は、バーチャル空間で密かに行われた。
表向きには、別館で大規模な会合を開くことになっている。
偽情報を流して罠を張る作戦だった。
宇宙港を毎日監視し、やってきた暗殺者達を発見しマークした。いくら姿を消そうとも、探知能力を持つ俺やエルフ達の目はごまかせない。
そして当日。
罠を完璧にするため、アルバートと各国の代表には、目立つように高級車で館へ入ってもらった。
館に入るとすぐに別のワゴン車へ乗り換え、遠くへ離れてもらう。
つまり館に要人は一人もいない。あとは罠にかかったネズミを始末するだけだ。
館は既に完全包囲している。たとえ塀の外へ逃げ出しても、狙撃兵が待ち構えていた。
蟻の這い出る隙間もなく、絶対に逃がしはしない。
殺し屋達は屋根から侵入し、床下を通って誰もいないパーティ会場へと向かった。
やがて会場で銃を乱射するが、誰にも当たることはなかった。なにせ全て立体映像だからな。
ハードライト・ホログラムは質感と触感も少し再現するので、エスパーでも偽物とは気づきにくい。
流石はホークブルク家と言うべきか。
四人が大広間で驚いていると、ホログラムが一斉に消えた。
代わって姿を現したのは、俺と機甲羽衣をまとった部下達だ。
出入り口は完全に押さえている。もう逃げ場はなく、俺は降伏勧告をする。
「武器を捨てて、投降しろ!」
「誰が従うか! お前ら逃げろ!」
「すまん! レイヴン……」
リーダーらしき男が立ちはだかり、その隙に三人の姿が忽然と消えた。
直後、壁に丸い穴が開く。光学迷彩と切断能力だな。
自分だけが残って部下を逃がすとは大した奴だ。だが、容赦はしない。
俺は前に出てレイヴンと対峙する。
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