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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第三章 争乱編

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モノローグ サラ5

「いったわよ! ルナ」

「任せて、お姉ちゃん」

「残りは撃墜していいんだよな? 姉貴」

「ええ、構わないわリジー。もう手加減は無用よ」


 私達は戦闘艇で戦っていました。大規模な宙戦で、味方もたくさんいます。

 海賊と化した軍閥軍に対抗するため、被害を受けた辺境惑星が一致団結し、新たな連合軍を結成したのです。

 もう単独では、海賊の襲撃を防ぎきれませんので、協力することになったのです。


 その名は、「辺境星防衛軍」。


 中心となったのは私達の天馬団です。今までの戦闘経験と実績を買われ、全軍の指揮権を委ねられました。

 私達は引き受けるしか、ありませんでした。

 数はともかく寄せ集めの軍隊では、やられるだけですので、戦えるようになるまで面倒を見るしかありません。

 いつになったら私達は、隊長を探しに行けるのでしょうか?

 あれから進展はあったのですが、今はイラついていて敵に八つ当たりしています。


「逃げた、勝ったぞ!」

「やったあぁ! 初勝利!」

「まだです! 直ちに追撃しなさい! 逃してはなりません!」

「はっ! すみませんでした、サラ司令」


 勝利に浮かれるのは仕方ないので、ある程度は大目にみています。

 戦闘が一段落したところで、艦隊の撤収を開始しました。この宙域の海賊は壊滅したものの、味方に被害は少し出ました。胸が痛みます。

 前線基地への帰還航海は、副司令に任せました。辺境惑星から選ばれた方です。

 少しでも経験を積ませないと。


「あとはお願いね」

「はい、了解しました」


 私達は旗艦となったファミリー号で、休むことにします。

 とは言っても戦いの興奮はおさまらず、愚痴の言い合いになってしまいました。

 少し前、隊長からの念話(テレパシー)が届き、私達はこれに大喜びしたのですが、その中身が問題でした。


『念話は届いた。サラ、リジー、ルナが無事で何よりだ。クラリスとミレーユさんにも、よろしく伝えてくれ。あと悪いが居場所は言えん。まだ俺を狙ってる敵に知られたら、仲間達(・・・)が巻き添えになる。また会える日が来ることを、心から願っている』


 一見すれば何でもない内容ですが、深読みするとあることが分かります。


「隊長は恐らく共和国を警戒してるのでしょう。私達が軍閥をボコボコにしてますが、誰かが暴走して、また危険な兵器を使うかもしれない。身を守るには仕方ありません」


「力のある超能力者であれば、念話は盗み聞きされちゃうからね。お兄ちゃんの居場所が売られちゃう。これは秘密にするしかないわ……残念だけど」


「それもクソ共和国のせいだ! アタイ達の邪魔ばかりしやがって! こうなったら徹底的に叩きつぶしてやる! それはともかく、兄貴の言ってる仲間って……まさか⁈」


「女ね……」


「女でしょう。はあ……隊長のことだから、また考えなしに人助けして、相手から惚れられてるんでしょう。私達のように命を救われたら好意を抱くのは当然よ。頭が痛いわ」


「しかも今回は一人や二人じゃないわよ、サラお姉ちゃん」


「ええ、ルナの言うとおりでしょう。幸いなのは隊長が少年なので、今のところは手を出されてはいないはず。ただ、いつまでも放置できないわ」


 これは女の勘ですが、まず間違いありません。早く迎えにいかないと、隊長の貞操が危ない!


「大丈夫だ、姉貴。共和国を片付けたら、泥棒猫は全部アタイが追い払ってやる」

「頼むわリジー……と言いたいけど、女が絡むとそう簡単にはいかないでしょう」

「お兄ちゃんは優しいからね。かなり揉めそう」


 この場にいない隊長に文句を言いながら、私達は本音をぶつけあって、日々のストレスを解消しました。

 そうでもしないとやってられない。妹達がいて本当に良かった。

 落ち着いたところで、ルナが星間情報網(ステラネット)を使って、念話の内容を電子メールでクラリスに送りました。

 念話の来た方角から、隊長の居場所は絞りこまれてきましたので、捜索はクラリスに任せるしかありません。

 私達は動けませんが隊長を見つけ次第、攫いにいくつもりです。


 また防衛軍が帝国軍と同盟を結ぶ計画も進められています。

 というのも、軍閥軍がネメシス光星帝国にまで、手を出し始めたからです。

 私達に追い詰められたせいか、見境なく攻撃しています……く、狂ってやがる。

 病院送りにする前に、あの世に送るしかありません。


 この状況下で、共和国の臨時政府と残った正規軍はまともな対策を打ち出せず、対応は後手後手に回っていました。

 正規艦隊が軍閥に近づけば逃げられてしまい、共和国の主要惑星である四つが、政府に一切協力しなかったからです。首星の住民ですら、命令に従わない者もいます。

 この期に及んでも上流階級は利権を守ろうとし、地方惑星から利益を吸い取ることしか考えていません。

 自分達を、上級星民とでも勘違いしているのでしょう。

 本当に腹が立ちますが、いつまでも長くは続かないはずです。

 私達に所属する辺境惑星は中央への納税を止めました。文句を言ってきますが、無視するだけです。

 どうせ何もできない、クズ民主国家ですから。 



 戦いの日々が続く中、私達は海賊を追ってるうちに遠くまで来てしまい、ある艦隊と出くわしました。

 その艦隊は瞬く間に、海賊艦を沈めていきます。かなり強い。


 私は味方に停止を命じ、その艦隊の出方をうかがいました。

 すると通信が入ってきたので、回線を開きます。モニターに現れたのは、軍服を着た若い男でした。


『私の名は、レグナス・レギオン。ここより先の宙域は、我がレガリア軍の管轄にある。許可なき艦隊の進入は認められない。転進するならば危害を加えるつもりはないが、前進するのであれば交戦も辞さない』


「私は辺境星防衛軍司令、サラ・イシュタール。海賊討伐任務の過程で、この宙域へ進入した。我々に貴軍と交戦する意思はなく、速やかにこの宙域から離脱する」


『了解した、サラ司令。我々も追撃は行わない。貴女の武運を祈る』


 互いに敬礼を交わし、通信は終了しました。

 レガリア軍は知りませんでしたが、恐らくどこかの独立勢力なのでしょう。

 共和国側についていないのであれば、こちらが戦う理由はありません。

 鮮やかな戦いぶりを見る限り、かなりの実力を持つ相手です。


 敵に回したくはありませんが、レグナスを味方にするのは危険な気がします。

 隊長とは違い、彼の目からは強い野心が感じられました。

この作品がお気に召しましたら、ご感想などお寄せいただけましたら幸いです。

執筆の活力とさせていただきます。


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