モノローグ ホセリア2
会談は終わり、アラシさんは先に席を立ちました。
私は両大尉にお頼みして、親衛隊の方々を集めてくださるように頼みました。
「いいわよ。空いてる者に声をかけるわ」
「いいだろう。明日の午後には皆を集める」
「よろしくお願いします」
二人が協力的なので助かりました。アラシさんの命令かもしれませんが、さほど敵意は向けられませんでした。
私を侮ったりもしてません。少しお話ししただけですが、かなりの切れ者です。
これは手強い。
あとは基地の客間に案内されて、私とクララさんは一緒に過ごすことになります。
私は部屋に入るなり、ベットに倒れ込んで、思わずぼやいてしまいます。
「つ、疲れたぁ! やっぱりキツいわ……しんどい」
「でもお見事な交渉でしたよ、ホセリアさん。私なんかオロオロするだけで、何もできませんでした。度胸満点で、惚れ惚れしましたわ」
「それもクララさんのおかげです。事前情報がなかったら、交渉は決裂してました。でも明日からが本番です」
「ええ、頑張りましょう! 宇宙の平和のために!」
そして次の日。
「Boo――――!」
大会議室に入るなり、大勢からブーイングを浴びることになります。
私は敵と見なされてますので、仕方ないのですが少し辛いです。
ただ罵声は直ぐに止みました。後から入ってきた東雲大尉が一喝したのです。
「静まれ、貴様ら!」
鞭を鳴らしながら、全員を叱りつけました。
「武器も持たずに参った使者に対し、寄ってたかってなじるとは何事だ! 天女団の一員ならば、客人に対する礼儀を弁えろ! 司令の顔に泥を塗るな! 貴様ら、恥を知れ‼」
「「「申し訳ございませんでした。お詫びいたします!」」」
「あ、はい……」
すかさず全員が立ち上がり、一斉に私に頭を下げてきました。
なんという規律の良さでしょう。ゴロツキ軍閥とは比べものにならず、これほどの軍隊はそうそうありません。
ゆえに恐ろしい。
「部下が大変失礼した。それでは始めていただこうか、ホセリア殿」
「分かりました」
私は深呼吸してから、口調を変えて、司会者になりきります。
「親衛隊の皆様にお集まりいただき、心より感謝申し上げます。皆様の目的はクララ先生からお聞きしております。まことに素晴らしい家族計画だと感服いたしました。ですが皆様、お産を甘く見てはいませんか?」
「えっ⁈」
「産科医はいますか? 助産師さんはいますか? 産婆さんもおりませんよね?」
「い、いないわ……一人も」
医療班の天羽中尉が、かなり動揺してました。事の重大さを一番理解したのでしょう。
私は脅しながら、畳みかけていきます。
「新しい命の誕生は感動的です。しかし、その裏では母親も医師も命懸け。突然の容態急変! 終わらない陣痛! 難産によるパニック! 出産が終わっても油断できません!」
ざわ、ざわ
全員の顔色が変わって騒ぎだします。お産が大変なのを知っては無理もない。
私は後ろの大型モニターに、ある物を映します。
「皆さん、ご安心ください! これさえあれば大丈夫! 最新自動分娩システム、マザー・ガーディアンⅦです! これは、ただの分娩台ではありません!」
「うおっ⁈」
私の説明と動画が流れると、歓声があがります。
「母体と胎児のバイタルを常時モニタリング! 痛覚緩和ナノマシン散布システム搭載! 出産時の苦痛を大幅に軽減します! さらに産道を一時的に拡張し、負担を最小限に抑制! 万が一に備えて帝王切開ユニットも標準装備! 医師不在でも、医療AIが状況を瞬時に解析し、最適な処置を施します! 安全なお産のために、この一台!」
「こ、これは絶対に必要だわ!」
「皆さん、まだ終わりじゃありません! 生まれた赤ちゃんのケアが必要です!」
「そうだった……」
「今なら保育器をセットでおつけいたします。もちろんただの保育器じゃありません! おむつ替えと授乳装置はもちろん、温度管理、湿度管理と赤ちゃんがぐっすりと眠れます。泣いたら自動で子守歌を流します! お母さんの優しい声も録音可能!」
「ぐはっ!」
「いたれりつくせり……」
大半の方が絶句し、あるいはボソボソと喋っていました。
私はここでお願いします。
「さらに、子育て支援サービスと各種保証もお付けいたします! 分娩台の増設もお約束しましょう。なのでどうか皆様、停戦に御賛同ください!」
私が頭を下げると、会議室は静まりかえりました。そして拍手の音が聞こえてきます。
笑みを浮かべながら手を叩いていたのは、獅堂大尉と東雲大尉でした。
つられるように拍手の輪は広がっていき、やがて全員が立ち上がりました。
スタンディングオベーションです。賛辞を受けて私は嬉しくてたまりません。
盛大な拍手が止むと、獅堂大尉が話しかけてきます。
「見事な弁舌でした、ホセリアさん。将来の話をされたら、停戦案を飲まざるを得ませんね。それに、天音にだけ負担をかけるわけにはいかない。医療について、もっと教えていただきたい。軍医がいないので」
「じーん……静香様」
「分かりました。停戦が決まり次第、医療顧問団をココに派遣いたします。もちろん女性です」
「私も異論はない。我々だけで出産や育児は不可能だからな。停戦の署名簿に名を書こう。これに反対する者はいるか⁈」
「おりませーん!」
「ありがとうございます!」
私はもう一度深く頭を下げました。
これでおよそ五割が賛成に回ってくれたことになりますが、さらに支持を広げなければなりません。
私はクララさんと一緒に、残りの人達の説得に回ります。
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