ミッション・暗・ポッシブル
『それでは、ご依頼を承ります』
「こいつらを全員始末しろ」
ゴリオシはエドワードとアルバートを含む名簿と、顔写真データを送った。
『……これはこれは、ホークブルク家の皆様ではございませんか。申し訳ありませんが、通常料金ではお引き受けできません。特別料金となりますが、よろしいでしょうか。なお、半額を前金で頂きます』
「ちっ、いくらだ?」
『お見積もりは三百億ゼニスでございます。通常料金の十倍ですが、御依頼の危険度を考えれば妥当な金額かと存じます』
「……守銭奴め。おら、送金してやったぞ」
『ご入金を確認いたしました。これにて契約は成立いたしました。それでは、吉報をお待ちください』
通信依頼は終わった。法外な報酬にはムカついたが、ゴリオシは笑みを浮かべていた。
「これで、あいつらも終わりだ。はーっはっはっ!」
ラスト・レクイエムは何度か利用しているが、失敗したことはない。
もはや勝ったつもりで、ゴリオシは祝杯をあげていた。
「諸君、仕事の時間だ」
「標的はホークブルク家。油断はしない」
「いつもどおりだ。静かに入り、静かに終わらせるだけさ」
「……うーん、何か嫌な予感がする」
ラスト・レクイエムは四人のチーム。
コードネームはレイヴン・リーパー・ヴァイパー・ファントムで、全員超能力者だった。
それぞれ異なる能力を持ち、互いに協力して仕事をこなしてきた。
ファントムが不吉なことを言ったので、リーダーのレイヴンが静かに否定した。
「弱気になるな。今まで失敗したことがあったか?」
「そうだな……一度もない」
「よし、行こう!」
「おうっ!」
ホークブルク家の当主達がいる、惑星カロリーゼに直接侵入するのは困難だった。
そこで彼らは、他の中立惑星からの輸送船で密航することにした。定期便である。
リーパーが光学迷彩能力で四人の姿を消し、船内に忍び込む。
誰にも気づかれることはなく、到着するまでの間、四人は貨物室で静かに過ごす。
宇宙港に着くと、検査と検問を見事にすり抜け、そのまま外へ出た。
携帯端末で無人の闇レンタカーを手配し、四人は乗り込む。
どんな国にも裏社会と犯罪組織は存在し、それは治安の良いカロリーゼも例外ではない。
違法な闇業者はひっそりと活動していて、金さえ払えば車でも武器でも、何でも買うことができた……質は怪しいが。
四人は手配しておいた、潜伏先へと車を走らせた。
セーフハウスに着くと、スマホのスマートキーを使ってドアを開け中に入る
部屋は狭いが、頼んでいた武器と通信機器、パソコンなどは一通り揃っていた。
仮のアジトとしては十分。
「よし、始めるか」
ファントムはパソコンを立ち上げ、情報収集を始めた。
アクセスしたのは、アンダーグラウンドサイト。そこでは様々な裏情報が、売り買いされていた。
ホークブルク家の情報を探ってみると、新生惑星機構に加盟した惑星の代表を集め、会議が開かれることが分かった。
もちろん当主達も参加する。狙うならこの日しかない。
「厳重な警備が敷かれるだろうが、標的が揃うから始末するには好都合だ」
「やるしかないな。計画を立てよう」
場所はホークブルク家の別館。すでにかなりの警備員が配置されてるらしい。
しかし、館の見取り図や人員の配置情報は大金で入手できた。これらはハッカーが盗んだ物もあれば、関係者が情報を売っていたりする。誰も信用はできない。
「よし、これなら侵入できるだろう」
ファントムは犯罪用AIを使い、侵入から犯行、脱出までを秒単位でまとめた行動計画を作成した。
四人は警備の死角や監視カメラの位置、脱出経路を頭に叩き込み、VRシミュレーションで何度も作戦を繰り返す。
彼らはプロで、ぶっつけ本番で行動するようなド素人ではない。
リハーサルは完璧だった。失敗など露ほどもありえない。
――そして当日の夜。
四人は離れた場所から双眼鏡で、館の様子をうかがっていた。
会場には次々と高級車が到着し、各惑星の代表達が館へ入っていく。
「むっ! エドワードが来たぞ!」
「よし、作戦開始だ!」
四人はうなずき行動を開始する。
まずはワイヤーを館まで張り、滑車を使って縄を滑り、屋根へと降り立った。
リーパーが全員の姿を隠してるので、見つかることはない。
それでも足音を立てないように、注意しながら館の中に忍び込む。
四人は入った部屋からは出ずに、ヴァイパーが床にしゃがみこんだ。
「光熱カッター」
ヴァイパーの指からプラズマの刃が迸り、床板を円を描くように切り裂いていく。
何でも切断できるが効果範囲は狭い。戦闘向きではないが、壁や床に脱出口を作るにはもってこいの能力だった。
床下は真っ暗な空洞で、見張りもいなければ警報器もないので、発見される恐れはない。
暗視ゴーグルを使い、身を低くしてパーティ会場へと向かう。
ナビに従い天井に着くと、通風口からスネークカメラを差し込み、レイヴンはパーティー会場の様子を探った。
「……標的は揃っているようだが、本命がまだ来ていない。待つしかないな」
「周りの警備の様子はどうだ? ファントム」
「ちょっとまってくれ、超視覚・超聴耳……」
ファントムは探知能力で、館内の会話を聞き、警備員の動きを探った。
「気づかれた様子はなく、巡回ルートも変わってはいない。しかし何か妙だ……」
「どうした?」
「会場内の人の気配が薄い。声は聞こえてるし、居ることは確かなんだが……」
「たぶん気のせいだ。大仕事だから緊張してるんだろ」
「そう、だな……」
ファントムは不安を拭い切れなかった。彼には少しだけ予知能力もあったからだ。
その勘が当たっていたと、気づいた時には遅かった。
考える間もなく、エドワードが現れる。
「よし、決行だ!」
「おう!」
姿を消した四人は通風口から素早く降りて、エドワードとアルバートへこっそりと近づく。
短機関銃の射程に入ったところで、レイヴンが無言で合図する。
四人が一斉に引き金を引くと、激しい銃声が会場に響き渡った。
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