モノローグ ホセリア
私の名前は、ホセリア・ホークブルク。
名門一族の令嬢に生まれ、先日十八歳になったばかりです。人は皆私を才色兼備と称えますが、ただの変わり者にすぎません。
銀河学士院を飛び級で卒業し、当主であるお爺様の元で秘書として働いています。
お手伝いしたかったのは本心ですが、お爺様は働きすぎなので、倒れてしまわないよう父から見張り役を言いつかっていました。
お爺様は隙あらば仕事を増やそうとするので、なかなか気が抜けません。
時折、パーティーへ同行することもありますが、言い寄ってくる殿方には閉口しています。
名声や財産目当ての方ばかりでうんざりです。
また中身のない会話は疲れるだけで、男の方に惹かれることはありませんでした。
お爺様には婚期が遅れるのを心配されます。
「並の男では、お前の相手は務まるまい。やれやれ、婿探しは難航しそうだ」
「ずっと独身でも構いませんわ、お爺様」
たぶん後悔すると思うので、無理に妥協する気はありませんでした。
――そんなある日。
昔お世話になったブルートおじさんから連絡があり、思わず喜んでしまいました。
恋愛感情はないのですが、どうも私は年長者を好む傾向があります。
落ち着きがあって、頼れる存在だからでしょう。
バーチャル通話でお爺様と一緒にお話を聞くと、ただの世話話では済まず、とんでもない内容でした。
ブルートおじさんは真剣な表情で伝えてきます。
外道で下劣な愚兄が大失態をやらかし、とんでもない人物を敵に回したと知って、お爺様はすっかり気落ちしてしまいます。
報復はホークブルク家だけでは収まりません。宇宙全体の危機です。
宇宙最強エスパーは自分を殺そうとした、共和国を絶対に許さないでしょう。
この身にかえても、なんとかせねばなりません。私は交渉役を買って出ました。
お爺様は心配してくださいましたが、覚悟は決まっています。
まずは、逃げ隠れていた愚兄をとっ捕まえました。
「お、俺は何も悪くない!」
自分のしでかしたことが、どれほど重大なのか理解しておらず、私と父は怒りを通り越し、あきれ果てるしかありませんでした。これぞ大バカの見本です。
一族史上最大の過ちは、親類一同の知るところとなり、庇う者は誰もいませんでした。
唯一母は泣きましたが、家法に従って愚兄は処罰されました。例外はありません。
それから私はクララさんとバーチャル通信で話し合い、何度も相談しました。
天女団の話を聞くと、一筋縄ではいかない相手だと分かります。
「道具として作られ、外からきた人間が攻撃してきたので、誰のことも信用していません。他者を相当恨んでいるでしょう。司令と仲間以外は敵と見なされます」
「……無理もありませんね。それでもやらねばなりません」
「私も可能な限りサポートしますわ」
「ありがとうございます、クララさん」
話を聞くうちに、天女団の女性達にも細やかな願いがあると分かったのは、大きな収穫でした。これは交渉材料として使えそうです。
ただ、やはりアラシ司令は手強そうです。
「皆を飢えから救って隊員の一人一人に気を配り、危険な任務を買って出るので、誰もが慕い忠誠を誓っています。命令されれば彼女らは死地にでも、平気で赴くでしょう。私も気遣われましたので、優しいことは確かなんですが……」
「なにか?」
「非常に意地悪で、人に悪戯してきます。私も脅されて、からかわれました。天女団の方々も、蛇や蛙を食べさせられそうになって、エライ目に遭ったそうです。もっとも、揉め事を収めるためだったようで、相手の本心を見極める狙いもあるようです。今回の交渉でも、相当な揺さぶりをかけてくるでしょう」
「なるほど、動揺しないように覚悟しておきます。ようは悪ガキなんですね、うふふふふ」
聞けば聞くほど、私はアラシ司令に興味を持ってしまいます。
いえ……最強エスパーの存在を知ったときから、恐いのに好奇心が抑えられず、惹かれていたのかもしれません。
お爺様には格好をつけたものの、変わり者の私にも乙女心はあり、私は運命の相手を求めていました。
早く、アラシさんに会いたい!
ついに、その日がやってきました。
想定問答は何度も繰り返しましたので、あとは本番に臨むだけです。
クララさんの事務所の船に乗り、宇宙を旅して惑星に到着しました。
離着陸場で待っていたのは、整然と並んだパワードスーツ部隊でした。
これは私の警護ではありません。ましてや歓迎のセレモニーでもない。
「早速やってきましたね」
「ええ、軽い脅しです」
私達は船を降りて基地へと向かいます。女性兵達は恐くはありませんでしたが、何も言わずとも、歓迎されてないのは伝わってきます。
かなり恨んでいるでしょうから、仕方ありません。
私は気を引き締めます。もうアラシ司令は、私を観察してるはずですから。
クララさんの案内で基地の中を進みます。身体検査はありませんでした。
何かすればその時点で交渉は決裂するので、行動を試されてます。
応接室につくと、二人の女性兵が扉を開けました。いよいよ御対面です。
胸が高鳴ります!
(この方がアラシさん……)
事前に聞いてた通り美少年でした。クララさん達と楽しそうに話している様子を見ると、とても恐い方には思えませんでした。
ですが私に向き直ると笑顔は消え、いきなり無茶な要求をしてきました。
「じゃあ、当主の首をくれないか?」
これは想定の範囲内だったので、すぐに返答しました。
するとアラシさんは驚いたようで、私の提案を聞き入れてくださいました。
問答無用で拒絶するような方ではなかったので、私は心の中でホッとします。
あるいは、少しは興味を持っていただけたのかもしれません。
お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召したら
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