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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第三章 争乱編

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モノローグ レグナス

 俺の名は、レグナス・レギオン。


 レガリア星の一領主に過ぎなかったが、今はこの宇宙に覇を唱える者だ。

 まずは近くの中立惑星デルデルを掌握し、ここを足がかりにして、他の星に侵略を進めている。


「閣下、侵略ではありません。人聞きが悪い。あくまでも進出と救済です」

 我が友で軍師でもある真田真之が、すかさず口を挟んできた。どうやら俺の言い方が気に入らなかったらしい。


 軍議の最中に始まったドツキ漫才に、将軍達は笑っていた。


「どこが違うんだ?」

「我々は役立たずの共和国に成り代わり、海賊を排除して治安を守り、物流を安定させ、復興にも力を注いでいます。平和的な共存関係なので、占領も征服もしてはいません」


「半ば脅して用心棒を買って出たようなものだろ? 何と言ったかな……ああ、ヤクザだったな。みかじめ料のように、金を民からむしり取っているじゃないか?」


「軍の維持には費用がかかりますから、感謝料として国から頂いてるだけです。向こうで言うところの『思いやり予算』なので、決して無理矢理貰ってるわけではありません」


「払わなかった国はどうなる?」

「防衛の優先順位が下がるかもしれませんな。海賊襲撃時の救援に遅れがでるかも」


「脅しているようにしか聞こえんぞ。やっぱり俺達はヤクザだな」


「いえいえ閣下、本来任侠というのは弱きを助け強きをくじくもので、民から頼りにされる存在なのですよ。我々は義理人情に厚い軍隊です」


「コイツ、開きなおりやがった……」

「お褒めにあずかり光栄です」

「褒めておらん」


 俺達の問答は将軍達に止められた。


「ぶはははははははははは!」

「閣下、軍師殿。もうその辺で勘弁してくだされ。腹が痛くてたまらん」

(いくさ)をしてるかぎり、誹謗中傷されるのは当たり前、それでも人を助けた数だけ笑顔も増えていく。それで十分ではないでしょうか?」

「我々の評価は後世に任せましょう。ヤクザのヒーローでも良いではありませんか」


 俺は笑いながら詫びる


「皆すまない、少し脱線しすぎたようだ。少し自虐的になるのは許してもらいたい。それで現在の状況はどうだ? 軍師」


「無人の囮輸送船と待ち伏せ作戦にひっかかり、海賊達は次々と撃破されております。これも将軍方の指揮によるものでしょう。実にお見事な働きです」


「そうか、皆よくやってくれた。将軍達の忠義と奮戦に、深く感謝する」


「いえいえ、閣下。陰の功労者は軍師殿ですよ」

「全くその通りですな。我らの勝利は、軍師殿の策略と敵情報の提供があってのもの」


「いえいえ、私は特に何もしてはおりませんよ。危険な前線で戦ったのは将軍方です」


 真之は謙遜し、功を誇らなかった。もともとそういう性格なのだ。

 実際、軍師直属の情報機関、幽霊(ゴースト)隠密(ファントム)渡り巫女(ワンダー)がいなければ、全ての作戦は成り立たなかった。


 情報は力である。行き当たりばったりの海賊とは違い、我々は戦う前に勝っているのだ。

 さらに戦闘映像を各惑星に流して、政治宣伝(プロパガンダ)も行う。

 海賊艦が爆破炎上する様子は、市民からすれば実に痛快だろう。溜飲も下がる。

 映像は臨場感と高揚感を与え、人々の心を一つにする。真之は言う。


「ことさらに正義を語る必要はありません。海賊を打ち倒す姿を見せるだけで、人々は自然と我々を支持してくれます」

「そして俺は正義の味方を演じるわけか。やれやれ」

「そうですよ、閣下。役者顔負けの容姿なのですから、爽やかに笑って、愛想を振りまいてください。民衆は強くて格好いい英雄が大好きですから」


「まるで見世物だな、これでは道化だよ」

「政治とはそういうものです。民を恐怖で従わせるより百倍ましです。ファン倶楽部ができたらしめたもの。好感度があれば支配されても、文句一つ言わなくなりますよ」

「お前、腹黒いな……」

「いえいえ、それほどでも」


 友とのやりとりはいつもこんな調子だった。

 茶化してはいるものの、その助言は非情なほど合理的で、最も効率的な方法だった。

 また俺が情に流されるのを(たしな)めている。友の忠言は耳に痛いが、甘言を並べる者よりはるかにマシだ。

 その裏で汚い仕事をさせてるので、済まないと思う。


 海賊を捕まえて情報を吐かせたり、発信器を埋め込んで泳がせたり、顔を変えた工作員を送り込んだりと、かなりヤバい手段を用いている。

 綺麗ごとだけでは戦には勝てない。宇宙を制覇せんと望むなら、それは覚悟の上だ。

 ただ全ての汚名を背負おうとする友に対し、いずれ何か報いたいと思っている。

 まあ当人は拒否するだろうが。



 支配宙域が順調に広がる中、ある艦隊と遭遇した。我らの管轄宙域への無断侵入なので、警告をしたが無視されたため攻撃に踏み切った。

 その艦隊は統率がまるで取れておらず、動きもバラバラだった。我らの敵となるような相手ではなく、戦いはあっという間に方がついた。

 慌てぶりから見るに、何かから逃げてきたのかもしれない。

 そして探知オペレーターが声を上げる。


「閣下、さらに新たな艦隊が接近しています!」


「そうか、先ほどの艦隊を追ってきたのだろう。回線を開け、向こうの指揮官と直接話す」


 モニターに現れたのは、うら若い女性だった。美人なのは確かだが、目を奪われるような魅力を持っていた。

 凜として気高い。俺は名乗って警告した後、しばらく彼女に見とれてしまった。


「私の名はサラ・イシュタール。こちらに交戦の意思はなく、速やかにこの宙域から離脱する」


「サラ司令の武運を祈る」


 互いに敬礼して話はついた。艦数はこちらが多いが、無意味な戦いをする気はなかった。

 なにより彼女を失うのは惜しい。去るのを艦橋で見送った後、軍師が淡々と告げる。


「命拾いしましたな、閣下。今のが軍閥を潰して回っている、魔女姉妹の長女ですよ。もし戦っていたら、被害は相当な物になったでしょう」


「なにっ、あれが噂の⁈ この宇宙で三姉妹を知らぬ者はおらず、その名を聞くだけで、共和国軍は震え上がる。だから警告を無視してまで、海賊が逃げ込んでくるわけだ」


「今となっては、彼女らが宇宙最強エスパーでしょう。決して敵に回されぬよう進言いたします」


「そうだな、ならば俺の妻にしよう」

「はあ⁈ 正気ですか、閣下?」


 いつも冷静な真之が慌てたので、少し気が晴れる。

 かなり驚いたようだ。


「有能な敵は味方にすべし、と軍師は常に言ってるじゃないか。結婚ほど強固な結びつきはないし、彼女らを味方につけたとなれば、他の勢力も手を出しにくくなる。もっとも合理的な手段じゃないか? ふふふふふ」


「相手にもよりますよ。そう簡単にアレが落とせるとは思いません」


「いいじゃないか。苦労があってこそ、手に入れた時の喜びも大きくなる。何より、俺は彼女が気に入った。どんな手を使ってでも手に入れたい」


「やれやれ、ご随意に」


 真之は呆れかえっていた。止めたところで無駄だと分かっているのだろう。

 俺も頑固で欲深いからな。宇宙もサラも手に入れてみせる!

この作品がお気に召しましたら、ご感想などお寄せいただけましたら幸いです。今後の執筆の励みになります。

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