表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第三章 争乱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/101

宇宙を揺るがす声明

 俺は基地の無線とネット回線を使い、全軍に通達した。


『天女団はホークブルク家と和平協定を結ぶこととなった。明日のために、過去のことは水に流す。条約に基づき、開拓船団が順次ココに来る予定だ。各隊は受け入れ準備を進めてくれ。窓口はホセリア代表とクララ先生なので、何かあれば相談するといい。これから忙しくなるだろうが、みんなよろしく頼む』


「了解!」


 皆生き生きと、仕事に取り組んでいた。特に静香と志乃は大忙しだ。

 侵攻計画から開発計画に変わったので、最初からやり直しになる。

 やってくる開発団体が大半の仕事をしてくれるだろうが、建設地の選定や現場の支援部隊の割り振りは必要だ。

 大変な作業だが、二人の顔は明るい。


「敵から奪うよりずっと実入りが大きいから、これくらい苦にならないわよ、アラシ」

「軍事と違って本部AIに任せられますし、何より全員参加できるので、(いくさ)のように人選で悩まなくて済みます。かなり楽ですよ、司令」


「そうか、味方に犠牲が出る心配もないしな。無理しないで頑張ってくれ」


 俺は二人の元を離れた。方針を決めたら、あとは部下に任せるだけ。

 その上で現場を見て回り、問題がないかを確認する。全てを丸投げして、後から事件や事故が起きてからでは手遅れだからだ。

 どこぞの政府や企業のように、無責任な者にはなりたくない。

 まあ超能力があるおかげで、危険を察知できるし、念力で対処もできる。

 俺は傭兵団のアジトから助けた者達のところへやってきた。

 女性と子供全員に集まってもらう。


「そろそろ、みんなに今後の身の振り方を決めてもらいたい。ホークブルク家の保護団体には話を通してるから、希望者は受け入れてもらえることになった。ここに残るのもよし、新しい土地で暮らすのも自由だ。できるだけ支援させてもらう」


 すかさず代表の女性が言ってくる。すでに相談して決めていたようだ。


「できれば、このままここに置いてください。私達に身寄りはなく行く当てもありません。それに、今の宇宙でこの星ほど安全な場所はないでしょう。食事の心配もありませんし、どうかこれからも働かせてください」

「僕達も残りたいです。親の顔も知らないし、お姉ちゃん達と離れたくありません。いつか近衛隊に入って、アラシ兄ちゃんに恩返しをしたい」


「そうか、分かった。ならば今まで通り働いてくれ。あと教師もくる予定だから、みんな勉強するように。俺の役に立ちたいなら、しっかり学べ」


「うええー……」

「はーい!」


 不満そうな声と元気な返事が上がり、笑いがおきた。


 次に俺は通信室へ向かう。


「……ええ、はい、よろしくお願いします」


 ここにホセリアがこもりきりで、グループ会社の担当者達と、ひっきりなしに連絡を取り合っていた。

 真面目なのは感心するが、激務で体を壊したら元も子もなく、少し心配になってくる。

 天女団の中にも仕事中毒(ワーカーホリック)がいるので、働きすぎてる者は無理矢理休ませている。

 だからこそ、俺の仕事は見回りなのだ。ホセリアにも忠告する。


「いい加減、休んだらどうだ。働き過ぎだぞ、倒れられては困る。協定は結んだし、一度実家に帰ったらいいんじゃないのか?」


「お気遣いありがとうございます。ですが、私はここに骨を埋める覚悟で参りました。もう実家へ戻るつもりはありません」


「おいおい……」


 ホセリアの覚悟は生半可ではなかった。事業が始まらないうちは、安心できないのだろう。

 自分の身を約束の担保にしている。自ら人質になりに来たようなものだった。


 そこまでする必要はないと思ってるが、ホセリアは頑固なので、俺の言うことを聞きそうもない。

 そこでクララ先生に頼むことにした。仲が良いので、少しは耳を傾けてくれるだろう。


 また、奸智にたけた弥生にも頼んだ。頭の良い者には頭の良い者をぶつけるしかなく、そして少しひねた考えが必要だった。


「ふふふ……わかった、アラシ。ようはホセリアを休ませればいいんだな?」

「……ああ、そうだ」


 不安だったが、弥生は見事に――いや、劇薬じみたやり方で問題を解決してみせた。

 悪知恵を働かせた弥生は、建設予定地の視察と称してホセリアを引っ張り回し、へとへとに疲れさせて眠らせたのである。


 いくら頭が冴えていても、長時間歩き回れば体は正直だ。最後はぐっすりと寝るしかなかった。


「……睡眠薬を盛る手もある」


「それはやめろ」


 成果はあったが、代償も大きかった。やはり弥生はヤバいな。



 ――それから数日後。


 第一次輸送船団が到着する頃、ホークブルク家から重大な発表が行われることになった。

 それは全宇宙へ向けた生放送による声明で、多くの人々の注目を集めることとなる。

 俺達も新たに配備された超距離通信衛星で、その発表を見守っていた。


 モニター越しの記者会見場に映ったのは、ホセリアの父であるアルバート・ホークブルク。

 見たところ相当なやり手だ。立っているだけで圧するような存在感があった。

 やはり、ホセリアの父親だけのことはある。


 代々の婿養子は優秀だが、直系の男子はろくでなしばかりだと、ホセリアは吐き捨てるように言っていた。

 愚兄の尻拭いにココにきたので、その気持ちは分かる。


 マイクの前で、アルバートは口を開く。


『前置きはおいて、先に結論を申し上げる。我がホークブルク家は、独立連合共和国と決別する!』

『おおっ!』


 会場内はどよめきが起こり、フラッシュが激しく明滅した。


『今ここで共和国を断罪する。時空歪曲事変スペース・ディストーションに対して責任もとらず、軍閥の横暴を放置し多くの民を苦しめた。あまつさえ、荒廃した地方惑星の復興を後回しにし増税を強いた。我々の救援活動にすら金を取ろうとする始末だ。どこまで民を苦しめれば気が済むというのか! 我々ホークブルク家は、腐敗した国家と歩むつもりはない。本日をもって共和国と決別し、新たな道を歩むことをここに宣言する!』


 宇宙中がざわめく中、アルバートは続けた。


『共和国の大罪はそれだけではない。悪徳政治家どもは各企業から賄賂を受け取り、その見返りに国政を歪めてきた。もちろん証拠はすべて揃っている。後ほど全てを公開する予定だ。本来汚職を取り調べるはずの、軍警察の怠慢も目に余る。なにせグルだからな。特にひどいのは軍と結託した兵器企業だ。数は多いが、あえて二社の名を挙げる』


『どこの会社ですか?』

 記者の質問が飛ぶ。


『それは、ハカイダー・ダイナミクス社とブソウ・インダストリーである。この二社は、パワードスーツ開発と称して出資を募り、その裏で禁断の女のホムンクルスを作って、戦わせていた。しかも戦争博打を行っており、後で慰み物にするつもりだった』


『まじか……』

『それは人道違反じゃないか!』


 会場内は大騒ぎになってしまい、しばらく収拾がつかなくなる。

 俺達は黙って聞いていた。


『これにも証拠はある。なにせ、我が一族の者が関わっていたからな。ホムンクルスの軍隊である天女団の皆様に対し、心より深くお詫び申し上げる』


 アルバートが頭を下げたので誰もが驚いていた。それは俺達も同じ。

 これだけ大々的に、謝罪するとは思わなかった。恐らく現当主の意向だろう。


「こんだけ詫びを入れられたら、許すしかねえよな? 大将」

「そうだな紅美。むしろこっちが返さないと、割にあわなくなった」

「……借りを返さないと、女が(すた)る」

「まったくであります!」


 他にも関わった者達の実名が読み上げられ、これで共和国と兵器会社は大恥をかくことになった。

 否定しても誰も信じないだろう。

 もはや国の信用は地に落ちた。いや、すでにどん底かもしれない。少し胸のすく思いだ。

 演説はしばらく続き、アルバートはこう締めくくった。


『我らに賛同した中立惑星と、共和国より離脱した辺境惑星は、ここに新生惑星機構ニュー・プラネット・オーソリティの成立を宣言する!』

「もし続きが読みたい!」「面白い!」と思っていただけましたら、是非ブックマーク登録や★評価をよろしくお願いいたします!皆様からの応援が、執筆の何よりの励みになります。


テンプレです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ