表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/83

モノローグ ホセリア3

 二日後、私は炊事班の皆さんの前に立っていました。場所は基地の大食堂。

 隊員達の食事を一手に担う重要な部隊で、人数はかなり多いです。


 炊事班の隊長は総料理長でもある、月城椿さんです。

 天女団の中では比較的おとなしい方だと聞いていますが、一度キレると誰にも止められず、爆弾を投げ始めるそうです……あくまで噂ですが。

 さらに料理に対しては非常に厳しく、一切の妥協を許しません。

 真面目な性格なのでしょう。実際、出された料理はどれも美味しかったです。

 そんな相手に生半可な話は通用しませんね。私は気を引き締め、提案説明(プレゼンテーション)を始めます。

 まずは挨拶をしました。


「皆さん、お忙しいところ申し訳ありません。なるべく、手短に済ませますのでよろしくお願いします」

 パチパチと、まばらに拍手がなりました。

 親衛隊と両大尉が賛成に回ってくださったので、もう罵声にさらされることはありません。

 ただ炊事班の皆さんは毎日の献立を考え、仕込みもするので非常に忙しく、話を聞いている時間すら惜しいようです。

 長々と前置きをしている時間はなく、私はさっそく本題に入ることにします。


「炊事班の皆さん、本日ご紹介するのはこちら! 最新式・全自動調理システムです」

 今回も後ろにおいた大型モニターに、商品映像を流します。

「まずは全自動野菜カッター! ニンジン、タマネギ、ジャガイモ、何でもござれ! 食材を投入するだけで、千切り、みじん切り、乱切りまで自由自在! 面倒な皮むきもやってくれます!」

「これは楽になりそう! 欲しいわ」

「まだまだ終わりません! こちらは自動攪拌機能付き大型釜! 煮込み料理を作る際、人が何時間もかき混ぜる必要はありません! 焦げ付き防止機能付き! しかも火力自動調整! ちょっと目を離しても大丈夫!」

「…なん…だと⁈」


「続いてご紹介するのはこちら! 回転ドラム式炒め調理ロボットです! 食材は内部で均一にかき混ぜられ、加熱ムラも少なく、大量調理でも安定した仕上がりを実現! AI制御で、焦げ付きや加熱不足を防ぎます!」

「なんと⁈」

「もう重たい鍋を振る必要はありません。腕力不要、腰への負担も大幅軽減! 炒め物はもちろん、焼きそば、チャーハン、野菜炒め、大量の肉料理まで対応可能! 一度に百人前、二百人前の調理も可能です!」

「す、凄い!」

「皆さん、いかがでしょうか? 今なら包丁セットとレシピ集が付いてきます!」

 誰もが絶句する中、月城隊長が口を開きます。


「もう十分でありますよ、ホセリア殿。今はほとんど手作業で、自分達のまかないを作るのも大変なので、自動調理機を頂けるのは本当にありがたい。炊事班は停戦に、賛成するであります」

「我らは総料理長に従います!」

「うんうん! 毎日大量に作るからね」

 私は頭を下げてから、話を続けます。

「皆様ありがとうございます。ですが、まだ終わりじゃありません! 味の決め手となる、調味料が欲しくありませんか? 香辛料があればカレーが作れますよ!」

「うっ! それは喉から手が出るほど欲しいであります。南部基地では少ししか取れないので作れない。美味しいカレーをアラシ殿に、食べていただきたいであります」

「そこで、香辛料の栽培地や農園を造りませんか? 我がグループがお手伝いいたします。開墾はもちろん、栽培技術の提供から苗や種の調達、加工設備の整備まで、全面的に支援(バックアップ)いたします!」

「うおおおおお!」

 食堂は一気に盛り上がりました。料理人であれば、その価値が分かるからです。

 きっと試してみたいことが山ほどあるのでしょう。調味料は宝ですから。

 椿さんは両手を挙げて言いました。

「ここまでされては、降参であります」


 こうして賛成は六割に増えました。天女団の皆さんはアラシ司令のために動くので、その「利」になることを提示したのです。

 それは長く使い続けられる道具でした。

 ただ機械の整備や部品交換は欠かせませんので、グループ会社の技術者を派遣し、保守点検をさせます。

 なので機械が必要とされている限り、争いは再開されません。我ながら知恵が回ります。

 一応私は策士ですから、うふふふ。



 私達は次に、列車で農園基地に向かいます。

 景色を眺めていると建物はみあたらず、緑の大地がどこまでも広がっていて、不思議と気持ちが穏やかになります。

 私はクララさんと話します。

「高層ビルや建物が並ぶ市街地とは違い、車の走る音も聞こえないので、慌ただしい日々を忘れさせてくれますね」

「ええ、本当にここは平和です。軍閥との争いもなく、銃声に怯えることもありません。荒れ果ててしまった惑星と違って豊かです。だからこそ、土足で踏みにじろうとする輩が許せないのでしょう」

「そうですね、ホセリアさん。だから天女団が動かないように、寄ってくる火の粉は、早めに消さねばなりません。もしアラシ司令が怒って本気を出したら、この世は終わりです」

 私はうんうんと肯きました。クララさんも、宇宙の平和を望んでるので本気です。


 やがて私達は農園基地に到着しました。とにかく広い。

 見渡す限り畑が広がっており、はるか彼方まで続いています。田んぼもあります。

 家畜小屋には牛や豚・羊・鶏が飼育されていました。さらに養蜂も行われており、たくさんの巣箱が並べられています。

 アラシさんの指揮のもと、ここまで発展したそうです。

 他の場所にも農園はあると聞いたので、天女団で使う食料は十分にあるでしょう。

 備蓄もあると聞きました。裏をかえせば、いつでも攻めにいけるということです。


 雨天で畑仕事ができない日に、農務兵の方々に大型倉庫へ集まっていただきました。

 私の都合だけでお話するわけにはいかないので、この日まで待ちました。

 農業部隊長で古参である、畑山花子さんは言ってきます。

「お話は聞いてます。もう大尉達が賛成しておられるんで、私ら農務兵も停戦賛成に回りますだ。あとは少しでも、作業が楽になる機械をいただければ、ありがてえですだ」

 農務兵の皆さんはあまり戦いを好まないそうなので、話はすぐにまとまりました。

 ただし、あとで不満やクレームが出ないよう、納得してもらう必要があります。


「ありがとうございます。それでは早速商品を、ご紹介させていただきます! まずはこちら、百姓ロボ・タガヤス君です。耕し・種まき・雑草取り・肥料散布とこれ一台で十分。皆さんはお茶を飲みながら休んでください。タガヤス君が朝から晩まで働き続けます!」

「こんなのも、あるんだなや」

「さらに対となる収穫ロボット・モギモギ君です。熟した作物を自動で見分け、収穫し、選別しコンテナへと積み込みます。農務兵の皆さんは命令するだけで、楽ちん!」

「これは、すげえだ」

「あと家畜の世話をする機械もありますが、皆様害獣でお困りではないでしょうか?」

「うう、確かに。農園が広がるにつれて、害獣被害もひどくなってきた」

「鳥は仕方ないとしても、畑が荒らされてるのを見ると、殺意を覚える。せっかく育てたのに」


「皆さんご安心ください。全自動害獣撃退システム『ガーディアン・スケアクロウⅧ』がお悩みを解決いたします! 半径十キロ圏内の生体反応を常時監視! 猪や鹿、そして謎の巨大ウサギも見逃しません!」

「おおっ!」

「害獣を発見した瞬間、ロボット番犬のシルバーファングが即座に出動、凄まじい速さで向かい、畑へ近づく前に追い払います。まずは吠えて威嚇、それでも立ち去らない獣には制裁を加えます。熊にも怯まず必殺技を繰り出します! 銀……勝てるものはいません!」

「それらを頂けるのであれば助かりますね。ありがとうございます」

 花子さんは頭を下げてきました。


「いえ、これは前置きにすぎません。ここからが本題で、皆様に是非ご提案したいものがあります。それは、農業にとって欠かせない水です」

「あっ! 今は川から水を引いてますが、農地が広がったので足りなくなってきました」

「そこで用水路や貯水池を作る、灌漑(かんがい)工事を私どもにお任せ願いたいのです。完成すれば安定した収穫が見込めます。また治水のためにダムも建設したいです。完成まで数年はかかると思いますが、水不足や洪水対策のためにも是非!」

「収穫だけでなく、災害対策まで考えているとは……」

「日照りも洪水も怖くなくなるわ」

「いやぁ、こりゃ参りましただ、ホセリアさん」


 農務兵の皆さんは納得してくださり、これで七割が賛成してくれました。

 これも私の策でインフラ事業を請け負うことにより、戦いから遠ざける狙いがあります。

 もちろん、わざと工期を遅らせたりはしません。信用を得るのが第一ですから。

 残りはあと少し。

この作品がお気に召したら、応援・評価をいただけると幸いです。

笑っていただければ幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ