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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第三章 争乱編

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ミッション・暗・ポッシブル

『それでは、ご依頼を承ります』

「こいつらを全員始末しろ」


 ゴリオシはエドワードとアルバートを含む名簿と、顔写真データを送った。


『……これはこれは、ホークブルク家の皆様ではございませんか。申し訳ありませんが、通常料金ではお引き受けできません。特別料金となりますが、よろしいでしょうか。なお、半額を前金で頂きます』

「ちっ、いくらだ?」


『お見積もりは三百億ゼニスでございます。通常料金の十倍ですが、御依頼の危険度を考えれば妥当な金額かと存じます』


「……守銭奴め。おら、送金してやったぞ」


『ご入金を確認いたしました。これにて契約は成立いたしました。それでは、吉報をお待ちください』


 通信依頼は終わった。法外な報酬にはムカついたが、ゴリオシは笑みを浮かべていた。


「これで、あいつらも終わりだ。はーっはっはっ!」


 ラスト・レクイエムは何度か利用しているが、失敗したことはない。

 もはや勝ったつもりで、ゴリオシは祝杯をあげていた。



「諸君、仕事の時間だ」

「標的はホークブルク家。油断はしない」

「いつもどおりだ。静かに入り、静かに終わらせるだけさ」

「……うーん、何か嫌な予感がする」


 ラスト・レクイエムは四人のチーム。

 コードネームはレイヴン・リーパー・ヴァイパー・ファントムで、全員超能力者(エスパー)だった。

 それぞれ異なる能力を持ち、互いに協力して仕事をこなしてきた。

 ファントムが不吉なことを言ったので、リーダーのレイヴンが静かに否定した。


「弱気になるな。今まで失敗したことがあったか?」

「そうだな……一度もない」

「よし、行こう!」

「おうっ!」


 ホークブルク家の当主達がいる、惑星カロリーゼに直接侵入するのは困難だった。

 そこで彼らは、他の中立惑星からの輸送船で密航することにした。定期便である。

 リーパーが光学迷彩能力(カメレオン)で四人の姿を消し、船内に忍び込む。

 誰にも気づかれることはなく、到着するまでの間、四人は貨物室で静かに過ごす。


 宇宙港に着くと、検査と検問を見事にすり抜け、そのまま外へ出た。

 携帯端末(スマホ)で無人の闇レンタカーを手配し、四人は乗り込む。

 どんな国にも裏社会と犯罪組織は存在し、それは治安の良いカロリーゼも例外ではない。


 違法な闇業者はひっそりと活動していて、金さえ払えば車でも武器でも、何でも買うことができた……質は怪しいが。


 四人は手配しておいた、潜伏先へと車を走らせた。

 セーフハウスに着くと、スマホのスマートキーを使ってドアを開け中に入る

 部屋は狭いが、頼んでいた武器と通信機器、パソコンなどは一通り揃っていた。

 仮のアジトとしては十分。


「よし、始めるか」


 ファントムはパソコンを立ち上げ、情報収集を始めた。


 アクセスしたのは、アンダーグラウンドサイト。そこでは様々な裏情報が、売り買いされていた。

 ホークブルク家の情報を探ってみると、新生惑星機構に加盟した惑星の代表を集め、会議が開かれることが分かった。


 もちろん当主達も参加する。狙うならこの日しかない。


「厳重な警備が敷かれるだろうが、標的が揃うから始末するには好都合だ」

「やるしかないな。計画を立てよう」


 場所はホークブルク家の別館。すでにかなりの警備員が配置されてるらしい。

 しかし、館の見取り図や人員の配置情報は大金で入手できた。これらはハッカーが盗んだ物もあれば、関係者が情報を売っていたりする。誰も信用はできない。


「よし、これなら侵入できるだろう」


 ファントムは犯罪用AIを使い、侵入から犯行、脱出までを秒単位でまとめた行動計画を作成した。

 四人は警備の死角や監視カメラの位置、脱出経路を頭に叩き込み、VRシミュレーションで何度も作戦を繰り返す。


 彼らはプロで、ぶっつけ本番で行動するようなド素人ではない。

 リハーサルは完璧だった。失敗など(つゆ)ほどもありえない。



 ――そして当日の夜。


 四人は離れた場所から双眼鏡で、館の様子をうかがっていた。

 会場には次々と高級車が到着し、各惑星の代表達が館へ入っていく。


「むっ! エドワードが来たぞ!」

「よし、作戦開始だ!」


 四人はうなずき行動を開始する。

 まずはワイヤーを館まで張り、滑車を使って縄を滑り、屋根へと降り立った。

 リーパーが全員の姿を隠してるので、見つかることはない。

 それでも足音を立てないように、注意しながら館の中に忍び込む。


 四人は入った部屋からは出ずに、ヴァイパーが床にしゃがみこんだ。


「光熱カッター」


 ヴァイパーの指からプラズマの刃が迸り、床板を円を描くように切り裂いていく。

 何でも切断できるが効果範囲は狭い。戦闘向きではないが、壁や床に脱出口を作るにはもってこいの能力だった。


 床下は真っ暗な空洞で、見張りもいなければ警報器もないので、発見される恐れはない。

 暗視ゴーグルを使い、身を低くしてパーティ会場へと向かう。


 ナビに従い天井に着くと、通風口からスネークカメラを差し込み、レイヴンはパーティー会場の様子を探った。


「……標的は揃っているようだが、本命がまだ来ていない。待つしかないな」

「周りの警備の様子はどうだ? ファントム」


「ちょっとまってくれ、超視覚(オムニ・ビジョン)超聴耳(オムニ・ヒアリング)……」


 ファントムは探知能力で、館内の会話を聞き、警備員の動きを探った。


「気づかれた様子はなく、巡回ルートも変わってはいない。しかし何か妙だ……」

「どうした?」

「会場内の人の気配が薄い。声は聞こえてるし、居ることは確かなんだが……」

「たぶん気のせいだ。大仕事だから緊張してるんだろ」

「そう、だな……」


 ファントムは不安を拭い切れなかった。彼には少しだけ予知能力もあったからだ。

 その勘が当たっていたと、気づいた時には遅かった。

 考える間もなく、エドワードが現れる。


「よし、決行だ!」

「おう!」


 姿を消した四人は通風口から素早く降りて、エドワードとアルバートへこっそりと近づく。

 短機関銃(サブマシンガン)の射程に入ったところで、レイヴンが無言で合図する。


 四人が一斉に引き金(トリガー)を引くと、激しい銃声が会場に響き渡った。

この作品がお気に召しましたら、ご感想などお寄せいただけましたら幸いです。今後の執筆の励みになります。


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